著者
前田 真治 杉田 淳 齋藤 雅人 萩原 摩里 池本 毅
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.179-186, 2006 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7

日本酒濃縮物 (日本酒濃縮入浴剤) 添加温水が人体にどのような影響をもたらし、有用な作用があるかをみるために、健常成人を対象に日本酒濃縮物添加温水、またその特異成分であるα-エチルグルコシド添加温水、水道水温水とを比較検討した。その結果、血圧・脈拍は3者間で差がなく心肺への負担は水道水温水と同じであった。前額部の表面皮膚温で日本酒濃縮物添加温水が他2者に比して出浴後緩徐な低下であり、保温効果が示唆された。深部体温計の経過から日本酒濃縮物添加温水が、熱吸収効率の高い要因としてα-エチルグルコシドの関与が考えられた。皮膚血流量増加も加味した結果から、日本酒濃縮物添加温水は、温水中の熱が身体内に入りやすく、かつ出にくい環境を作り出すと考えられる。その要素として、α-エチルグルコシド以外の溶存物質が関与することで、より強い熱運搬作用と保温作用をもつと結論した。皮膚水分量の測定から、温水中に入っている部分では、出浴後早期の潤いはあるが、早期に以前の状態に戻ることがわかった。温水中に入っていない顔面は、皮膚の角層水分量が日本酒濃縮物添加温水の方が良好であり、保湿量が増加していることが認められた。
著者
中山 大輔 三浦 利子 菊池 みずほ 杉田 淳平 小林 栄子 西垣 良夫 井出 久治 杉山 章子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.393-401, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1

戦後,急速に進んだ人口の高齢化によって,日本は世界有数の長寿国となった。古来,人々が希求してきた「長生き」の実現は喜ぶべきことであるはずだ。しかし,現在の「長寿」社会には,喜びよりも不安が目立つ。なかでも健康への不安を訴える声が少なくない。 日本人の平均寿命が世界でも類のないスピードで延びた要因としては,衛生・栄養状態の改善や生活環境の整備など公衆衛生の向上とともに,医療技術の高度化による延命技術の発展が大きい。治療技術の進歩は,数々の疾患を克服する一方で,死を免れたものの後遺症に悩む人を生み出し,年々増えている高齢者の中には長期にわたる療養生活を余儀なくされている人が多い。 今,人々は単なる「長寿」ではなく,健やかに長生きすることすなわち「健康長寿」を望んでいる。長野県は,平均寿命の高さとともに,医療機関の在院日数の低さ,在宅療養環境の整備などの面で近年良好なパフォーマンスを示し,「健康長寿」の先進地域として注目されている。こうした評価が生み出される背景には,地域で長年実践されてきた健康増進活動の積み重ねがある。 本稿では,その1例として,県東部に位置する人口5,000人弱の八千穂村 (2005年3月20日に佐久町と合併して佐久穂町となったが,本稿では旧八千穂村を八千穂村と記す) の実践を取り上げる。村が,全国でも先駆的な取り組みとして1959 (昭和34) 年に開始した「全村健康管理」は,40年以上経過した現在,住民による自主的な活動を生み出しながら定着している。 今回は,健康管理事業の展開の中で誕生したさまざまな住民による活動のうち,栄養改善に取り組んだグループに着目し,その形成・発展過程の調査・分析を通して,住民主体の活動を可能にする要件について考察した。