著者
木戸 久美子 中村 仁志 藤田 久美 林 隆
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:1341044X)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.135-139, 2005-03-20

本研究は発達障害と性非行および性犯罪との関連を文献的に考察することを目的とした。本邦における医学文献の検索には医学中央雑誌を、外国文献の検常には医学文献データベースMEDLINEを用いた。発達障害と性非行および性犯罪との関連の医学論文は国内で3件、国外で6件とともに少なかった。性非行や性犯罪と関連する発達障害としては、本邦では広汎性発達障害、なかでもAsperger症候群があげられていた。外国では注意欠陥/多動性障害(以下AD/HD)との関連も指摘されていた。どのような発達障害特性が性非行や性犯罪に関連するかは、エビデンスが十分ではないために断定的なことは言えない。発達障害と性非行および性犯罪を短絡的に結びつけることは大変危険であるが、文献的研究からは、発達障害児者の持つ発達特性と彼らを取り巻く否定的な環境要因が、結果的に発達障害児者を反社会的行為に追い込んでしまう可能性が示唆された。
著者
山本 智子 田中 満由美 木戸 久美子 森 法房 長川 トミエ
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.111-117, 2002-03

2000年11月27日から12月3日の7日間,山口市とその近辺で「2000・世界エイズデー山口」が開催された。筆者らは県からの委託を受け,13名の学生ボランティアとともに事業の企画・運営にあたった。この活動を通して我々が学生に期待したことの1つは,HIV/AIDSについての数回の講義,準備を進める中での仲間とのディスカッションやその他全ての事柄を通して,彼女らの性に関する知識・意識・行動に何らかの変容をもたらすことであった。この度,事業終了後のアンケートから,学生の性に関する知識・意識・行動について好ましい変化がもたらされたことが示唆されたので,報告する。
著者
木戸 久美子 藤田 久美
出版者
公益財団法人 医療科学研究所
雑誌
医療と社会 (ISSN:09169202)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.135-154, 2019-05-24 (Released:2019-06-05)
参考文献数
37

本研究では,幼児期から学齢期にある発達障害児および発達障害が疑われる児の育児上の気がかりと,母親の精神面の健康度によってその気がかりに特徴があるのかを質的に検討することを目的とした。小児科発達外来を受診した発達障害児および発達障害が疑われる子どもの母親25人を対象とした。対象者には,The Center for Epidemiologic Studies Depression Scale(以下CES-D)を用いて抑鬱傾向調査と発達障害児の育児に関して半構造化面接を行った。質的データは,Framework methodsを用い,量的データはEZRを用いて分析を行った。対象者のCES-D平均値は15.9(±10.2)であり,CES-Dの「鬱あり」のカットオフ値である16に近い点数であった。また,CES-D平均値の結果から「鬱あり」の範疇にあったのは11人(44%)で本邦におけるうつ病生涯有病率3~7%(厚生労働省)よりも高い発症率であることがわかった。今一番気がかりなこととして,CES-D正常値群の母親,抑鬱群の母親の双方において将来への不安が語られていた。抑鬱群の母親では,子どもの異性への性的関心が性犯罪に結びつくことを懸念していること,行き場のないストレスを抱え家族や子どもとの関係に影響を与えていることがわかった。母親の精神面の健康状態は,子どもの問題行動や育児を通してのストレスへの主観的な感じ方が影響している可能性が考えられた。
著者
木戸 久美子 植村 裕子 松村 惠子
出版者
Japan Academy of Midwifery
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
pp.JJAM-2021-0017, (Released:2022-01-26)
参考文献数
41
被引用文献数
1

目 的本研究の目的は,父親の産後うつに関連する質的研究のメタ分析を通して,2つの研究課題1)父親の産後うつは,専門家によってどのようにスクリーニングされてきたか,2)父親の産後うつに対する対処や支援とは,また対処や支援の受け入れを困難にしている障壁は何かについて明らかにすることである。方 法父親の産後うつに関連する論文をCINAHL, MEDLINE, Google Scholarを用いて検索した。検索キーワードは,「サポート」AND「父親の産後うつ」OR「父親のうつ」OR「父親のメンタルヘルス」AND「質的研究」であった。データベースとハンドサーチで検索された質的研究論文は32編で,そのうち5編の論文を分析対象とした。本研究では,メタエスノグラフィーを利用した。結 果Patient Health Questionnaire -9,Generalized Anxiety Disorder-7,The Patient Health Questionnaire -15等が,スクリーニングに用いられていた。分析した論文から8つのメタファー:「父親の産後うつのきっかけ」,「父親の産後うつへの認識」,「父親の産後うつの影響」,「対処法」,「情報資源の不足・不備」,「支援を求める障壁」,「支援を必要とする理由」,「父親の産後うつへの支援」が抽出された。父親の産後うつ病は,一連のきっかけとなる出来事に基づいて発症し,自覚症状も様々である。父親は,自分が産後うつ病であることに気づくと,それに対処しようとするが,支援情報は十分ではなかった。さらに,男性であることが,助けを求めることへの恥ずかしさにつながり,父親の産後うつへの対処の障害となっている。一方で,家族を守るという責任感が,うつと向き合い,社会的支援や専門家の助けを求める動機となっていた。結 論父親の産後うつのスクリーニングには,一般化されている不安尺度と抑うつ尺度が用いられていた。産後うつを自覚している父親への支援が不十分であることや男性性が障壁となり,父親の産後うつへの対処の妨げになっている。一方で,父親として自覚は,産後うつを克服しようとする行動の動機付けとなっていた。
著者
中村 仁志 林 隆 木戸 久美子 澄川 桂子
出版者
山口県立大学看護学部
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
no.8, pp.13-18, 2004

AD/HDの発症比率には性差があり男子に多いとされている。今回、健常幼稚園児を対象として、その行動をADHD-RS-IV-Jの項目を用いて性差について検討した。さらに保護者の捉える子どもの特徴とADHD RS-IV-Jのどの項目の行動と関係しているのか比較検討した。 平成14年11月、Y県H幼稚園の保護者にアンケートを行い、ポジティブな特徴評価として"活発である"、"リーダータイプ"を、ネガティブな特徴評価として"拗ねやすい"、"育てにくい"を聞いた上でADHD-RS-IV-Jの回答を求めた。
著者
木戸 久美子 内山 和美 北川 眞理子 林 隆
出版者
山口県立大学看護学部
雑誌
山口県立大学看護学部紀要 (ISSN:13430904)
巻号頁・発行日
no.9, pp.31-40, 2005

本研究は、学齢期の子どもを持つ母親を対象とし、フォーカスグループインタビュー法を用いて子どもの成長とともに変化する育児の内容と母親が希望する育児支援のあり方を明らかにすることを目的とした。 母親が子どもに対して否定的な感情を持つ要因として、新生児期から就学期までは子どもの数や子どもとの相性が重要であると思われたが、子どもが学齢期になり母親が子どもと意志疎通可能になると、単なる子どもとの性格の不一致といった母親の主観に基づく認識のみで子どもに対する否定的な感情は芽生えにくくなることが推察された。
著者
木戸 久美子 林 隆 藤田 久美
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:1341044X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.123-130, 2007-03-20

There are many evidences supporting the lack of skills for living in the background of increasing artificial abortion and sex transmitted infection (STI) in adolescents of Japan. World health organization (WHO) has been proposed that educational programs about skill for living are effect for preventing AIDS in teenagers. Especially peer education is strongly recommended foe useful and good for youths. However, there is no report about the effectiveness of peer education in acquiring skills for living.The purpose of this study is to clarify the effectiveness of peer education about HIV/AIDS for acquiring the skill of living in high school students (i.e. : decision making, skill of communication, self esteem). Participants consisted of 12 female and 15 male high school students aged from 16 to 17 years. Also, the peer educators were university students. The results showed that 93.6% were positive answer for peer education technique. There was no statistically significant difference between pre and post peer education in the aspects of decision making, skill of communication, self esteem. There was significance in change of awareness about reproductive health rights (p=0.007). We conclude that only one trial of peer education may be hard to get the skill for living.
著者
大石 由起子 木戸 久美子 林 典子 稲永 努
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学社会福祉学部紀要 (ISSN:1341044X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.107-121, 2007-03-20
被引用文献数
8

Peer Support is a support system that utilizes the peer relationship. Usually counseling is done by a professional counselor who is educated in psycho therapy. However, in Peer Counseling the counselor is a peer of the person receiving counseling, one who stands in the same position or has the same disorder or the same experience as the person being counseled. There are two merits to using peer counseling at universities and colleges. First, it can help students who are having some problems in their campus life. Second, the peer counselors who volunteer to participate can experience some growth in themselves as well. In this paper we reviewed selected recent articles on peer support or peer counseling in Japan in the fields of welfare, health and student counseling. These articles are reviewed from the following four points : 1) start and structure of peer counseling (peer support); 2) programs of peer counselor education; 3) reports of peer counseling practice; 4) maturing or changing of students in peer counselor training.