著者
李 秀澈 何 彦旻 昔 宣希 諸富 徹 平田 仁子 Unnada Chewpreecha
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.1-12, 2021-09-26 (Released:2021-11-02)
参考文献数
22

本稿では,「発電部門の石炭火力・原発の早期フェーズアウトは,日本経済と電源構成,そして二酸化炭素排出にどのような影響を与えるのか」という「問い」に対して,E3MEモデルを用いて定量的な回答を求めた.フェーズアウトシナリオとして,原発の場合,稼働年数40年に到達した古い原発からフェーズアウトし,石炭火力は発電効率の低い順から2030年または2040年までにフェーズアウトする2つのシナリオを設定した.そしてこのフェーズアウトシナリオが実現されたときに,2050年までの日本経済(GDP,雇用など),電源構成,発電部門二酸化炭素排出に与える影響について,E3MEモデルを用いて推定を行った.分析の結果,いずれのシナリオでも経済と雇用に悪い影響は殆ど与えないことが確認された.その要因として,再生可能エネルギー発電のコストが持続的に下落し,それが既存の石炭火力と原発を代替しても,経済への負担にはならないという事情が挙げられる.ただし,原発と石炭火力の代替電源としてLNG発電の割合が再生可能エネルギー発電の割合を大きく上回ることになり,発電部門における2050年の二酸化炭素排出量は,50%ほどの削減(2017年対比)に留まることも明らかになった.そこで本稿では,発電部門の脱炭素化のためには,規制的手法だけでなく,カーボンプライシングなど経済的措置の導入も必要であることが示唆された.
著者
植田 和弘 李 秀澈
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.1-11, 2014-01-24

日本の原発政策は,再処理・増殖炉路線を採用し,高レベル放射性廃棄物の地層部分を前提にしている。しかし現実には,どちらの前提も満たされておらず,バックエンドの未確立は原発稼働の基盤を揺るがしつつある。放射性廃棄物の処分は,発生者責任の原則がうたわれているが,直接的な排出者ではなく日本原燃(株)や原子力環境整備機構という中間的な組織に責任が転嫁させている。