著者
本橋 玲 渡嘉敷 亮二 平松 宏之 野本 剛輝 許斐 氏元 櫻井 恵梨子 豊村 文将 塚原 清彰 鈴木 衞
出版者
THE JAPAN LARYNGOLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.93-98, 2014-12-01 (Released:2015-07-22)
参考文献数
11

Thyroarytenoid muscle myectomy (TAM) is a useful procedure for treating adductor spasmodic dysphonia (ADSD), in addition to type II thyroplasty (TP II), and both are performed in our department in Japan. In the present study, we examined the surgical outcomes of TAM. The subjects were 31 patients who underwent TAM between 2008 and 2013 at Tokyo Medical University Hospital, who could be followed up for at least six months following surgery and whose voice quality evaluation data were available. A comparison of voice evaluations pre-surgery and six months post-surgery was made. After six months, a significant improvement was seen in all of the voice quality evaluation items, including “strangulation”, “interruption”, “tremors” and voice handicap index (VHI). There was a marked recurrence of the symptoms in two of the 31 subjects within six months. Hemorrhage and scarring were observed as postoperative complications. In addition, we gave a questionnaire to 30 of the subjects who were followed up for at least one year following surgery, which asked about the recurrence of hoarseness and the degree of satisfaction with the surgery. Fifteen subjects responded (50%). The period of continuous hoarseness had ranged from one to 24 months. No subject felt that the hoarseness was a serious impediment in daily life, and the median period required for its disappearance was four months. Symptoms recurred in three subjects, but they tended to be mild. All 15 subjected reported experiencing a benefit from the surgery. The degree of satisfaction with TAM is very high, and we consider it to be a useful procedure for adductor spasmodic dysphonia.
著者
渡嘉敷 亮二 平松 宏之 本橋 玲 品田 恵梨子 井上 瞬
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.114, no.5, pp.491-497, 2011 (Released:2011-09-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

音声障害の診断と治療は特に見た目の異常がない場合, 耳鼻咽喉科医にまだ広く知られているとはいえない. 本稿では診断と治療に関して一般耳鼻咽喉科医にはなじみが薄いもの, と同時に新しい知見について紹介する. 声帯に異常が見られない音声障害には, 機能性発声障害や痙攣性発声障害がある. 前者の治療には積極的に耳鼻咽喉科医がかかわるべきもので, 見た目の異常がないことで治療不要との判断をしてはならない. 後者は声帯筋の局所性ジストニアであり, 的確な治療により改善するため, 疾患についての認識と理解が必要である. 老人性声帯萎縮による嗄声は, 日常生活において乾燥の回避や唾液分泌を促進する工夫, 声を積極的に使うことで改善へ向かう. 音声障害の外科的治療は声帯ポリープや声帯麻痺など疾患によりその方法も多彩であるが, いずれにおいても内視鏡の進歩により外来での日帰り手術の適応が広がった. 声帯ポリープ摘出術や声帯萎縮・片側声帯麻痺に対する声帯内注入術は, 喉頭の麻酔を十分に行えば, 内視鏡下での微細な手術が外来で可能である. ただし片側声帯麻痺に対しては, 確実に良い声を得るためには入院での披裂軟骨内転術が望ましい. 音声障害は特徴的な声や声帯の動きといった動的情報が診断に重要である. われわれはweb上でホームページを立ち上げ音声障害に関する情報を発信している.
著者
岡本 伊作 塚原 清彰 佐藤 宏樹 本橋 玲 近藤 貴仁 岡田 拓朗 清水 顕
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.223-229, 2017-10-30 (Released:2017-11-22)
参考文献数
8
被引用文献数
3

頭頸部癌に対する手術の中で,最も重要な術式の一つに頸部郭清術があげられる。では,どのようにこの頸部郭清術を中心とした頭頸部癌に対する手術手技を,安全かつ効率よくトレーニングしていけばよいのかに関しては明確な指標はなく,施設によって異なっている。われわれの施設では,ドライラボで十分にトレーニングを行った初期・後期研修医,若手医師を対象に,cadaverやアニマルラボを用いた手術トレーニングを行っている。しかし,頭頸部領域でアニマルラボトレーニングを行っている報告はない。今回は,過去に施行したアニマルラボトレーニングにおいて,トレーニングの前と後で参加者による自己習熟度評価と,指導医による習熟度評価について検証した。それにより,頭頸部領域におけるアニマルラボトレーニングの有効性を検討した。アニマルラボとレーニングは手技の向上に関して有意に有効な結果であった。技術の向上は医療安全の観点からも非常に有用となると推察された。