著者
森田 一三 森岡 久尚 阿部 義和 野村 岳嗣 稲川 祐成 近藤 由香 亀山 千里 近藤 香苗 小林 尚司
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.167-179, 2021-03-15 (Released:2021-03-30)
参考文献数
30

目的 高齢者における多剤併用は唾液の流量低下や口腔乾燥症を引き起こす可能性を高める。口腔の乾燥は口腔機能の低下をもたらすが,多剤併用と自覚的な口腔機能低下や客観的な口腔機能低下の関連について報告は見られない。そこで,本研究は投薬薬剤成分数と自覚的および客観的口腔機能低下の関連を明らかにすることを目的として行った。方法 2019年1月から2月に歯科健康診断のために中部地方の歯科医院を受診した,75歳以上の在宅高齢者215人を対象とした。自覚的口腔機能の評価として3項目の問診,客観的口腔機能として4項目の実測調査を行った。また,現在治療中の疾患および服薬している薬剤の情報を得た。自覚的口腔機能の3項目のいずれかに低下がある者を自覚的口腔機能の低下が認められるとした。客観的口腔機能の低下は2つのタイプについて検討した。1つは客観的口腔機能の4項目すべての項目に低下がある,もう1つは客観的口腔機能の4項目のうち2つの項目に低下があるとした。性別,年齢階級および治療中の疾患を調整した,自覚的および客観的口腔機能低下と投薬成分数の関連についてロジスティック回帰分析を用いて分析した。結果 8種類以上の成分を投薬されている者は7種類以下の者に比べ,自覚的口腔機能低下がみられた(オッズ比:95%信頼区間,2.3:1.0-5.1,P<0.05)。8種類以上の成分を投薬されている群は7種類以下の群に比べ4項目すべての客観的口腔機能に低下が見られた(4.4:1.5-12.6,P<0.01)。4項目のうち2項目以上の客観的口腔機能の低下は10種類以上の成分の投薬と関連していた(4.3:1.2-16.2,P<0.05)。 さらに,8種類以上の投薬成分数は自覚的口腔機能または客観的口腔機能4項目すべての低下をもたらした(8.1:2.1-30.8,P<0.01)。自覚的口腔機能または客観的口腔機能4項目のうち2項目以上の低下と10種類以上の成分を投薬されていることが関連していた(4.9:1.6-15.6,P<0.01)。結論 高齢者において薬剤成分数で8種類以上の投薬は,自覚的または客観的口腔の機能低下が見られることと関連した。
著者
近藤 香里 酒井 幸弘 内藤 尚久 玉置 明野 市川 一夫 磯谷 尚輝 小島 隆司 中村 友昭 城山 敬康
出版者
JAPANESE ASSOCIATION OF CERTIFIED ORTHOPTISTS
雑誌
Japanese orthoptic journal (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.181-190, 2010-12-29

<B>【目的】</B>回折型多焦点IOL挿入術における50歳代から80歳代までの年代別術後成績の検討。<BR><B>【対象と方法】</B>対象は平成19年1月から平成21年5月までに、両眼に回折型多焦点IOL(AMO社製ZM900 16例32眼、Alcon社製SA60D3 5例10眼)を挿入した21例42眼。年代別症例数は、50歳代10例20眼、60歳代5例10眼、70歳代3例6眼、80歳代3例6眼。遠見矯正視力、遠見矯正下近見視力の術後経過、コントラスト感度、アンケート結果を年代別に比較検討した。<BR><B>【結果】</B>50・60歳代は、術後早期より良好な視力が得られたが、70・80歳代は不安定で、80歳代では、最高視力が得られるまでに3ヶ月程度を要した。術後3ヶ月の視力・コントラスト感度は80歳代がやや劣るものの、遠見裸眼視力 0.96、遠見矯正視力 1.24、遠見矯正下近見視力0.91と良好な結果であった。70・80歳代の近用眼鏡使用率は0%であった。80歳代のハロー・グレアの訴えはなく、高い術後満足度が得られた。<BR><B>【結論】</B>70・80歳代における回折型多焦点IOLは、視力の安定には時間を要するものの、日常生活に関するアンケートでは高い満足度が得られた。症例数が少ないため、さらに症例を重ね検討する必要があるが、高齢者においても十分なインフォームド・コンセントを行った上で、回折型多焦点IOLは選択肢になりうる。