著者
杉山 敏子 出多 英興
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.255-265, 2007-12-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
39
被引用文献数
2 1

本研究は健常成人の内因性 (自発性) 瞬目の諸属性についてその標準値を得ることを第一の目的とし, さらに年齢差, 性差, コンタクトレンズ装着の影響などを検討した。実験参加者は20歳代から93歳までの男女成人617名で, 共通の課題として3分間に編集したビデオ刺激の視聴を課し, その際の瞬目をビデオに記録し解析した。結果は, (a) 成人の標準的な瞬目率はほぼ20/分であった, (b) 女性の方が高頻度傾向という性差が認められたが, (c) 著明な年齢差は認められなかった。さらに, 開瞼時間, 閉瞼時間, 左右眼瞼の同期の程度, 瞬目の時間分布, メガネやコンタクトレンズの影響などを性と年齢段階別に解析した。その結果, コンタクトレンズ装着者は非装着者に比べて瞬目率が高いことが明らかになった。
著者
杉山 敏子 丸山 良子 柏倉 栄子 小笠原 サキ子 田多 英興
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究の目的は,看護の諸場面におけるケアの効果を,種々の指標によって多面的に評価するための指標の開発をすることと,同時にさまざまなケアを行うことによって人の身体あるいは心にどのような変化が起こるのかの基礎研究である。看護場面での生理指標として,内因性瞬目の可能性を検討した。また,睡眠と活動量についての相関について検証を行った。内因性瞬目については,乳児から高齢者まで看護の指標となるよう基準値が得られるよう測定を行った。その結果,乳児は平均0~2回/分,成人~高齢者は20回/分前後であった。また,女性の瞬目率は40歳以降になると男性よりも有意に多かった。また,内因性瞬目は近年発達障害の指標としても使用されており,看護の中でも状態の観察の一項目として有用な指標と考えられた。睡眠については,夜間の病棟内の騒音と睡眠の程度について調査を行った。夜間の音の大きさは外科病棟,内科病棟ともに40~47dBで,患者が目覚める原因となる音は大きさよりも,ナースコールや救急車の音であり,非日常的で病院特有な音が原因となっていた。また,患者の日中の活動量と睡眠状態の関連性については,療養高齢者の睡眠は,睡眠時間が長く,睡眠型は良好で,睡眠習慣が規則的である。療養高齢者の睡眠習慣と活動状況には,負の相関がある。療養高齢者の睡眠の質に対する主観的な評価と客観的な評価は異なっていて,客観的には悪いのだが,主観的には良好としている。
著者
渡邊 生恵 杉山 敏子
出版者
一般社団法人 日本看護研究学会
雑誌
日本看護研究学会雑誌 (ISSN:21883599)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.5_117-5_128, 2012-12-01 (Released:2016-03-05)
参考文献数
35

目的:患者と看護師における療養環境評価の視点の特性を明らかにする。方法:一般病床入院患者20名と同病棟看護師20名に対し,評価グリッド法を用いて入院環境についての評価を調査した。結果:①看護師は患者に比べ評価する項目が多かった。②患者は多床室でプライバシーを保ちつつ他者とかかわれる環境,看護師は家族とのプライバシーを重視していた。③患者は細かな生活のしやすさを評価していたが,看護師は安全性を評価していた。④患者は自分の必要性にあった環境が整っていることを評価していたが,看護師はすべての患者に同じレベルの環境が提供され,家よりも高い快適性であることを評価していた。結論:看護師による環境評価には基礎教育および臨床での経験が反映されており,患者間のエンパワメント効果や日常生活の送りやすさという患者の視点を加えることで,より一層患者の求める環境を提供できる可能性が示唆された。