著者
小島 伸枝 杉本 寿司 谷本 智美 藤井 美穂 伊藤 俊一
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-95_2, 2019 (Released:2019-08-20)

【目的】 腹横筋,腰部多裂筋,骨盤底筋,横隔膜の筋が作用することにより腹腔の円柱効果が得られ,腰椎骨盤領域の支持性が高まるという諸家の報告がある.これらを背景に体幹の動的安定性トレーニングとして骨盤底筋群へ,または骨盤底筋群と腹横筋等の協調した収縮を得るための介入に関する報告は少なくない.一方骨盤臓器脱は妊娠・出産や繰り返される腹圧上昇課題によって骨盤内臓器を支持する靭帯や筋が脆弱化することで発症する疾患とされる.このことから骨盤底筋群の機能不全を背景とした骨盤臓器脱(以下POP)患者の多くが,腰椎骨盤領域の支持性が低下することで腰部疾患既往をもつと考えられるが,本邦における報告は少ない.そこで今回我々は重症POP患者の腰部疾患の既往歴を調査したため報告する. 【方法】 対象は平成28年4月1日から平成29年12月31日までにPOP手術目的で当院女性総合診療センターに入院した患者のうち,書面同意が得られた182名とした.対象の年齢,治療期間(当院女性総合診療センターの外来初診日から手術日),BMI,POPの診断名,既往歴を診療録から後方視的に調査した.尚既往歴は入院時に看護師が問診により聴取したものである. 【結果】 対象者の平均年齢は69.0±7.61歳,平均治療期間は165±359日(range2-2206日),平均BMI24.3±3.0kg/m2であった.POPの診断名は子宮脱+膀胱瘤が63名,子宮脱55名,膀胱瘤40名,直腸瘤7名,膀胱瘤+直腸瘤5名,子宮脱+直腸瘤4名,POPとその他の疾患合併が8名であった. 腰部疾患既往がある対象者は10.9%(20名)であり,のべ数で腰椎椎間板ヘルニア3.8%(7名;子宮脱+膀胱瘤4名,子宮脱4名),腰部脊柱管狭窄症3.2%(6名;子宮脱+膀胱瘤2名,子宮脱4名),腰椎症0.5%(1名;子宮脱+膀胱瘤),腰椎すべり症1.6%(3名;子宮脱+膀胱瘤1名,子宮脱+直腸瘤1名,子宮脱1名)であった.その他腰椎圧迫骨折は3.8%(7名;子宮脱+膀胱瘤3名,子宮脱4名),後縦靭帯骨化症0.5%(1名;子宮脱+膀胱瘤)であった.  【考察】 本研究の対象者は手術目的での入院であり,骨盤底筋群の機能が破たんした時点(手術適応時点)での定点調査において腰椎疾患を既往にもつ対象は10%に留まった.腰椎疾患は前屈障害,伸展障害いずれの傾向もなく,下垂臓器にも偏りは認めなかった.このことから骨盤底筋群のトレーニングを含む体幹動的安定性への画一的な介入は,未だ議論の余地があると考える.一方POP手術は術式によっては載石位をとるため,既往歴の聴取は術後トラブル回避により入念に行われるが,問診では非特異的腰痛を有する患者を抽出できていない可能性があり追加検討が必要と考えている. 【倫理的配慮,説明と同意】この研究は個人が特定できない方法で公開すること、途中で研究不参加の意思を表明しても患者の不利益にならないことを説明し、本人に対し書面で同意を得た。
著者
杉本 寿史 永井 理紗 波多野 都 吉崎 智一 武居 渡
出版者
日本小児耳鼻咽喉科学会
雑誌
小児耳鼻咽喉科 (ISSN:09195858)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.320-325, 2021 (Released:2022-03-31)
参考文献数
10

石川県では平成22年に「いしかわ赤ちゃんきこえの相談支援センター(みみずくクラブ)」が開設された。このセンターは保護者に対して3回の個別相談を行うことで難聴児を療育へつなぐ橋渡しを行っており,開設してから11年目を迎え96名の難聴児を受け入れてきた。今回このセンターをより良いものにするために,平成22年度から平成30年度に当センターに紹介された保護者を対象にアンケートを行い,今後の改善点について考察した。このセンターに対するアンケート結果は概ね良好であったが,下記の項目が今後検討すべき課題と考えられた。(1)システム:精密医療機関との連携強化。養育中の保護者に参加してもらうことも検討。(2)医学的情報提供:説明用の資料を保護者に提供し,資料にそって網羅的に説明する。(3)療育とサポート:療育担当者に参加してもらうことも検討。難聴児へのサポートに関する情報をまとめた資料を保護者に提供する。
著者
杉本 寿
出版者
一般社団法人日本森林学会
雑誌
日本林學會誌 (ISSN:0021485X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.140-142, 1954-05-25

この研究はROKUROSHI SYSTEMおよびROKUROSHI SETTLEMENTSを基礎とする, わが国山村の経済構造の研究である。ここにおいてはその結論と, 調査方法論を示すために近畿地方のTableを掲げることにした。ROKUROSHI SYSTEMを通じて, 全一てきに標記課題の研究調査を試みることについて, 学問てきには若干の疑問が観られ, 且つ論争が見られるであろう。しかしこの特異な山村民族の集団が, 全日本の地理てき領域に散在し, 優良な山村聚落を構成して居ることは, 日本山村の地域てき性格構造を正確に象徴する, 東北型とか九州型とも云うべき, 地方林業てき区域を最も端てきに指摘し得る, 都合の良いDataを現わして居るのである。著者は30年らい, この研究を通じて, わが国の山村経済構造の究明が, これ以外のDataによつては困難であることを科学てきに経験した。すなわちそれと云うのは, 学問てきに純粋な山村とは, 果して何れの村落をピツクアツプす可きであるか。同一種族ないしは尠くとも学問てきに比較検討し得べき, 同一基盤にたつ研究資料には, この資料以外には存在しないからである。しかしこれには以下の如き資材Dataの若干の欠陥が存在している。それは経済てきに恵まれ過ぎた山村の調査聚落数が欠けている事である。しかしそれは一面, 日本全国の平均値と云う意味においては, 若干の役割を果しても居るものである。また更に地方性, なかんづく北海道においては, 開拓事業を通じて資料が霧散〔すべての農業資料における共通性であるが〕し, 東北・関東・九州地方には資料の濃淡があり, そのfrequencyが相当大である事である。しかしこれらの事は, これらのFactが, この研究の為に存在するもので無い以上, やむを得ない事であらねばならない。Tableとしては, 日本全国のうち最も小さい単位領域である, 近畿地方だけを挙げる事にした。また印刷の制約により, 更に簡約にしたものが, このTableである。このTableにては簡易に過ぎ理解困難, または更に原表を必要とする方は, 中国地方のB原表が福井大学紀要に発表されるので, 著者あて申込まれたい。因みにA原表は, 江戸時代前後における, 山村の歴史地理てき統計実態表である。全国のB原表のみ近く某官庁より出版せられる予定である。