著者
末吉 彩香 田中 敦士
出版者
札幌学院大学総合研究所 = Research Institute of Sapporo Gakuin University
雑誌
札幌学院大学総合研究所紀要 = Proceedings of the Research institute of Sapporo Gakuin University (ISSN:21884897)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.3-10, 2022-03-20

札幌学院大学における発達障害を含む多様な学生支援の拡充に向け,全教職員を対象に「令和3年度発達障がいのある学生への教育支援FD/SD研修会」を実施した.本稿の目的は,参加者向け事後アンケートの結果から本研修会が発達障害学生支援に関して教職員に与えた効果を評価し,今後の学内研修の展開を示すことである.オンラインで実施された研修会終了後に参加者(132名)に事後アンケート(WEB)への回答を求め,71名の教職員が回答した.事後アンケートの結果,全教職員を対象としたことが多様な学生に対する支援に向けた全学的な理解啓発に寄与したことが推察された.また研修会参加前と比較し,参加後の方が発達障害学生支援に関する知識について参加者の自信が高まり,本研修会が発達障害学生支援に関する基礎的な知識提供の場として機能した可能性が示された.一方で発達障害学生支援に関する知識に一定程度自信がある場合でも実際の学生対応には自信がない教職員の存在もうかがえ,今後の学内研修会では知識を実際の支援の場に結び付けるための工夫が必要であると考えられた. The ‘FY2021 FD/SD Workshop on Educational Support for Students with Developmental Disabilities’ was held for all faculty and staff to expand support for students, specifically those with developmental disabilities, at Sapporo Gakuin University. This paper aims to evaluate the effect of the FD/SD workshop on faculty and staff. It also provides recommendations for the future development of training within the university. After the workshop, participants were asked to fill up a web-based questionnaire. Seventy-one faculty members provided a response. Based on their responses, it was inferred that targeting all faculty and staff could contribute to university-wide understanding and awareness of the need for supporting students with diverse needs. The participants were also more confident about their knowledge of supports for students with developmental disabilities at the end of the workshop than at the beginning, indicating that the workshop may have functioned as a space for providing basic knowledge on the subject. Still, there were some faculty members who were confident in their knowledge of supports for students with developmental disabilities but not about the actual supports that could be provided to such students.
著者
末吉 彩香 柘植 雅義
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.19-32, 2020-03-31 (Released:2020-09-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

本研究の目的は、自閉スペクトラム症 (ASD) 学生の就労支援の文脈で実施される就業体験を通した支援に関して、体験後の振り返りの面談の実態を明らかにすることである。ASD学生の就労支援に携わる支援者 (11名) に半構造化面接を行い、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ (M-GTA) を用いて分析した。その結果、 【支援者が感じる面談時のASD学生の特徴】【面談時の対応】【面談の対応方針 (事前)】【支援者が抱える支援上の困りごと】 の4つのカテゴリーが生成され、ASD学生の障害特性を含む特徴を考慮した面談中の具体的な対応や、具体的対応ではないが支援者が心がける留意点が整理された。特に、支援者は学生が自己を客観的な視点で振り返り、就業体験を肯定的に捉えられるような配慮を重視していた。同時に支援者が対応に苦慮する場合も示され、今後は本研究で得られた知見を生かし、就業体験をより効果的に提供するための振り返りの内容や方法の検討が必要だ。
著者
末富 真弓 五味 洋一 佐々木 銀河 中島 範子 末吉 彩香 杉江 征 名川 勝 竹田 一則
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.163-172, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
14

高等教育機関において発達障害学生数は年々増加しており、進路・就職に関する課題も様々検討されるようになった。発達障害学生の就職支援を考える際には、発達障害学生特有の課題を理解し、個々の障害特性に応じ包括的に検討することが重要となる。しかしながら、専門性も求められるため、学内リソースだけではなく学外の支援機関や各種プログラムなどとの連携も支援の柱となる。そこで、本研究では、発達障害学生を対象に学外リソースを活用した模擬職場体験を中核とする「就職準備講座」プログラムを開発・提供し、その効果について検討した。結果、2016年度及び2017年度の本プログラムに参加した学生12名より協力が得られ、就職に対する準備性の向上、及び障害特性のアセスメント機能についての効果があったことが考察された。