著者
安部 琢哉 KIRTIBUTR N SLAYTOR M KAMBHAMPATI S THORNE B BIGNELL D.E HOLT J 杉本 敦子 武田 博清 山村 則男 東 正彦 松本 忠夫 SLAYTOR Michael THOME Barbara L HOLT John A SLAYTOR M. KIRTIBUTR N. KAMBHAMPATI エス THORNE B. BIGNELL D.E. HOLT J. GRIMARDI D.
出版者
京都大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

本研究は、熱帯陸上生態系で植物遺体の分解に大きな役割を果たしてシロアリが、地球規模で適応放散による多様化を遂げた道筋と機構を明らかにすることを目的とする。シロアリにおける(1)微生物との共生による植物遺体の利用、(2)社会性の発達、(3)食物貯蔵・加工の3過程に注目し、これらに系統進化(DNA解析による分子系統や形態や共生微生物に基づく系統進化)および生物地理に重ね、それに理論的な検討を加えた。特にシロアリの多様化の鍵を握る(1)下等シロアリから高等シロアリへの進化、(2)キノコを栽培するシロアリの起源、(3)社会性の進化と多様性について仮説を提出すると共に、(1)空中窒素固定とセルロース・ヘミセルロース分解、(2)土を食べるシロアリの適応放散、(3)シロアリが地球上でのメタン生成に果たす役割について質の高いデータの提出を目指した。(1)下等シロアリから高等シロアリへの進化中生代白亜紀の遺存森林であるオーストラリアのクイーンスランドの熱帯林とそれに隣接する、第三紀に発達したサバンナにおいてシロアリ種組成を比較した。その結果、前者では下等シロアリが、後者では高等シロアリが卓越していた。このことから、高等シロアリが森林でなくサバンナで進化して熱帯林とサバンナで適応放散を遂げたとの新しい仮説の提出しつつある。(2)キノコを栽培するシロアリの起源シロアリ主要グループの分子系統樹を作成して、キノコシロアリが高等シロアリの中で最も古い時代に分化し、下等シロアリのミゾガシラシロアリ科と近縁であることを明らかにすると共に、キノコシロアリ巣内のキノコ培養基とミゾガシラシロアリ科のイエシロアリの巣内構造物の化学組成を特にリグニン含量を比較することにより、シロアリにおける糞食とキノコ栽培の起源に迫りつつある。(3)シロアリにおける社会性の進化と多様性シロアリ地球規模での多様化を微生物との共生と社会性の進化に注目して検討し,これをT.Abe,S.A.Levin & M.Higashi編(1997):Biodiversity(Springer)中で展開した。(4)空中窒素固定、セルロース・ヘミセルロース分解材を食べるコウシュンシロアリでは体を構成する窒素の50%が空中窒素起源であること、しかし土を食べるシロアリでは空中窒素固定能が低いこと、また下等シロアリでも共生原生動物だけでなくシロアリ自身もセルロースやヘミセルロースを分解する酵素を作ることなど、これまでの常識をくつがえすデータを次々を提出した。(5)土を食べるシロアリの適応放散過程カメルーンの熱帯林で土壌食シロアリの安定同位体分析と腸内容物分析を行い、土食いへの指標として安定同位体比が有効であることを明らかにした。次いでオーストラリアでシロアリ亜科のシロアリの土食いへの進化過程を安定同位体分析、セルロースが分解酵素の活性分析、ミトコンドリアDNAを用いた系統解析から解明し、Termesグループで土食いへの進化が一回起こったことを示した。またTermesグループがアメーバと共生関係を持つことを明らかにした。(6)生態系におけるシロアリの役割シロアリの代表的なグループにおけるメタン生成のデータを実験室で集めると共に、タイの森林で野外調査を行った。シロアリが地球上でのメタン生成に果たす役割についての精度の高い答えを出しつつある。(7)「シロアリの多様化プロセス」ワークショップ世界中の関連分野の研究者を招き、シロアリ研究の現在までの成果をまとめた教科書を編集する目的で国際ワークショップを1997年3月に開催した。
著者
池田 元美 渡邉 豊 渡部 雅浩 杉本 敦子 見延 庄士郎 笹井 義一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本科学研究費補助金研究は、極域の大気と海洋のそれぞれにおいて、気候変動に重要となるプロセスを解明することに加え、大気と海洋の相互作用、地球化学の要素、さらには陸面の植生まで含めた極域全体のシステムが、如何に機能しているかを調べたものである。特にこれから深刻化する地球温暖化に伴う変化を予測する基礎情報として、海洋生物生産の低下、亜寒帯陸域における植生の劣化が避けられないこと、およびそれが炭素循環に悪影響を与える可能性を示唆した。大局的視点からのまとめを2008年と2009年の北海道大学サステイナビリティ・シンポジウムで報告した。