著者
延原 稚枝 名川 勝
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.103-116, 2021-03-31 (Released:2021-09-30)
参考文献数
13

本研究は、指定特定相談支援事業所と当該事業所に勤務する相談支援専門員を対象とした質問紙調査により、知的障害者のカップル生活及び子育ての実態把握、並びに知的障害のある母親 (以下母親) の生活実態、子育てにおけるソーシャル・ネットワークとそこから得ているソーシャル・サポートを明らかにすることを目的としている。本稿は、カップル生活と子育て、母親の生活実態とそのソーシャル・ネットワークに焦点化して報告する。調査結果から、サービス等利用計画を作成している知的障害者のうち、カップル生活、子育てといったライフイベント経験者は極めて限定的である実態が伺えた。子育てをする母親の多くは成人になるまで障害福祉サービスを利用することなく知的障害のない男性と結婚し、子育てをしていた。そのインフォーマルなネットワークには脆弱性が見られたが、自ら出向く、申請を要するフォーマルな子育て支援サービス利用も限定的であった。
著者
山中 克夫 藤田 和弘 名川 勝
出版者
一般社団法人 日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.25-32, 1996-01-31 (Released:2017-07-28)
被引用文献数
5 3

K-ABC (Kaufman Assessment Battery for Children)により、同時処理過程に比べ継次処理過程が優れていることを明らかにされた脳性麻痺幼児(インテーク時5歳3ヵ月)1名に対して、微細運動の指導に加え、得意な情報処理様式(=継次処理過程)を強調した描画および書字の指導を行った。指導方針として、(1)全体との関連性よりも個々の情報の順序性を重視すること(図形や文字を視覚的に全体をとらえたり、イメージすることよりも、書き順を強調する)、(2)聴覚言語的手掛かりを与えること(「止め」、「曲げ」、「はね」などを音声化し、区別させる。手続きもまた音声化、言語化する)、(3)継次的に処理することが得意であることを意識させることを挙げた。その結果、それまで描くことができなかった四角、三角などの図形を描くことが可能となり、さらに、ひらがなの1/3以上を書くことができるようになった。
著者
末富 真弓 五味 洋一 佐々木 銀河 中島 範子 末吉 彩香 杉江 征 名川 勝 竹田 一則
出版者
障害科学学会
雑誌
障害科学研究 (ISSN:18815812)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.163-172, 2019-03-31 (Released:2019-10-01)
参考文献数
14

高等教育機関において発達障害学生数は年々増加しており、進路・就職に関する課題も様々検討されるようになった。発達障害学生の就職支援を考える際には、発達障害学生特有の課題を理解し、個々の障害特性に応じ包括的に検討することが重要となる。しかしながら、専門性も求められるため、学内リソースだけではなく学外の支援機関や各種プログラムなどとの連携も支援の柱となる。そこで、本研究では、発達障害学生を対象に学外リソースを活用した模擬職場体験を中核とする「就職準備講座」プログラムを開発・提供し、その効果について検討した。結果、2016年度及び2017年度の本プログラムに参加した学生12名より協力が得られ、就職に対する準備性の向上、及び障害特性のアセスメント機能についての効果があったことが考察された。
著者
名川 勝 堀江 まゆみ 於保 真理 Nagawa Masaru Horie Mayumi Oho Mari
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究
巻号頁・発行日
vol.27, pp.135-146, 2003-03

知的障害者の地域生活において遭遇する消費生活トラブルについて、質問紙調査及び事例によって検討した。一地域の親の会を対象とした調査では、他の種類と比べて消費生活に関するトラブル報告数はかなり少なかった。そのため、トラブルの種類や被害対象者の特徴などについて示唆を得ることが出来なかった。事例調査では、支援者からの聞き取りにより27例を収集した。トラブルは生活形態、被害内容(額)、経緯、事態確認と本人の意識、行われた対処、他相談機関の有無などによって整理され、それぞれの項目に添って事例を検討した。また被害意識の持たれ方について、若干の事例を検討した。最後に今後の研究課題として、基礎資料の整備、セイフティネットの在り方、支援方法の検討などを指摘した。
著者
名川 勝 堀江 まゆみ 於保 真理
出版者
筑波大学心身障害学系
雑誌
心身障害学研究 (ISSN:02851318)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.135-146, 2003-03

知的障害者の地域生活において遭遇する消費生活トラブルについて、質問紙調査及び事例によって検討した。一地域の親の会を対象とした調査では、他の種類と比べて消費生活に関するトラブル報告数はかなり少なかった。そのため、トラブルの種類や被害対象者の特徴などについて示唆を得ることが出来なかった。事例調査では、支援者からの聞き取りにより27例を収集した。トラブルは生活形態、被害内容(額)、経緯、事態確認と本人の意識、行われた対処、他相談機関の有無などによって整理され、それぞれの項目に添って事例を検討した。また被害意識の持たれ方について、若干の事例を検討した。最後に今後の研究課題として、基礎資料の整備、セイフティネットの在り方、支援方法の検討などを指摘した。
著者
名川 勝
出版者
筑波大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

一般には後見申立にかかる提出書類のうち基礎資料、財産資料、医学所見にかかる資料以外で、本人に関する社会的、心理的情報などをソーシャル・レポートと呼んでいるようだが、本研究では申立添付書類以外でも本人の後見事務に関して取り扱われる資料を含めた。そのうえで研究動向の調査ならびに実務の実際に関する調査を行った。各地の家庭裁判所における書式は所定の申立書類様式に身上監護に関する情報もあらかじめ求めるようになってきており、これをソーシャル・レポートに含めることもできるかもしれないが、十分とは言えないとの指摘が得られた。この場合、ソーシャル・レポートは本人のより正確な審判を得るため、とりわけ類型判断に有用な情報であるとの意見があった。また第三者後見の場合に候補者となるべきかの情報になり得るとの意見もあった。しかしながら、そのような詳細な情報収集を申請時書類に含めることは、却って申請を困難にするとの指摘も同時に得られている。ただしいずれの回答者についても申請前あるいは申請後によりよい後見事務を執り行うためにこれらソーシャル・レポートに関連する情報は必要との点では異論は無かった。ソーシャル・レポートに関わる情報は生活支援との関連が強いことから、今後はさらに審判前後それぞれの取り組みと他機関も含めた連携のあり方からよりよい情報のあり方を検討する。