著者
真栄田 裕行 杉田 早知子 山城 拓也 崎浜 教之 鈴木 幹男
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.53-58, 2019

副咽頭間隙原発の腺様囊胞癌の報告は少なく,本邦の過去の報告は 8例のみであった。今回われわれは副咽頭間隙発生の早期腺様囊胞癌を経験した。患者は63歳の女性。左副咽頭間隙に発生した腫瘤は画像所見からは多形腺腫も考慮されたが,形状や耳下腺との非連続性から神経鞘腫と診断した。経頸部アプローチにより腫瘤が摘出され,術後に腺様囊胞癌と判明した。副咽頭間隙に腺様囊胞癌が生ずる認識があれば,術前に細胞診やFDG-PET検査を施行して正確な診断がついた可能性もある。また治療に関しても腫瘍を明視下に置いた種々の術式により,完全切除も可能であったと思われた。再発時には拡大切除および術後照射が現実的な治療方針ではないかと考える。
著者
饒波 正史 喜友名 朝則 喜瀬 乗基 杉田 早知子 近藤 俊輔 又吉 宣 真栄田 裕行 我那覇 章 古波蔵 健太郎 鈴木 幹男
出版者
日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会
雑誌
耳鼻咽喉科免疫アレルギー
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.1-6, 2018

<p>IgA腎症に対し口蓋扁桃摘出術とステロイドパルス療法を併用し6年以上の長期経過観察を実施しえた44症例を対象に,長期腎機能予後と遺残扁桃・ワルダイエル輪の代償性肥大・炎症所見について調査した。低・中リスク群では27例中26例で腎機能が保持されていた。一方,高・超高リスク群では,腎機能保持は8例,腎機能低下は8例(2例の末期腎不全・透析導入)となっていた。腎機能維持のためには腎機能が保たれている早期に口蓋扁桃摘出術+ステロイドパルス治療を行うことが重要と推定された。口蓋扁桃遺残は9%であった。アデノイド肥大は軽度が多いが,舌扁桃は19%に肥大を認めた。しかし,口蓋扁桃遺残,アデノイド肥大,舌扁桃肥大と腎機能予後には明らかな関係を認めなかった。炎症所見はアデノイドでは発赤,びらん,膿汁付着を陽性所見とし,舌扁桃では膿栓があるものを陽性所見とした。鼻咽腔ファイバー検査を実施できた42例中,23例は両方に炎症所見なし,5例で上咽頭のみ炎症所見あり,7例で舌扁桃のみ炎症所見あり,4例で上咽頭及び舌扁桃に炎症所見ありであった。透析に至った2例中1例では上咽頭に炎症所見を認めた。上咽頭,舌扁桃の炎症所見の有無と腎機能予後に明らかな関連を認めなかった。IgA腎症における口蓋扁桃摘出術後の長期予後と,上咽頭炎の関係を明らかにするためにさらなる調査が必要である。</p>