- 著者
-
木村 美也子
井手 一茂
尾島 俊之
- 出版者
- 日本公衆衛生学会
- 雑誌
- 日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
- 巻号頁・発行日
- vol.69, no.4, pp.273-283, 2022-04-15 (Released:2022-04-26)
- 参考文献数
- 37
目的 幼い子をもつ母親を対象に,COVID-19流行期に新たに生じた心理的苦痛(K6スコア≧10点)とCOVID-19流行前の子の育てにくさ,発達への不安,ソーシャルサポートおよび受援力の関連を検討することを目的とした。方法 本研究は縦断研究であり,2020年2月に全国47都道府県の未就学児の母親を対象としたベースライン調査を実施,4,700人より回答を得た。また同年6月に同じ対象に調査依頼をし,2,489人より回答を得た。ベースライン時と追跡時のK6スコア(4群)を比較し,ベースライン時に心理的苦痛を有していた521人を除く1,968人を対象とし,ポアソン回帰分析を行った。目的変数には追跡時の心理的苦痛の有無,説明変数にはベースライン時の子の発達への不安,子の育てにくさ,受援力,ソーシャルサポートを用い,母親の年齢,学歴,婚姻状況,就業状況,世帯収入,子の年齢,子の数,追跡時のCOVID-19による変化(10項目)で調整した。結果 心理的苦痛ありの割合は,20.9%から25.3%へと増加していた(P<0.001)。新たに心理的苦痛を有した者は333人(16.9%)で,ベースライン時の子の発達への不安あり(対照群なし),育てにくさあり(対照群なし),受援力の「受援活用姿勢」低群(対照群高群),ソーシャルサポート低群(対照群高群)と有意な関連がみられた。結論 幼い子をもつ母親の精神健康は,COVID-19流行期に悪化傾向にあり,心理的苦痛の関連要因には,流行期前から有していた子の発達への不安,育てにくさ,受援力の受援の機会を活用しようとする姿勢の乏しさ,ソーシャルサポートの乏しさが含まれていた。COVID-19流行時における継続的な子育て支援・療育・相談と受援力向上に向けた具体的なアプローチの検討が望まれる。