著者
孫 暁強 木藤 恒夫
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.35-46, 2023-01-25 (Released:2023-01-25)
参考文献数
33

本研究では,日本と中国の20 代から60 代の女性を調査対象として, 化粧における国による差と世代による差を検討した.調査参加者は日本人女性250 名と中国人女性488 名であった.調査参加者は化粧意識,化粧行動として化粧品の使用頻度と化粧習慣,化粧の心理的効果について尋ねられた.その結果,両国の差異に関しては,化粧意識,化粧の心理的効果は中国が日本より高く,習慣的にメイクをする人は日本が中国より多く,化粧品の使用頻度には差異があまりなかった.世代差に関しては,日本では,ポジティブな化粧意識を除く各調査項目は世代間にほとんど差異がなかった.概して,若い世代におけるポジティブな化粧意識は中・高年世代より高かった.中国では,高年世代が他の世代よりネガティブな化粧意識が高く,化粧行動は低かった.化粧意識,化粧の心理的効果,化粧行動の相互関連については,日本と中国ともに,ネガティブな化粧意識である「効果不安」と心理的効果を除き,概ね相関関係が認められた.重回帰分析を用いて,化粧意識と化粧の心理的効果が化粧行動に及ぼす影響を検討した結果,両国ともに,意識の「必需品・身だしなみ」や「効果不安」が化粧の心理的効果よりも影響することが示された.これらの結果について,両国の経済・文化・社会的環境の変遷の観点から考察した.
著者
孫 暁強 木藤 恒夫
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.15-23, 2018-03-31

本研究では,質問紙調査により日中大学生の化粧意識と化粧行動の実態を調べ,さらに化粧意識と化粧行動との関連を検討した。155名の日本人大学生と154名の中国人大学生を対象として,化粧意識の3因子(「魅力向上・気分高揚」,「身だしなみ・必需品」,「効果不安」)と16項目の化粧行動について調査を行った。その結果,化粧意識において女子は日本が中国よりも高く,男子は日本が中国よりも低かった。化粧行動においては,日本の女子と中国の男子は皮膚のケアといった項目に,中国の女子はケアと共に魅力向上のための項目に頻度が高かった。日本の男子は全般的に化粧頻度が低かった。化粧意識と化粧行動との関係においては,両国の女子ともに3因子において相関が認められた。ただし,「魅力向上・気分高揚」では,男女とも日本では正,中国では負の相関が見られた。このことは,日本と中国はそれぞれの文化や社会が異なるため,化粧のとらえ方にもそれらの影響が及んでいることを示唆する。
著者
木藤 恒夫 児玉 千絵
出版者
久留米大学
雑誌
久留米大学心理学研究 (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-48, 2003

本研究では,嘘の漏洩と非言語的手がかりとの関連を3つの実験で検討した。実験刺激として,男女各5名の自己プロフィル(氏名,家族構成,趣味等の10項目)に関する真と偽のビデオ映像(計20本)を用いた。「真」の映像ではすべての項目が事実そのままで,「偽」の映像では,10項目中の3項目が実験者によって偽に変えられた内容が述べられた。映像の長さはいずれも2分間弱であった。いずれの実験においても,被験者の「真偽判断」および「判断の確信度」と「利用した手がかり」が調べられた。実験1では,各被写体の真か偽のどちらか一方の映像(真と偽各5本の計10本)を98名の被験者に提示した。その結果,平均の正解数はほぼチャンスレベルにとどまった(平均4.9,標準偏差1.52)。ただし,個別刺激の正解率は14.3%〜85.7%の広い範囲にわたり,10人の被写体のうち8人において,真と偽の正解率に有意差が認められた。実験2では,各被写体の真と偽の映像(計20本)を被写体ごとに対にして15名の被験者に提示した。その結果,平均正解数は3.9,標準偏差は1.61であり,課題の困難度が増大した。実験3では,実験1の結果をふまえ,正解率が高い,チャンスレベル,あるいは低い映像(計9本)を用いて,32名の被験者に音声を消した視覚情報のみの条件で提示した。実験1の音声あり条件の結果と比較すると,高群では正解率が低下し,低群では正解率が上昇した。これらの結果から,総体的に見ると,チャンスレベル以上に真実と嘘を見分けることが難しいと同時に,嘘の非言語的漏洩の表出には個人差が見られること,さらに周辺言語を含めた聴覚情報が嘘の検出で果たす役割の重要性が示唆された。
著者
今村 義臣 木藤 恒夫 Yoshiomi Imamura
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.16-23, 2010-03-31

3名の女性共感覚者(F,K,Y)について,現象学的な調査と心理物理学的な実験を行った。3名に共通するのは,特定の数字や文字を見ることによって色の知覚が生じるという書記素・色共感覚である。ただし,3名には現象学的な違いがある。内省報告によれば,Fは「実際に色がついて見える」であり,Kは「頭に色のイメージが浮かぶ」であるという。心理物理学的な実験としては,ストループ課題とRamachandran & Hubbardが用いたポップアウト課題を実施し,一般の知覚者と比較した。ストループ課題では,FとYは逆ストループ干渉において,Kはストループ干渉において対照群との違いが見られた。ポップアウト課題では,共感覚者の正答率は一般知覚者のものより有意に高かった。これら2つの課題のパフォーマンスにより,両者における共感覚的な知覚が実証された。
著者
木藤 恒夫 児玉 千絵
出版者
久留米大学大学院心理学研究科
雑誌
久留米大学心理学研究 = Kurume University psychological research (ISSN:13481029)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.37-48, 2003-03-31

本研究では,嘘の漏洩と非言語的手がかりとの関連を3つの実験で検討した。実験刺激として,男女各5名の自己プロフィル(氏名,家族構成,趣味等の10項目)に関する真と偽のビデオ映像(計20本)を用いた。「真」の映像ではすべての項目が事実そのままで,「偽」の映像では,10項目中の3項目が実験者によって偽に変えられた内容が述べられた。映像の長さはいずれも2分間弱であった。いずれの実験においても,被験者の「真偽判断」および「判断の確信度」と「利用した手がかり」が調べられた。実験1では,各被写体の真か偽のどちらか一方の映像(真と偽各5本の計10本)を98名の被験者に提示した。その結果,平均の正解数はほぼチャンスレベルにとどまった(平均4.9,標準偏差1.52)。ただし,個別刺激の正解率は14.3%〜85.7%の広い範囲にわたり,10人の被写体のうち8人において,真と偽の正解率に有意差が認められた。実験2では,各被写体の真と偽の映像(計20本)を被写体ごとに対にして15名の被験者に提示した。その結果,平均正解数は3.9,標準偏差は1.61であり,課題の困難度が増大した。実験3では,実験1の結果をふまえ,正解率が高い,チャンスレベル,あるいは低い映像(計9本)を用いて,32名の被験者に音声を消した視覚情報のみの条件で提示した。実験1の音声あり条件の結果と比較すると,高群では正解率が低下し,低群では正解率が上昇した。これらの結果から,総体的に見ると,チャンスレベル以上に真実と嘘を見分けることが難しいと同時に,嘘の非言語的漏洩の表出には個人差が見られること,さらに周辺言語を含めた聴覚情報が嘘の検出で果たす役割の重要性が示唆された。