著者
中山 大輔
巻号頁・発行日
(Released:2018-04-13)

本論文では、精度保証付き数値計算におけるaffine演算を拡張した新しい算法の提案・実装を行い、その算法が有用な場面について論じる。 精度保証付き数値計算で用いられる区間演算の算法やライブラリは、一般に区間幅が狭いことを前提に設計されており、入力の区間幅が大きいと意味のある計算結果を返さない場合がある。そのため、入力の区間幅がある程度の大きさを持つ場合は何らかの工夫をする必要があり、簡単なものでは入力の区間を分割するということが考えられる。なお、多倍長演算を用いることも考えられるが、これは丸め誤差を軽減させるためのものなので、「入力の区間幅が大きい場合でも意味のある出力を得られるようにする」という目的には適していない。 近年、高次元の問題への精度保証付き数値計算の応用が行われているが、入力区間の分割は入力変数の個数に関して指数関数的な計算時間の増加をもたらすので、高次元の問題ではできる限り入力区間の分割を行わずに計算ができる必要がある。区間の間の相関を考慮することで計算時の区間拡大を抑える演算でaffine演算というものがあるが、これは非線形な演算を一次式で近似するため、割り算などの演算に対して精度が出にくい場合がある。そこで、affine演算を拡張し、非線形な演算を二次式で近似することを考える。 affine演算を拡張したものを「拡張affine演算」と呼ぶことにし、拡張affine演算における四則演算を実装したライブラリを作成した。数値実験により、出力の精度が一定以下になることが求められていて入力を分割しなければならないような状況では、affine演算よりも拡張affine演算の方が速度の面で優れている場合があり、特に入力が多変数となると、拡張affine形式の方が数百倍程度早く計算できる場合があることがわかった。 2017
著者
中山 大輔 齋藤 圭介 福永 裕也 小幡 太志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101297, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】介護老人保健施設(以下,老健)は,本来中間施設の役割を持ち,自宅復帰を前提とした介入が求められている.しかし現状では,在宅復帰率の低下や入所期間の長期化といった問題に直面している.老健における在宅復帰に関する先行研究では,さまざまな要因が関連していることが報告されているが,その研究蓄積は乏しく一定の見解は得られていない.それに対し,病院入院患者における在宅復帰に関する先行研究は,おおむね日常生活活動(Activities of daily living; ADL),認知機能,家族の介護力が,重要な規定要因として概ねコンセンサスが得られている.老健における在宅復帰の規定要因を検討するには,まず病院における在宅復帰の規定要因により老健入所者の在宅復帰を説明可能か検証するとともに,老健での独自の規定要因がある可能性を考慮し検討していく必要がある. 以上を踏まえ本研究では,老健入所者の在宅復帰に向けた指針を得ることをねらいに,病院での在宅復帰の規定要因に関するモデルを応用しその適切さを検証すること,ならびに老健入所者における在宅復帰の関連要因について検討することを目的とした.【方法】中国地方に位置する1か所の老人保健施設を調査対象施設として選定し,過去3年間の入所利用者130名とし,集計対象は退所先が病院や施設であった者,死亡退所者を除く81名(男性11名,女性64名,86.1±8.1歳)とした.調査方法は後ろ向きの縦断研究とし,介護記録,カルテを基に調査を行った.調査項目は基本的属性(性別,年齢,入所元),医学的属性(基礎疾患,医学的管理),身体機能(Rivermead Mobility Index ; RMI),ADL自立度(Barthel Index ; BI),認知機能(改訂長谷川式簡易知能評価スケール;HDS-R),行動心理症状(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia; BPSD)の有無,補助介護者の有無とした. 基礎的検討として,施設からの在宅復帰者と入所者に分けて各要因との関連について群間比較を行った.年齢については二標本t検定を行い,RMI,BI及びHDS-RについてはMann-Whitney検定を行い,性別,基礎疾患,医学的管理,入所元,DBDを用いたBPSDの有無,補助介護者の有無についてはχ²検定を行った.病院における在宅復帰の規定要因により,老健入所者の在宅復帰を説明可能か検証した.統計処理に関しては,病院在宅復帰モデルで規定要因とされているADL自立度,認知機能,家族の介護力について,BI,HDS-R,補助介護者の有無をそれぞれ説明変数とし,在宅復帰の有無を従属変数としたロジスティック回帰分析を行った.次いで,群間比較において統計的有意な関係が見られた変数を説明変数,在宅復帰の有無を従属変数としてWald統計量によるステップワイズ法により解析を行った. 【倫理的配慮、説明と同意】倫理的配慮として,調査施設の倫理審査を経て実施した.【結果】病院における在宅復帰の規定要因 とされているADL自立度,認知機能,補助介護者の有無は統計的有意な差がみられた.それに加え,RMI,入所元,褥瘡についても統計的に有意な差が認められた.病院における在宅復帰の規定要因の検証では,BI総得点のみ統計的に有意な関連が示され,他の変数については有意な関連が認められなかった. 上記結果を踏まえ, Wald統計量によるステップワイズ法により解析を行った結果,移動能力の指標であるRMI,ならびに入所元が,統計的に有意な関連を示した.一方,病院での在宅復帰の規定要因に関するモデル検証で有意であったBI総得点をはじめ,HDS-R得点,補助介護者の有無,褥瘡は棄却された.【考察】本研究により,老健入所者の在宅復帰を規定する要因は,病院入院患者を対象とした先行研究における知見とは異なる,独自の要因によって規定されている可能性を明らかにした.また今回の研究では,自宅復帰の規定要因として移動能力と入所元の2つの要因が検出された.このことは,必ずしもADLを自立させなくとも,姿勢や動作の獲得による介護負担軽減により,自宅復帰を促進できる可能性を示唆するものである.同時に,自宅からの入所者について退所出来る割合が高かったことは,自宅復帰の可能性を探る上で重要な目安となるものと考えられた.【理学療法学研究としての意義】老健における在宅復帰の規定要因を明らかにすることで今後のケアに向けての指針を得ることができ,理学療法分野においても在宅復帰に向けた適切なリハビリテーションを行うための基礎的資料となりうると考えられる.
著者
中山 大輔 三浦 利子 菊池 みずほ 杉田 淳平 小林 栄子 西垣 良夫 井出 久治 杉山 章子
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.393-401, 2006 (Released:2006-12-26)
参考文献数
5
被引用文献数
1

戦後,急速に進んだ人口の高齢化によって,日本は世界有数の長寿国となった。古来,人々が希求してきた「長生き」の実現は喜ぶべきことであるはずだ。しかし,現在の「長寿」社会には,喜びよりも不安が目立つ。なかでも健康への不安を訴える声が少なくない。 日本人の平均寿命が世界でも類のないスピードで延びた要因としては,衛生・栄養状態の改善や生活環境の整備など公衆衛生の向上とともに,医療技術の高度化による延命技術の発展が大きい。治療技術の進歩は,数々の疾患を克服する一方で,死を免れたものの後遺症に悩む人を生み出し,年々増えている高齢者の中には長期にわたる療養生活を余儀なくされている人が多い。 今,人々は単なる「長寿」ではなく,健やかに長生きすることすなわち「健康長寿」を望んでいる。長野県は,平均寿命の高さとともに,医療機関の在院日数の低さ,在宅療養環境の整備などの面で近年良好なパフォーマンスを示し,「健康長寿」の先進地域として注目されている。こうした評価が生み出される背景には,地域で長年実践されてきた健康増進活動の積み重ねがある。 本稿では,その1例として,県東部に位置する人口5,000人弱の八千穂村 (2005年3月20日に佐久町と合併して佐久穂町となったが,本稿では旧八千穂村を八千穂村と記す) の実践を取り上げる。村が,全国でも先駆的な取り組みとして1959 (昭和34) 年に開始した「全村健康管理」は,40年以上経過した現在,住民による自主的な活動を生み出しながら定着している。 今回は,健康管理事業の展開の中で誕生したさまざまな住民による活動のうち,栄養改善に取り組んだグループに着目し,その形成・発展過程の調査・分析を通して,住民主体の活動を可能にする要件について考察した。