著者
杉浦 隆之 山下 純
出版者
帝京大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)は研究代表者らが1995年に発見した新しい脂質メディエーターである。今回の研究により以下の点を明らかにした。1.2-AGの生成メカニズムの解明。TPAで惹起した急性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の局所では、ホスファチジルイノシトールからだけではなく、ホスファチジルコリンなどからも2-AGが産生されることを明らかにした。2.白血球系の細胞の機能に及ぼす2-AGの影響。マクロファージなどの白血球系の細胞の接着が、2-AGにより増強されることを初めて明らかにした。2-AGは白血球の接着(組織や血管壁への接着)を亢進させることにより、炎症を増大させている可能性がある。3.炎症・免疫系における2-AGの生理的意義の解明。2-AGが急性炎症や慢性のアレルギー性炎症(気管支喘息モデル、アレルギー性皮膚炎モデル)に関与しているかどうかを詳しく調べた。その結果、これらの炎症局所では2-AGの著しい蓄積がみられること、カンナビノイドCB2受容体のアンタゴニストを塗布することにより、炎症反応(腫脹および白血球浸潤)が強く抑えられることなどを明らかにした。これらの結果は、カンナビノイドCB2受容体とその内在性リガンドである2-AGが、急性炎症やアレルギー性炎症の進展に深く関与していることを強く示唆するものである。このほか、2-AGを塗布することによって、炎症反応が惹起されること、2-AGが好酸球を効率よく遊走させることなども明らかにした。4.血管系に及ぼす2-AG作用。2-AGがCB2受容体を発現している細胞に作用するとNOの産生が増大すること、生成したNOによって血管の拡張や透過性の亢進が起きることを明らかにした。マウスの耳などに2-AGを塗布したときに観察される発赤や浮腫は主にNOによるものである可能性がある。