著者
本井 達夫 鬼頭 昭雄 緑川 貴 荒川 理 笹井 義一 陳 永利
出版者
公益社団法人 東京地学協会
雑誌
地学雑誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.1015-1028, 2008-12-25 (Released:2010-04-26)
参考文献数
43
被引用文献数
1 1

Climate model experiments are carried out to understand the relationship between large-scale topography and climate variation. Mountain uplift experiments show that sea surface temperature, surface wind fields, precipitation and sea surface salinity are strongly influenced by mountain uplift. An enhanced Asian monsoon due to mountain uplift causes stronger seasonal coastal upwelling in the Indian Ocean and freshening in the Bay of Bengal, Yellow Sea and East China Sea. Mountain uplift experiments using a higher resolution atmospheric general circulation model reveal that the spatial pattern of precipitation becomes finer as resolution increases, and that there is a sharper contrast in the salinity distribution near coastal regions. Experiments in which the Panamanian Gateway is closed, opened and re-closed suggest that reorganization of the ocean current due to closure of the Panamanian Gateway induces a cooler and drier climate with a permanent halocline and sea ice in the subarctic Pacific.
著者
吉田 聡 佐々木 英治 笹井 義一 細田 滋毅
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

北西太平洋は冬季に爆弾低気圧が頻繁に発達する海域の中で最も深い海洋である。渦解像準全球海洋大循環モデルOFESによる34年間の過去再現実験データを用いたコンポジット解析によって、爆弾低気圧が急発達する際、海洋混合層内では強い発散が起こり、2000m深に達する上昇流が励起されることが見出された。また、爆弾低気圧活動の年々変動が海洋深層の鉛直流の振幅と日スケールの水温変動に影響することが示された。しかし、通常の海洋観測網では爆弾低気圧に対する海洋応答を捉えることはできない。深い冬季混合層のため、衛星観測による海面水温では爆弾低気圧による変化は見えない。また、10日毎のアルゴフロート観測は1日程度の爆弾低気圧の急激な観測をするには長すぎる。そこで、爆弾低気圧に対する海洋応答を観測するため、北西太平洋でのアルゴフロートを用いた高頻度観測を2015/2016と2016/2017の2冬季(11月~3月)に実施した。今回用いたアルゴフロートは観測の時間間隔と観測深度を衛星通信によってリアルタイムに変更できる。気象庁の週間アンサンブル予報を元に、観測海域で爆弾低気圧が高確率で予測された場合には6時間毎、650m深までの観測を実施し、それ以外は1日毎、2000m深の観測を実施した。2016年12月までに爆弾低気圧活動が活発な海域の859プロファイルを観測した。参考文献: Kuwano-Yoshida, A., H. Sasaki, and Y. Sasai, Geophys. Res. Lett, 44, 320-329 (2017).
著者
本井 達夫 鬼頭 昭雄 緑川 貴 荒川 理 笹井 義一 陳 永利
出版者
Tokyo Geographical Society
雑誌
地學雜誌 (ISSN:0022135X)
巻号頁・発行日
vol.117, no.6, pp.1015-1028, 2008-12-25
被引用文献数
1 1 1

Climate model experiments are carried out to understand the relationship between large-scale topography and climate variation. Mountain uplift experiments show that sea surface temperature, surface wind fields, precipitation and sea surface salinity are strongly influenced by mountain uplift. An enhanced Asian monsoon due to mountain uplift causes stronger seasonal coastal upwelling in the Indian Ocean and freshening in the Bay of Bengal, Yellow Sea and East China Sea. Mountain uplift experiments using a higher resolution atmospheric general circulation model reveal that the spatial pattern of precipitation becomes finer as resolution increases, and that there is a sharper contrast in the salinity distribution near coastal regions. Experiments in which the Panamanian Gateway is closed, opened and re-closed suggest that reorganization of the ocean current due to closure of the Panamanian Gateway induces a cooler and drier climate with a permanent halocline and sea ice in the subarctic Pacific.
著者
千葉 早苗 本多 牧生 笹井 義一 笹岡 晃征
出版者
独立行政法人海洋研究開発機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

(長期生態系変動)西部北太平洋における過去数十年の海洋環境と生態系変動の関係についてレビューした結果を論文にまとめ出版した(Chiba et al.2008&2009)。特に十年規模周期の水温偏差に応じた親潮域における生物生産タイミングの経年的変化や(温暖期:早い,寒冷期:遅い),温暖性種の分布の南北移動について報告した。(衛星データによる生物季節的変化の検知)1998-2007年の衛星海色データを用いて北太平洋の基礎生産の季節変動パターンを明らかにした。その結果、水温の上昇が基礎生産に正に働く海域(ベーリング海・親潮混合域)と負に働く海域(アラスカ湾・黒潮海域等)が見られた。また同じく海色衛星データを用いて、西部北太平洋亜寒帯域における植物プランクトンブルームのタイミングの経年変動を調べた結果,十年間でブルームのピークが約一ヶ月遅くなっていることが分った。海洋研究開発機構が同海域で実施している時系列観測の結果では,1998-2007年の間に水深5000mにおけるオパールのフラックスの割合が減少傾向に有り,表層のプランクトン群集組成の変化が示唆されている。本研究の結果から,経年的な環境変化に応じた表層生態系の生物季節的変化が,主要プランクトン種の変遷を招き,結果として海域の生物ポンプ機能に影響を与えていることが推測された。(動物プランクトンによる炭素の鉛直輸送)2006-2008年に調査船「みらい」により採集した表層の動物プランクトンの群集/サイズ組成から摂餌率/排泄率を求め,基礎生産量および亜表層への炭素の鉛直輸送効率との関係について調べた。しかし夏季の高生物生産季においては,それらの間に明確な関係は見られなかった。今後は低生産季について同様の見積をし,その季節変動について明らかにしていく。
著者
池田 元美 渡邉 豊 渡部 雅浩 杉本 敦子 見延 庄士郎 笹井 義一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2007

本科学研究費補助金研究は、極域の大気と海洋のそれぞれにおいて、気候変動に重要となるプロセスを解明することに加え、大気と海洋の相互作用、地球化学の要素、さらには陸面の植生まで含めた極域全体のシステムが、如何に機能しているかを調べたものである。特にこれから深刻化する地球温暖化に伴う変化を予測する基礎情報として、海洋生物生産の低下、亜寒帯陸域における植生の劣化が避けられないこと、およびそれが炭素循環に悪影響を与える可能性を示唆した。大局的視点からのまとめを2008年と2009年の北海道大学サステイナビリティ・シンポジウムで報告した。