著者
本間 友巳
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.51, no.4, pp.390-400, 2003-12-30 (Released:2013-02-19)
参考文献数
27
被引用文献数
2 4

本研究の目的は, いじめ加害者の特徴やいじめ加害の停止と関連する要因を明らかにすることを通して, いじめ加害者への対応について検討することである。調査対象は1,245名の中学生である。主要な結果は,(1) いじめ加害者によるいじめの停止に正の関連を持つ要因は, いじめやいじめ被害者に対する道徳・共感的な認知や感情であった。いじめ加害者のいじめ停止理由の自由記述でも, この結果は支持された。(2) いじめ加害者によるいじめ停止理由の記述を通して, いじめ停止に教師の指導が大きな影響を与えていることも明らかとなった。(3)「加害・継続群」は, 他の群に比べて,いじめ加害に関して大きな問題性を有していた。(4) いじめ加害者への対応として, 感情面まで踏み込んで道徳・共感性を高める取り組みを行うことが重要と考えられた。特に「加害・継続群」の生徒への対応は, 加害者個人のみならず, 加害グループや学級集団にも向けられる必要性が議論された。
著者
本間 友巳
出版者
京都教育大学
雑誌
京都教育大学紀要 (ISSN:03877833)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.143-150, 2006-03

本研究の目的は,いじめ被害経験を持つ中学生が行ったいじめへの対処の特徴を明らかにする中で,彼らへの支援の方法を検討することである。結果は以下の通りである。(1)いじめ被害者の対処に性差が認められた。男子は直接的な対処が多く,女子では間接的な対処が多かった。(2)半数を超えるいじめ解決者が,解決理由を「外部の影響」として記述していた。さらに彼らの半数以上が,転校やクラス替えなどの状況・物理的要因を解決理由として記述していた。(3)これらの結果から,いじめが解決可能であることを伝えていく啓発活動の必要性が議論された。The purpose of this study is to examine the ways for giving support to Junior high school students being bullied, through clarifying their characteristics of coping with bullying. The main results are as follows. :(1)There was a gender difference in victims' coping. Boys' coping was more direct, while girls' coping was more indirect.(2)More than half of students who had resolved bullying problems described 'outside influences' as a reason of the solution. Moreover, more than half of them gave a description of 'situational factors' like transfering to another school and classes as a reason for the solution. (3)From these results, the necessity for educational activities to inform the victims how bullying can be surely solved was discussed.
著者
高田 響子 本間 友巳
出版者
京都教育大学附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践研究紀要 (ISSN:13464604)
巻号頁・発行日
no.9, pp.135-144, 2009-03

本研究の目的は,児童福祉施設における心理職と福祉職がそれぞれの立場と専門的支援をどのように認識しているのかを明らかにし,比較検討することにある。そのため,児童福祉施設の心理職・福祉職を対象に,施設における役割と現状への認識について,半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析を行った。その結果,心理職の役割認識として「個別的心理支援」,現状認識として「心理職の未確立」が,福祉職の役割認識として「包括的生活支援」,現状認識として「専門的アイデンティティの末確立と模索」というコア・カテゴリーが生成された。また、心理職・福祉職共に、相互理解のもとでそれぞれの専門性を活かしたより質の高い連携の重要性を認識していることが明らかになった。両者の連携が上手く機能していくための具体的な条件は何かを探っていくことが今後の課題である。