7 0 0 0 OA 半側空間無視

著者
前田 真治
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.214-223, 2008-06-30 (Released:2009-07-01)
参考文献数
36
被引用文献数
1

半側空間無視は,右半球損傷に伴いやすく,損傷大脳半球と反対側の刺激を無視する症状である。臨床症状の特徴は,顔や視線が健側を向いている,患側にいる人に気づかない,患側の食事の食べ残しで気づくことが多い。また読字・書字障害や談話障害などもみられる。半側空間無視の検査にはBehavioural Inattention Test やCatherine Bergego Scale などがある。発現機序には,注意障害説,方向性運動低下説,表象障害説などがある。また左視野の刺激もプライミング刺激が認められ,ある程度まで脳内で処理されている。責任病巣は,中大脳動脈,後大脳動脈,前大脳動脈領域,視床などがある。リハビリテーションは,左側へ注意をうながす訓練や代償を用いた訓練などが報告されている。その要点は,左側にとらわれずに感情的交流を工夫すること,刺激方法に工夫を入れること,意欲を高めることなどである。これらの注意点を理解した上で,リハビリテーションチームで適切に対応すべきである。
著者
前田 真治 山北 秀香 佐々木 麗 田中 裕美子 後出 秀聡 木村 広 井上 市郎
出版者
The Japanese Society of Balneology, Climatology and Physical Medicine
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.61, no.4, pp.187-194, 1998-08-01
参考文献数
13
被引用文献数
1

慢性関節リウマチ (RA) 患者を対象に組織循環改善作用と新陳代謝亢進による疼痛の軽減を目的に90%以上になる高濃度炭酸ガス浴装置を用い効果を調べた。<br>気体としての炭酸ガス浴は更衣動作の障害されているRA患者にとって, 衣服のまま入浴できる画期的な入浴法である。血圧・脈拍の大きな変化なく, 循環機能の影響の少ない入浴法と考えられた。表面皮膚温も前値に比べ入浴後期に1℃以上の上昇がみられ, 局所の血液循環の改善が示唆され, 老廃物・疼痛物質などの除去・新陳代謝改善の効果が期待できると考えられた。ADL得点 (平均67→75/96), Visual Analogue Pain Scale (5.3→2.7/10), Face Scale (9.4→5.4/20), AIMS変法 (身体的要素28.5→30.1, 社会的25.2→27.3, 精神的26.2→29.9/36) と入浴前に比べ有意に改善しており, 高濃度炭酸ガス浴がRA患者のADL・QOLの改善に効果があると思われた。
著者
前田 真治 齋藤 雅人 萩原 摩里
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.103-106, 2007 (Released:2010-04-30)
参考文献数
6

The Salt Lake mineral was dissolved in the warm water to develop bath salt that contained the Salt Lake mineral with the element of seawater, and we made comparative study of the effects with the tap warm water for five healthy adults.As a result, the warm water with the Salt Lake mineral increased in the changes of the surface skin temperature in the forehead, the deep thermometer in front of chest and the tissue blood flow of thigh skin compared to the tap warm water.Therefore, the warm water with the Salt Lake mineral was suspected that the thermo effects was good compared to the tap warm water.It seemed that it was possible to use it safely as bath salt, for it did not change the blood pressure, the heart rate, the oxygen uptake and carbon dioxide exhaust. Also, the abnormality of the skin was not additionally recognized.
著者
清水 忍 池田 由美 前田 真治 引間 香織
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2003, pp.B0687, 2004

【目的】<BR>脳卒中片麻痺患者の麻痺側による視覚的注意機能の差異について,視覚刺激に対する単純反応時間(RT)を用いて検討した.<BR>【方法】<BR>北里大学東病院に外来通院中で一側上下肢に麻痺を呈する脳血管障害患者のうち,知的障害,重度失語,半側無視を伴わない,右片麻痺患者10名(67.0±13.3歳)(RH群),左片麻痺患者10名(64.8±9.5歳)(LH群),計20名を対象とした.さらに,健常高齢者20名(75.4±5.2歳)を比較対照群とした.RT測定にはパーソナルコンピュータ(DELL社製Dimension XPS R450)と「反応時間測定ソフトウェアVer.1」(都立保健科学大学作成)を用いた.被検者は座位姿勢とし,顔面から前方30cm離れた位置にCRT画面を置き,顎台にて頭部を固定した.画面上に提示した直径 3mmの白円を反応刺激,画面中央に提示した白色十字を注視点とした.反応刺激の提示位置は注視点を中心とした半径11cm(視角約20度)の円の円周上に,等間隔で8箇所(円の上縁と中心を結んだ線を0°として時計回りに45°毎)とした.各反応刺激は1箇所ずつランダムな順に,各5回ずつ,計40回提示した.各試行の始めに注視点を提示し,500ms後に反応刺激を提示した.刺激の提示時間は被験者のキー押し反応があるまでとし,最大2s間に設定した.各試行間隔は2.0,2.2,2.4,2.6,2.8,3.0sの6種類とし,無作為に設定した.被験者には注視点を注視したまま,刺激が提示されたらできるだけ早くスペースキーを押すよう指示し,刺激提示からキーが押されるまでの時間をRTとして記録した.この際,RH群は左示指,LH群は右示指を用い,健常者のうち10名は左示指(CL群),残り10名は右示指(CR群)を用いた.統計学的解析は,利き手の影響を避けるために,RH群とCL群(左手使用),LH群とCR群(右手使用)間で行い,麻痺(有,無)と提示位置(0,45,90,135,180,225, 270,315°)を要因とした二元配置分散分析を行った.<BR>【結果および考察】<BR>LH群とCR群では提示位置による違いは認められなかったが,麻痺の有無による差異が認められ,LH群のRTはCR群よりも有意に遅かった.一方,RH群とCL群間では,麻痺の有無による差異は認められなかったが,刺激提示位置による違いが認められ,0°のRTよりも225,270°のRTの方が有意に速かった.これは,これまで,我々が報告した健常者におけるRTの結果と同じ傾向を示すものであった.左片麻痺患者は健常者よりも視野全体にわたってRTが遅いのに対し,右片麻痺患者のRTは健常者と差がなかったことから,脳卒中片麻痺患者の視覚的注意機能は,右片麻痺患者よりも左片麻痺患者で視野全体に対する注意機能が低下している可能性があることが示唆された.
著者
清水 忍 沼田 憲治 前田 真治
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.187-191, 2001-05-31 (Released:2018-09-25)
参考文献数
14

手指の系列運動課題における学習転移を指標として,運動プログラミングの左右半球優位性について検討した。対象は右利き健常大学生34名とし,ランダムに3群(右手練習群,左手練習群,コントロール群)に分けた。運動課題は一側手で出来るだけ速く第II-IV-III-V指の順にボタンスイッチを押させる系列運動課題とした。右手練習群は右手のみ,左手練習群は左手のみで30分間の練習を行った。コントロール群はこの間一切の練習を行わなかった。この練習前後で,各被検者とも両側手について本課題を遂行するのに要する時間(遂行時間)を測定し,3群間で比較した。練習前の遂行時間の成績には3群間で差はなかった。練習後,右手の遂行時間は左右両側手の練習効果を受けて短縮し,左手は左手練習の練習効果のみを受けた。このことから,左半球は両側手の運動学習に関与するのに対し,右半球は主に左手の運動学習に関与すると考えられ,運動のプログラミングにおいて左半球が優位である可能性が示唆された。
著者
前田 真治 林 久恵 横家 正樹
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.156-164, 2003 (Released:2010-04-30)
参考文献数
8

ASOによる潰瘍は予後不良で切断などに至る場合が多い。そこで、血管拡張作用を強力に持つ高濃度人工炭酸温水の効果について、温水浴時の足背部の末梢組織血流 (pBF) および経皮酸素分圧 (TCPO2) を足浴10分前より足浴終了後30分まで、1分間隔で連続測定した。対象は、潰瘍が進行期あるいは安定期にあり血行再建術が不能であった Fontaine II~IV度の49例 (平均66歳、男:女=20:29) である。この虚血肢に週3回以上人工炭酸温水足浴 (38℃、濃度1000ppm) を行った経過を写真評価した。1回の足浴時間は10分間とした。その結果、治癒傾向の乏しかった潰瘍の多くは短期間に縮小ないしは治癒した。pBFは前1.1±0.5ml/min/100gで、1分後より上昇し始め10分後には4.4±1.8まで上昇したが (p<.01)、終了直後に前値に戻った。一方、TCPO2は前40.7±18.3mmHgより10分後50.7±18.2と上昇し (p<.05)、終了20分後も50.3±20.8と前値を上同っていた (p<.01)。また、Fontaine 各群別でもpBF、TCPO2とも有意に上昇していた。以上より、潰瘍を合併した虚血肢には血行改善が必要であるが、血行再建術や運動療法が行えないような症例に対しても、38℃・1000ppmの高濃度人工炭酸温水は効果があり、良好な治療成績を期待することができることが示唆される。その機序は、血管拡張作用に伴う局所組織循環血液量増加と組織酸素分圧亢進など有意な末梢循環代謝改善作用によると思われる。この効果の Fontaine 分類別の比較からも、重症のIV群でも改善は少なくなるものの改善傾向が認められ、Fontaine 分類上の重症度に関らず有用と考えられる。人工炭酸温水足浴は、下腿動脈狭窄を有するASO症例に対する治療手段の一つとして期待されるものであり、今後の発展が望まれる。
著者
山崎 岳之 鈴木 珠実 上出 直人 石井 麻美子 南部 路治 清水 忍 前田 真治
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.32 Suppl. No.2 (第40回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0493, 2005 (Released:2005-04-27)

【目的】姿勢保持課題には、体幹を安定させるための体幹筋力と体重心の動揺を最小限にする静的バランス能力、さらに体重心の変位を適切に修正する立ち直り反応が必要である。しかし、姿勢保持課題に対するこれらの因子が、それぞれ独立した因子なのか関連した因子なのかは明確ではない。本研究では、体幹筋力、静的バランス、立ち直り反応の各因子間の関連性を検討することを目的とした。【対象】整形外科的疾患や神経学的疾患、ならびに7日間以上継続した下肢痛と腰痛を有さない健常女性30名(平均年齢21.3歳)を対象とした。【方法】体幹筋力の測定には、ハンドヘルドダイナモメーター(Hoggan Health, MICRO FET2)を用い、徒手筋力テストの肢位で腹直筋と脊柱起立筋の筋力を3回ずつ計測した。静的バランス能力の測定には、重心動揺計(Mアニマ,G5500)を用い、前方1m先の指標を注視させながら、軸足での片脚立位を60秒間を3試行し、総軌跡長と矩形動揺面積を算出した。さらに、立ち直り反応の測定には、下記の外乱刺激発生装置と1軸(前後方向)加速度計(日本光電,TA-513G)を用いた。外乱刺激発生装置は、台車上に椅子を固定したもので、台車の後方にはロープで10kgの重錘を滑車を介して吊した。被験者を固定した椅子の上に座らせ、重錘を高さ170cmより鉛直方向へ不意に落下させることで、被験者は後方から前に瞬時に押されるような外乱を発生させることができる。外乱刺激に対する立ち直り反応を頭部に取りつけた加速度計で3試行計測し、外乱刺激発生から500ms間の各方向への頭部加速度ピーク値とピーク値までの時間を算出した。なお、被験者の体重によって、外乱のエネルギー量は変化するため、台車上に重錘を載せて負荷が一定になるよう調整をした。また、外乱刺激の同定のために台車の軌道上の床面に荷重センサーを設置した。統計処理には、計測した3試行のデータを平均化し、体幹筋力、静的姿勢保持能力、立ち直り反応の関連性を被験者の体重を制御変数とする偏相関を用いて解析した。また、体幹筋力の測定値の再現性は信頼係数アルファを用いて検討した。なお有意水準は5%とした。【結果】体幹筋力の測定値には再現性が認められた(α=0.9436)。有意な相関が認められたものは体幹屈曲筋力と総軌跡長(r=-0.56)、更に体幹伸展筋力と矩形動揺面積(r=-0.38)、外乱刺激後の前方への頭部加速度ピーク値(r=-0.48)および後方への頭部加速度ピーク値(r=0.43)に有意な相関が認められた。【考察・結語】体幹筋力が弱い程、静的バランス能力は低下する傾向にあり、また立ち直り反応も低下する傾向にあると考えられた。一方、静的バランスと立ち直り反応には相関は認められなかった。従って、体幹筋力が姿勢保持課題に大きく寄与している可能性が示唆された。
著者
前田 真治 岡崎 健
出版者
The Japanese Association of Rehabilitation Medicine
雑誌
リハビリテーション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.231-236, 1982-07-18 (Released:2009-10-28)
参考文献数
12

従来,慢性関節リウマチ(RA)患者のsystemic index (Lansburyの方法)のgrip strengthを測定する際に成人用水銀血圧計の圧迫帯(cuff)のゴム袋を正確に2回折りたたんだ大きさ8.5×14.0cmのカフを用いて,あらかじめ20mmHgになるように脹らませたものを力一杯握りしめ左右の手で3回試み,その最高値平均をもって握力記載値としていたが,日常外来診察時のような場合は,やや小さめの6.5×14.0cmのカフのような日本人の小さな手に合った大きさを用い,測定間隔を30秒以上あけ,リウマチによる変化を認める手について左右を2回ずつ測定し,その左右各々の最高値,あるいは全体の最高値を測定値とするのが良いと思われた.
著者
前田 真治 長澤 弘 平賀 よしみ 頼住 孝二 古橋 紀久
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテ-ション医学 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.p191-200, 1993-03
被引用文献数
10

脳内出血・脳梗塞の発症当日の治療として従来から安静臥床がなされているが,安静臥床による筋力低下・起立性低血圧などは,リハビリテ-ションを遅らせる要因となる.そこで,発症当日から座位・立位・歩行訓練などを試みた結果,体幹機能は対照群と比較して有意に維持でき,その後の機能予後も比較的良好なことを認めた.一方,自覚症状が訴えられない患者やII桁以上の意識障害で従命ができない患者は,安全管理の面から訓練不能であった.また,発症後数日間以上安静臥床させた群との比較でも再発・進行率には有意差はなかった.さらに最終到達運動機能については,不可逆的な廃用症候群が生じる前に訓練が始まれば差はないと考えられた.したがって,自覚症状を訴えることができ,II桁以上の意識障害と重篤な他の合併症がない限り,健側と体幹筋力維持,廃用症候群防止を目的に脳内出血・脳梗塞は発症当日から可及的立位・歩行訓練を開始することは可能と思われた.
著者
前田 真治 杉田 淳 齋藤 雅人 萩原 摩里 池本 毅
出版者
一般社団法人 日本温泉気候物理医学会
雑誌
日本温泉気候物理医学会雑誌 (ISSN:00290343)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.179-186, 2006 (Released:2010-04-30)
参考文献数
7

日本酒濃縮物 (日本酒濃縮入浴剤) 添加温水が人体にどのような影響をもたらし、有用な作用があるかをみるために、健常成人を対象に日本酒濃縮物添加温水、またその特異成分であるα-エチルグルコシド添加温水、水道水温水とを比較検討した。その結果、血圧・脈拍は3者間で差がなく心肺への負担は水道水温水と同じであった。前額部の表面皮膚温で日本酒濃縮物添加温水が他2者に比して出浴後緩徐な低下であり、保温効果が示唆された。深部体温計の経過から日本酒濃縮物添加温水が、熱吸収効率の高い要因としてα-エチルグルコシドの関与が考えられた。皮膚血流量増加も加味した結果から、日本酒濃縮物添加温水は、温水中の熱が身体内に入りやすく、かつ出にくい環境を作り出すと考えられる。その要素として、α-エチルグルコシド以外の溶存物質が関与することで、より強い熱運搬作用と保温作用をもつと結論した。皮膚水分量の測定から、温水中に入っている部分では、出浴後早期の潤いはあるが、早期に以前の状態に戻ることがわかった。温水中に入っていない顔面は、皮膚の角層水分量が日本酒濃縮物添加温水の方が良好であり、保湿量が増加していることが認められた。
著者
前田 真治 岡崎 健
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.231-236, 1982-07-18
被引用文献数
1

従来, 慢性関節リウマチ(RA)患者のsystemic index(Lansburyの方法)のgrip strengthを測定する際に成人用水銀血圧計の圧迫帯(cuff)のゴム袋を正確に2回折りたたんだ大きさ8.5×14.0cmのカフを用いて, あらかじめ20mmHgになるように脹らませたものを力一杯握りしめ左右の手で3回試み, その最高値平均をもって握力記載値としていたが, 日常外来診察時のような場合は, やや小さめの6.5×14.0cmのカフのような日本人の小さな手に合った大きさを用い, 測定間隔を30秒以上あけ, リウマチによる変化を認める手について左右を2回ずつ測定し, その左右各々の最高値, あるいは全体の最高値を測定値とするのが良いと思われた.
著者
上月 正博 椿原 彰夫 前田 真治 山口 昌夫 高岡 徹 永田 雅章 渡邉 修 田中 尚文 渡部 一郎
出版者
社団法人日本リハビリテーション医学会
雑誌
リハビリテーション医学 : 日本リハビリテーション医学会誌 (ISSN:0034351X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.12, pp.808-813, 2006-12-18

日本リハビリテーション医学会認定研修施設における心理関係業務の内容・臨床心理業務担当者の実態と望まれる資質に関するアンケート結果の報告と,それに基づく提言を行った.リハビリテーション(以下,リハ)診療において,臨床心理業務担当者のニーズは極めて高いことが確認された.対応疾患も脳血管障害,外傷性脳損傷,精神発達遅滞,自閉症のみならず,慢性疼痛,循環器・呼吸器疾患,骨・関節疾患,悪性腫瘍などにも及んでおり,臨床心理業務担当者がリハ関連医学(リハ概論,リハ医学など)をカリキュラムに組み込むことが必要であると考えられた.臨床心理業務担当者養成において診療現場のニーズにあったカリキュラムの導入と質の向上が,リハ診療の発展・質の向上のみならず,臨床心理業務担当者の国家資格の確立や心理関係業務に対する診療報酬のアップにもつながるものと期待される.
著者
上出 直人 柴 喜崇 前田 真治 荻野 美恵子
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.130-134, 2005-06-20
被引用文献数
1

進行性核上性麻痺患者に対し, 部分体重免荷トレッドミルトレーニングを含んだ短期集中練習を施行し, 歩行能力への影響を検討した。症例は69歳男性。介入開始時の歩行能力は, 屋内歩行最小介助レベルであった(FIM移動下位項目:4)。介入方法は, 体重免荷装置を用いて, 体重の30%以内を免荷した状態で, トレッドミル上での歩行トレーニングを3〜5分間施行した。トレッドミルの速度は, 症例が耐えうる最大の速度とし, トレーニング回数毎に漸増させていった。全8回のトレーニングを含んだ短期集中練習実施後, 症例の歩行速度, 歩幅は改善を示した。しかし後方易転倒性は変化せず, ADL上の移動能力や転倒頻度については改善しなかった。部分体重免荷トレッドミルトレーニングは, 歩行時の両下肢の協調的なステッピング運動を短期間で向上させる効果を有するが, バランス能力には効果が小さいことが示唆された。ADL上での移動能力の向上につなげるためにはバランストレーニングとの併用が必要であることが示唆された。
著者
上出 直人 山崎 岳之 宮城 しほ 前田 真治 中澤 俊之
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学 = The Journal of Japanese Physical Therapy Association (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.7-13, 2006-02-20
被引用文献数
2

非外傷性不全脊髄損傷患者に対する体重免荷トレッドミルトレーニングの,歩行能力に対する影響を検討した。症例は,観血的治療を施行された不全四肢麻痺患者1例,不全対麻痺患者2例の計3症例で,いずれも術後7日目より通常の理学療法介入を実施した。その後,下肢筋力や歩行能力の変化が,通常理学療法介入開始時と比べて小さくなってきた時点で,体重免荷トレッドミルトレーニングによる介入へと変更した。下肢筋力や歩行能力の変化を検討するため,American Spinal Injury Association Impairment Scale (ASIA), Lower Limb Motor Score (LLMS), Functional Independence Measure (FIM)(移動項目のみ),歩行速度,平均歩幅,歩行率を評価した。その結果,体重免荷トレッドミルトレーニング介入期間内では,ASIAおよびLLMSは変化量が小さかったが,FIMは1(全介助)から5(監視)または6(修正自立)まで改善,さらに歩行速度,平均歩幅,歩行率も向上した。故に,非外傷性の症例に対する体重免荷トレッドミルトレーニングは,麻痺や下肢筋力への影響は小さいが,歩行能力への影響が大きいトレーニングであることが示唆された。