著者
濱田 裕子 笠 ゆりな 平野 由似 宇野 裕和 大歳 晋平 中田 土起丈 末木 博彦
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.79, no.5, pp.636-641, 2019 (Released:2020-02-06)
参考文献数
20

フラジオマイシン,ゲンタマイシン等のアミノグリコシド系抗菌剤を含有する外用薬は熱傷を含む創傷や感染性皮膚疾患の治療,術後創傷処置などに汎用されている.このうち硫酸フラジオマイシンは感作能を有しているため,アレルギー性接触皮膚炎の代表的な原因物質を網羅しているジャパニーズスタンダードアレルゲンにも含まれている.この硫酸フラジオマイシンの感作率および感作原を検討する目的で10年間のパッチテスト結果を検討した.対象は2009年5月より2018年5月までに昭和大学病院附属東病院,横浜市北部病院,藤が丘病院の皮膚科外来を受診し,硫酸フラジオマイシンのパッチテストを施行された242名(男49名,女193名,16〜92歳,平均年齢52.4,SD±18.7歳)である.パッチテストは試薬を背部の健常皮膚に貼布し,2日後に除去した.判定は貼布2,3,7日後にICDRG(International Contact Dermatitis Research Group)基準に基づいて行い,7日後に+〜+++と判定された者を陽性とした.陽性反応が認められたのは14名(陽性率 5.8%)で,男性に比して女性で高値であった(4.1% versus 6.2%).陽性者の平均年齢は61.8歳で,年代別では60〜69歳の陽性率が最も高く(9.8%),以下,50〜59歳(8.6%),40〜49歳(7.0%),70〜79歳(6.5%)の順で,40歳未満には陽性反応は認められなかった.陽性者14例中10例(71.4%)が接触皮膚炎の患者で,全例で顔面に皮疹が認められた.そのうち眼囲に皮疹が認められた8例は,いずれもステロイドと硫酸フラジオマイシンを含有する眼軟膏による治療歴を有していた.硫酸フラジオマイシンの感作者が高齢者に多いのは医療行為,特に眼軟膏によって感作が成立した可能性が高い.本邦の陽性率は米国(11.4%)よりは低いものの,ヨーロッパ諸国(2.6%)と比較すると高値で,フラジオマイシンを含有する外用薬を減少させたカナダでは感作率も著明に低下している.また,硫酸フラジオマイシン感作者では,硫酸ゲンタマイシンなど他のアミノグリコシド系抗菌剤にも交叉感作を生じうることが知られている.フラジオマイシン系抗菌剤は抗菌作用が期待されて創傷等に多用されているが,第一選択薬になる必然性は認められない.長期間の使用による耐性菌の発生に加え,外用による感作の成立にも注意が必要であり,その使用法について再考を要すると考える.
著者
北川 真希 田 啓樹 村國 穣 小風 暁 末木 博彦
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.325-332, 2021 (Released:2021-10-27)
参考文献数
20

鶏眼と胼胝は皮膚科領域で頻度の高い疾患であり,その臨床的特徴から区別されるが,同一の病態に基づく一連の疾患として扱われる.2008年から2018年の10年間にむらくに皮フ科を受診し,足底の鶏眼・胼胝と診断された患者2,133例を対象とし,診療録情報をもとに鶏眼・胼胝患者の年齢,性別,発生部位,発生数を中心に統計学的解析を加え,鶏眼・胼胝の疫学的事項につき共通点,相違点を明示することを目的とした.さらに生活習慣に関する問診事項から患者背景,発症誘因を検討した.その結果,以下の事実が明らかになった.鶏眼病変と胼胝病変はともに年齢層を問わず単発例より多発例が多い.鶏眼と胼胝を合わせた全体の男女比は1:2.1と女性に多い.対象者全体の34.4%に鶏眼と胼胝が合併し,合併例では鶏眼と胼胝が別部位に生じる症例より同一部位に混在する症例が多い.患者の年齢分布を鶏眼と胼胝で比較すると,男女を合算したピークはともに30歳代であった.男性の鶏眼は,高齢者では足底外側に,若年者では中間足趾に好発する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).女性の鶏眼は,高齢者では中間足趾に,若年者では足底外側に好発する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).女性の胼胝は,若年者の胼胝は第2, 第3中足骨関節部に多く発症する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).ハイヒール使用群は非使用群と比較し第2, 第3中足骨関節部で有意に胼胝を多発する(χ二乗検定事後解析,p<0.001).以上より鶏眼と胼胝の好発部位は年齢層,性別により異なるため,属性別に発症のリスク因子を解析し,それぞれの再発予防策を検討する必要があると考えた.
著者
末木博彦
出版者
医薬ジャーナル社
巻号頁・発行日
pp.1636-1641, 2013-10-15

小児のアトピー性皮膚炎では国内外の疫学研究から肥満と有意の関連性があり,特に幼児期に一定期間持続した肥満がアトピー性皮膚炎の病態悪化に関与する可能性がある。これに対し,成人アトピー性皮膚炎では肥満との関連性を示唆する米国の疫学研究があるが,わが国を含め現在までのところこれを支持する報告はない。肥満とアトピー性皮膚炎を結びつける機序としてアディポネクチンの低下に伴うIL-10の発現低下により抑制系が働かないこと,レプチンを介するTh1/Th2バランスの変化,TNF-αの発現亢進によるアレルギー炎症の増悪などが想定されている。
著者
片山 恵子 伊藤 雄太 濱田 裕子 宇野 裕和 中田 土起丈 末木 博彦
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.76, no.4, pp.480-485, 2016 (Released:2017-03-16)
参考文献数
21

掌蹠膿疱症は原因不明の難治性疾患であるが,誘因として病巣感染,喫煙,金属アレルギー等が指摘されている.本症における金属アレルギーを検討する目的で,22年間のパッチテスト結果を検討した.1990年4月より2012年3月までに昭和大学病院附属東病院皮膚科を受診し,歯科金属シリーズのパッチテストを施行された1,025名 (男210名,女815名,4~85歳, 平均年齢40.1±18.1歳) を対象に,掌蹠膿疱症患者群 (148名) と他疾患患者群 (877名) との間で陽性率の比較を行った.パッチテストは18種類の金属試薬を健常皮膚に貼付し,48時間後に除去した.判定は72時間後にICDRG (International Contact Dermatitis Research Group) 基準に基づいて施行し,+~+++を陽性とした.掌蹠膿疱症患者群と他疾患患者群とで金属の陽性率を比較すると,0.5%塩化白金酸に対する陽性率が前者では6.8% (148名中10名)であったのに対して,後者では2.6% (877名中23名) であり,χ2検定で両群間に有意差が認められた (p<0.05).したがって,掌蹠膿疱症においては白金(Pt)に対するアレルギー反応が重要な役割を担っている可能性が高いと考えられた.本症のパッチテスト結果について,1施設での長期間にわたるデータの検討結果は報告されておらず,新知見を与える研究と考えられる.
著者
山藤 千草 杉山 美紀子 三浦 健太郎 北見 由季 末木 博彦 飯島 正文 山本 雄一 上里 博
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.5, pp.355-359, 2006 (Released:2011-02-18)
参考文献数
18

71歳,男性。40年来熱帯魚屋を経営している。約4ヵ月前より右手背の紅斑に気づき,ステロイド外用剤で加療するも軽快せず当科を受診した。初診時,右手背に24×20mmの暗紅色の扁平に隆起した浸潤性紅斑を認めた。病理組織所見では非乾酪壊死性類上皮細胞性肉芽腫像を示した。組織のZiehl Neelsen染色では抗酸菌は陰性だったが,組織片の塗抹標本では全視野で1~4個の抗酸菌を認めた。組織片の培養(小川培地)では表面が淡いクリーム状のコロニーを認め,生化学的性状より本菌をMycobacterium(以下M.)marinumと同定した。さらに分離培養株を対象にPCRおよびダイレクトシークエンス解析を行いM. marinumと確定した。塩酸ミノサイクリン 200mg/日の内服で8週間後に瘢痕治癒した。