著者
本間 昭信
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.73, no.11, pp.802-816, 2000-11-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
26
被引用文献数
1 1

本研究は,従来,実験室的な空間に限定して考えられることの多かった視覚障害者の空間認知を,日常的な生活空間において考察した.被験者は主に社会福祉法人京.ライトハウスに所属する視覚障害者であり,対象地域は被験者の歩行訓練が行われる東西1,000m,南北600mほどの地区である.視覚障害者の認知距離と認知地点の布置(認知座標)について,全盲者・弱視者・晴眼者を比較考察した. その結果,ルート型の知識を問う認知距離実験,サーヴェイ型の知識を問う認知座標実験のいずれにおいても,視覚障害者の認知地図の歪みは,晴眼者よりも大きいことがわかった.しかし,この歪みの特性には,視覚障害者の障害の度合いのみならず,視覚利用の経験や,.障害の履歴による差がみられた.
著者
本間 昭信
出版者
The Association of Japanese Geographers
雑誌
地理学評論 (ISSN:13479555)
巻号頁・発行日
vol.75, no.14, pp.887-900, 2002-12-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
17
被引用文献数
3 1

本研究は,視覚障害者の日常生活におげるモビリティの規定要因を,対象者の移動環境に対する満足度や,障害の度合いといった個人属性の関係から明らかにすることを目的としている.まず,視覚障害者の移動環境にどのような種類があるかを因子分析から明らかにし,重回帰分析によって単独移動率として定義されたモビリティと移動環境の満足度を評価する.そして,因子得点に基づくクラスター分析から典型的な移動環境評価の特性を分類し,対象者のモビリティと個人属性の関係を追究した.その結果,対象者の移動環境に対する満足度の高さがモビリティを規定するとはいえないことが示された.これは,障害の度合いや移動に対する抵抗感,そして対象者の背景の個人差によって生じるものである.それゆえ,対象者の日常的な移動行動上の制約を明らかにするためには,物理的環境の制約のみならず,個人がおかれた社会的背景と意識的側面に注意を払いながら考えていくことが重要な課題となる.