著者
山本 則子 石垣 和子 国吉 緑 川原(前川) 宣子 長谷川 喜代美 林 邦彦 杉下 知子
出版者
Japanese Society of Public Health
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.660-671, 2002-07-15
参考文献数
23
被引用文献数
10

<b>目的</b> 「介護に関する肯定的認識」が,介護者の心身の生活の質(QOL)や生きがい感および介護継続意思に与える影響を,続柄毎に検討することを目的とした。<br/><b>方法</b> 東京・神奈川・静岡・三重・沖縄の全21機関において訪問看護を利用している322人の高齢者の家族介護者に質問紙調査を実施した。介護負担感が続柄により異なるという過去の報告に鑑み,分析は続柄別に行った。分析には QOL,生きがい感,介護継続意思を従属変数に,属性および介護に関する肯定的認識・否定的認識を独立変数とした重回帰分析およびロジスティック回帰分析を用いた。<br/><b>結果</b> 1) 身体的 QOL に「肯定的認識」は関連しない。<br/> 2) 心理的 QOL と「肯定的認識」の関連は続柄により異なる。介護者が夫および息子の場合は「肯定的認識」のみが,妻の場合は「肯定的認識」,「否定的認識」の両者が心理的 QOL に関連する。娘の場合は「否定的認識」のみが心理的 QOL に関連する。嫁の場合はどちらも心理的 QOL に関連しない。<br/> 3) いずれの続柄でも生きがい感には「肯定的認識」が強く関連する。夫および息子では「否定的認識」は生きがい感に関連しない。<br/> 4) 介護継続意思には,夫および息子では「肯定的認識」,「否定的認識」の双方が関連するが,妻・嫁では「肯定的認識」のみが関連する。娘では「否定的認識」が介護継続意思に関連する。しかし,続柄別の違いはわずかと思われる。<br/><b>結論</b> 介護者の心理的 QOL や生きがい感を高める支援を考えるため,介護の継続を予測するためには,介護の肯定的認識を把握することが重要と考えられる。介護の肯定的認識の影響は続柄別に異なるため,支援に際しては続柄別に検討を行うことが必要である。
著者
大嶺 ふじ子 浜本 いそえ 小渡 清江 宮城 万里子 砂川 洋子 杉下 知子
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.19, no.3, pp.64-73, 1999-11-30 (Released:2012-10-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

正しい性知識を伝授することと性をより肯定的に捉えられるような動機付けを目的として, 大学生8人がピァ・カウンセラーとなり, 高校生42人に対しロールプレイ等を取り入れたピァ・エデュケーションを3回にわたり実施した. ピァ・エデュケーションの具体的な方法と展開内容および留意点を検討し, その実施前後に高校生の性に関する知識及び意識についての変化と男女差を明らかにするための自記式質問紙調査を行った.ピァ・エデュケーション実施後の感想では,「性についてよく考えられた」,「もっと性のことを知りたい」,「カウンセラーの人たちは話しやすくて, 質問をしやすかったので安心できた」,「3回だけではなくもっと計画してほしい」など否定的な感想は無く好評であった.今回の性知識・性意識の調査結果からも, この時期の特徴が反映されており, 性意識は活発化してきているといえるが, 性知識は不十分であった. 特に, 性知識の面では,男女ともに, 避妊法では「コンドーム」, STDでは,「エイズ」と知識に偏りが大きかった. 性意識の面では, 性の責任性において, 男子は実施後に高い得点を示し, 変化がみられた. また,「望まない妊娠を避けるには」において, 男女とも実施後に「男女が性について本音で話し合える」と答えたものが倍増し, 変化がみられた.このことより, ピァ・エデュケーションは, 生徒が性をより建設的, 肯定的に考えることに役立つ教育方法として, 効果があることが示唆された.
著者
石垣 和子 杉下 知子
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

朝日新聞記事を中心に、第2回の社会福祉制度審議会勧告の出された1960年前後から現在に至る掲載記事が、高齢者介護に関して発してきた情報の質量を検討した。検討素材として2種類のデータベースを作った。一つは「としよりの日」あるいは「敬老の日」である9月15日の紙面で何がどう語られていたかに関するデータベース、もう一つは9月15日に限定せずに社説のみについて関連する記事を集めたデータベースである。社説データベースでは、法律や制度の新設・変化や関連委員会の提言・勧告、大きな調査などの結果発表を受け、社としての公式の見解が表明されていると受け止められるものが多かった。社説における高齢者介護問題の扱いは、1962年までは全く扱っておらず、その後は1982年を除いて毎年扱っていた。高齢者の在宅ケアを推奨する方向性の認められる社説は1970年に初めて出現し、1975年以降は頻繁に出現していた。敬老の日の記事では、社説、天声人語、読者の声、家庭面、社会面、1面、総合面など、あらゆる紙面にて関連記事が扱われていた。紙面に占める関連記事の量(記事面積で算定)は、1960年に入ると急激に増加し、そのうちでも敬老の日制定(1966年)、老人医療費無料化(1973年)、在宅支援サービスの始まり(1979年)、老人保健法の制定(1983年)に対応してピークが見られ、国策に敏感に対応していることが判明した。1987年には在宅サービスの拡充と老人保健施設の導入に対応して大きなピークを示した後、記事量は減少し現在に至っている。人々の関心と意識を反映すると思われる声欄では、1964年以降高齢者に関する話題の投書が取り上げられるようになっており、1974年、1980年から1983年においてはすべての声が高齢者の話題であった。1960年代に多く見られた、施設拡充や入所促進への肯定的な声が、1980年代になると住宅ケア推進へと傾く傾向が見られた。