著者
木村 美也子 尾島 俊之 近藤 克則
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.3-13, 2020-06-19 (Released:2020-06-19)
参考文献数
51
被引用文献数
2

背景・目的 新型コロナウイルス感染症がパンデミック(世界的な大流行)となり、外出や人との交流が難しくなっている。こうした状況の長期化は、閉じこもりや社会的孤立の増加につながりうるが、それによる健康への弊害にはどのようなものが予想されるであろうか。本稿では、日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)で蓄積されてきた研究から、高齢者の社会的行動と健康に関する知見を概括し、新型コロナウイルス感染症流行時の高齢者の健康の維持・向上に望ましい生活への示唆を得ることを目的とした。方法 JAGESによる研究の中から、高齢者の社会的行動と健康の関連を示した46件の論文(2009年~2020年発表)を抽出し、その知見を概括し、新型コロナウイルス感染症流行時に可能な健康対策について考察した。結果 介護、認知症、転倒、うつなどを予防し、高齢者の健康を維持・向上するためには、外出や他者との交流、運動や社会参加が重要であることが示された。それらの機会が制限されることで、要介護、認知症、早期死亡へのリスクが高まり、また要介護状態も重症化することが予測された。考察 社会的行動制限は感染リスクを抑えるために必要なことではあるものの、健康を損なうデメリットもあるため、感染リスクを抑えつつ、人との交流、社会参加の機会を設ける必要があると考えられた。密閉、密接、密集を回避しつつ、他者との交流を続けることで、感染リスクと将来の健康リスクが減じ得るだろう。
著者
木村 美也子 井手 一茂 尾島 俊之
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.4, pp.273-283, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
参考文献数
37

目的 幼い子をもつ母親を対象に,COVID-19流行期に新たに生じた心理的苦痛(K6スコア≧10点)とCOVID-19流行前の子の育てにくさ,発達への不安,ソーシャルサポートおよび受援力の関連を検討することを目的とした。方法 本研究は縦断研究であり,2020年2月に全国47都道府県の未就学児の母親を対象としたベースライン調査を実施,4,700人より回答を得た。また同年6月に同じ対象に調査依頼をし,2,489人より回答を得た。ベースライン時と追跡時のK6スコア(4群)を比較し,ベースライン時に心理的苦痛を有していた521人を除く1,968人を対象とし,ポアソン回帰分析を行った。目的変数には追跡時の心理的苦痛の有無,説明変数にはベースライン時の子の発達への不安,子の育てにくさ,受援力,ソーシャルサポートを用い,母親の年齢,学歴,婚姻状況,就業状況,世帯収入,子の年齢,子の数,追跡時のCOVID-19による変化(10項目)で調整した。結果 心理的苦痛ありの割合は,20.9%から25.3%へと増加していた(P<0.001)。新たに心理的苦痛を有した者は333人(16.9%)で,ベースライン時の子の発達への不安あり(対照群なし),育てにくさあり(対照群なし),受援力の「受援活用姿勢」低群(対照群高群),ソーシャルサポート低群(対照群高群)と有意な関連がみられた。結論 幼い子をもつ母親の精神健康は,COVID-19流行期に悪化傾向にあり,心理的苦痛の関連要因には,流行期前から有していた子の発達への不安,育てにくさ,受援力の受援の機会を活用しようとする姿勢の乏しさ,ソーシャルサポートの乏しさが含まれていた。COVID-19流行時における継続的な子育て支援・療育・相談と受援力向上に向けた具体的なアプローチの検討が望まれる。
著者
木村 美也子 尾島 俊之 近藤 克則
出版者
一般財団法人 日本健康開発財団
雑誌
日本健康開発雑誌 (ISSN:2432602X)
巻号頁・発行日
pp.20200602, (Released:2020-06-02)
参考文献数
51

背景・目的 新型コロナウイルス感染症がパンデミック(世界的な大流行)となり,外出や人との交流が難しくなっている.こうした状況の長期化は,閉じこもりや社会的孤立の増加につながりうるが,それによる健康への弊害にはどのようなものが予想されるであろうか.本稿では,日本老年学的評価研究(Japan Gerontological Evaluation Study: JAGES)で蓄積されてきた研究から,高齢者の社会的行動と健康に関する知見を概括し,新型コロナウイルス感染症流行時の高齢者の健康の維持・向上に望ましい生活への示唆を得ることを目的とした.方法 JAGESによる研究の中から,高齢者の社会的行動と健康の関連を示した46件の論文(2009年~2020年発表)を抽出し,その知見を概括し,新型コロナウイルス感染症流行時に可能な健康対策について考察した.結果 介護,認知症,転倒,うつなどを予防し,高齢者の健康を維持・向上するためには,外出や他者との交流,運動や社会参加が重要であることが示された.それらの機会が制限されることで,要介護,認知症,早期死亡へのリスクが高まり,また要介護状態も重症化することが予測された.考察 社会的行動制限は感染リスクを抑えるために必要なことではあるものの,健康を損なうデメリットもあるため,感染リスクを抑えつつ,人との交流,社会参加の機会を設ける必要があると考えられた.密閉,密接,密集を回避しつつ,他者との交流を続けることで,感染リスクと将来の健康リスクが減じ得るだろう.
著者
戸ヶ里 泰典 山崎 喜比古 小手森 麗華 佐藤 みほ 米倉 佑貴 横山 由香里 木村 美也子
出版者
山口大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

2008年度、2009年度の、5月、11月、2月に、本調査対象校中央大学附属高等学校の2007年度、2006年度入学生を対象とし、6回の調査を実施した。そこで、2007年に実施したデータと合わせて、1年生の5月から3年生の2月まで計9回にわたり測定されたsense of coherence(SOC)スコア変動および、その変動に及ぼす要因の探索を行った。その結果、中学時代の課題に対する成果、成功経験や、高校生初期の教師との関係、あるいは、教師によって作り出される受容的な環境が、その後のSOCの上昇を大きく左右していること、学校に対する誇りや居場所感とも言えるような学校における所属感覚もまた、大きくSOCの変動を左右していることが明らかとなった。