著者
大島 堅一 植田 和弘 稲田 義久 金森 絵里 竹濱 朝美 安田 陽 高村 ゆかり 上園 昌武 歌川 学 高橋 洋 木村 啓二 櫻井 啓一郎
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本の地域分散型エネルギーシステムへの移行には次の方策が必要である。第1に経済性向上のための対策が必要である。分散型エネルギーの経済性を高めるには、技術革新と制度改革とを並行して進める必要がある。第2に、分散型エネルギー中心の電力システムに改革するには、変動電源の安定化やデマンド・レスポンスなどの対策を効果的に講じなければならない。第3に、政策転換の不確実性の克服である。この際、集中型エネルギーシステムと分散型エネルギーシステムとの間で政策的バランスを取る必要もある。第4に、公正かつ中立的な電力市場をつくる必要がある。
著者
植田 和弘 森 晶寿 高田 光雄 浅野 耕太 諸富 徹 足立 幸男 新澤 秀則 室田 武 新澤 秀則 足立 幸男
出版者
京都大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2006

本研究領域は、持続可能な発展論と環境ガバナンス論を重層性に着目して統合的に再構成し、持続可能な社会を実現するための理論的基礎と実践的指針を確立するという極めて実践的な問題意識を持ってすすめた。個々の研究成果を理論的・実現的に蓄積させ有機的に結合することにより、従来にない先導的で基盤的な意義を有する研究成果としてまとめた。さらに、これまでに得られた学術的研究成果を基に、最終報告書として5巻にのぼる英文学術書を取りまとめた。そのうち2巻については出版し、残り3巻についても編集作業がほぼ完了した。留意した点はいかのとおりである。昨年度までに国内外で開催された国際会議や学会において研究成果を公表してきたが、そこで得られたコメント等は本領域研究の問題意識と方法等に対しておおむね好意的であった。さらに、本領域の学術的価値を適切に評価し、国際的な評価を受けるべく適宜アドバイスを求めてきた国内外の有力研究者からの指摘は本領域研究のオリジナリティに関して高い評価を得ており、その核心部分と改善に向けての示唆を最終報告書である英文学術書5巻に反映させた。国際学術誌や国内学会誌に掲載された研究成果も多数にのぼるが、それらのエッセンスに加えて中間報告書に対する論評も考慮して、本領域研究の成果を総体として持続可能な発展の重層的環境ガバナンスに関する理論的実証的体系としてまとめた。そして、その成果を国際的に発信すべく英文で出版した。また、領域研究全体としての成果を、速やかに社会に提供できる環境を構築するべく、インターネット・ウェブ・ページを開設し、外部から自由にアクセスできるようにした。これにより、国内外を問わず、この領域に関心を示す研究者とコミュニケーションに基づく批判的吟味を受け討議を行うことが可能となった。
著者
植田 和弘
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.31-41, 2008-07-17 (Released:2013-12-27)
参考文献数
13
被引用文献数
1

失敗する環境政策の欠陥を克服し,持続可能な発展を実現する環境政策への進化が求められている。そのためには,現代環境問題の新しい特徴と相互依存関係をふまえた重層的環境ガバナンスの構築が課題になっている.環境ガバナンスは環境政策の形成過程における環境NGOなど非政府セクターの役割が認知されてから注目されてきたが,重層性の重要性が認識されるようになったのは,EU出現以降のことである.グローバルな経済活動がグローバル・リージョナル・ローカルな環境問題の基本原因をなしている.個々の地域環境問題は世界経済のグローバリゼーションに起因するがゆえに相互に関連を持つものであるが,同時に地域固有の条件の下で現れるので均質な現象にはならない.このことは,現代において持続可能な発展の実現を阻む構造の存在を示しており,このメカニズムを解明し克服することが求められる.問われるべきは,環境ガバナンスすなわち環境問題に対するどのような政策・制度的対応と民主主義的プロセスが,持続可能な発展を現実化しえるのか,である.グローバル,リージョナル,ナショナル,ローカルといった重層性を伴い,各層間が相互作用を伴って動態化している重層的環境ガバナンスの構造と機能を明らかにし,そこへの移行戦略を構築していかなければならない.
著者
植田 和弘
出版者
日本公共政策学会
雑誌
公共政策研究 (ISSN:21865868)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.6-18, 2008-11-20 (Released:2019-06-08)

環境サステイナビリティという理念はいかに公共政策に組み入れられるべきか,そして現実にでのように取り入れられつつあるか,そこでの課題は何かについて検討した。公共政策の目標との関連で最初に,環境と成長のトレードオフという通念を破る発想に具体的な制度・政策的内容を与えた脱物質化論,ポーター仮説,二重の配当論等を紹介した。いずれの議論にも,環境を大切にする社会は,同時に雇用や福祉など他の社会的目標もあわせて逹成する社会であるべきだとする立場が共通しており,そこに,社会の制度・政策イノベーション能力の源泉があった。第三次環境基本計画は目標としては,持続可能な地域社会を志向しているものの,その実現を図る政策指針を持ちえていない。持続可能な(地域)発展に明確な定義を与え,包括的で測定可能な判定基準を理論的に提示したダスグプ夕の理論を適用すると,持特続可能な地域社会の構築には,地域の資本資産を充実させることと,その資本資産を有効に活用する制度をつくりあげること,が求められる。そうした環境的・経済的・社会的持続可能性を統合した持続可能な地域社会づくりには,地域社会のトータルなデザインが不可欠であり,総合行政の主体として自治体が本来の総合性を回復することが前提となる。同時に,環境的・経済的・社会的持続可能性を統合的に実現するための知的基盤や社会的基盤を形成するとともに,住民が自治の担い手としての力量を高めることが不可欠であり,自治体公共政策の方向性が確認される。
著者
蔡 佩宜 篭橋 一輝 佐藤 真行 植田 和弘
出版者
水資源・環境学会
雑誌
水資源・環境研究 (ISSN:09138277)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.1-12, 2014 (Released:2014-08-01)
参考文献数
30

本研究は、設楽ダムを事例に、公共事業をめぐる関係者間の利害対立の構造を分析し、社会的合意形成を阻害する要因を考察するとともに、全国のダム検証に係る「関係地方公共団体からなる検討の場」の取組みの意義と限界を明らかにすることを目的にしている。本研究では、まずダムの必要性をめぐって開発主体である国や県と反対派住民の主張が対立する中心的論点について、行政が提示した将来の水需要量の数値に問題があることを示した。そして、ダム建設についての利害対立を調整する制度や手段について、設楽ダムのような直轄ダム事業の検証に係る審議会は事業者と関係公共団体が中心に行うのに対して、補助ダム事業の検証は地域ごとに多様な利害関係者と制度設計の下で審議を行うという違いがあり、両者を比較しながら、ダム検証についての現状制度の不十分性を指摘した。
著者
植田 和弘 李 秀澈
出版者
北海道大学大学院経済学研究科
雑誌
經濟學研究 (ISSN:04516265)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.1-11, 2014-01-24

日本の原発政策は,再処理・増殖炉路線を採用し,高レベル放射性廃棄物の地層部分を前提にしている。しかし現実には,どちらの前提も満たされておらず,バックエンドの未確立は原発稼働の基盤を揺るがしつつある。放射性廃棄物の処分は,発生者責任の原則がうたわれているが,直接的な排出者ではなく日本原燃(株)や原子力環境整備機構という中間的な組織に責任が転嫁させている。
著者
横山 彰 藤川 清史 植田 和弘
出版者
中央大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、地球的規模のインフラストラクチャーである地球環境に焦点をあてつつ、環境に負荷を及ぼす人間の諸活動の制御はいかなる経済システムの下で可能になるのかについて考察し、経済システムの中に環境保全のルールを組み込んだ「環境保全型経済システム」を構築するための政策のあり方を明らかにすることである。平成11年度は、本研究組織全員による共同論文"Green Tax Reform : Converting Implicit Carbon Taxes to a Pure Carbon Tax"を完成させ、平成12年8月28-31日スペインのセビリアで開催された甲際財政学会で報告した。この研究では、現行の化石燃料諸税を潜在的炭素税と認識した上で、新たに推計した各化石燃料の需要の価格弾力性に基づき、その税収を変えることなく炭素含有量に応じて課税する純粋炭素税に税率を改変することによって、約1,833万トン炭素を削減できる点を提示した。さらに、税制のグリーン化及び環境・エネルギー関連税制を中心とした環境保全型経済システムの構築において国と地方政府の役割分担を検討し、地方環境税と地方環境保全対策のあり方を考察し、地方環境税の意義を明らかにした。平成13年度は、本研究の最終年度であり、環境・エネルギー関連税制を中心とした環境保全型経済システムの構築を具体化するための研究を取りまとめた。研究代表者の横山と研究分担者の植田は、本年度までの本研究成果を基礎にし、自治総合センター「地方における環境関連税制のあり方に関する研究会」と環境省中央環境審議会「地球温暖化対策税制専門委員会」などの公的な政策現場においても委員として専門的発言をしてきた。また研究分担者の藤川は、産業連関分析による産業構造変化の検討を通して、日本の経済発展と環境負荷について論文をまとめた。
著者
植田 和弘 森田 恒幸 仲上 健一 佐和 隆光
出版者
京都大学
雑誌
特別推進研究
巻号頁・発行日
1991

発展途上国における環境保全型経済発展のあり方とその可能性に関する分析をすすめた。アジア諸国においては、日本における公害対策の進展が経済成長をしながらすすめられたことをもって、日本を持続可能な発展のモデルとみる傾向がある。そこで、日本の公害対策のうち最も成功したと言われている硫黄酸化物対策に焦点をあてて、中国および韓国を対象として環境政策の発展過程に関する基礎的データを収集・分析するとともに、政策の発展経緯をその経済性に着目して詳細に比較分析した。その結果、その同質性と特異性が明らかになり、後発性の利益を実現するための条件を解明した。開発プロジェクトの持続可能性の条件について、流域開発事業を事例に、環境費用・環境便益の社会的評価方法と開発プロジェクトの環境配慮の評価システムに着目して分析を加えた。その結果、開発インパクトと流域管理の国際比較に関する体系的なデータベースの構築が不可欠であることが確認された。環境政策の経済的手段について、ドイツ排水課徴金、公害健康被害補償制度賦課金、環境補助金、排出許可証取引制度、デポジット・リファンド制度、ごみ有料化、直接規制を取り上げ、その理論と実際の乖離とその原因について、理論の通説的理解の再検討と実証分析を行うことで検討をすすめた。その結果、これまでの経済理論の想定が非現実的であること、通常のミクロ経済理論が集合的意思決定の要素を十分に考慮できていないために、実際に導入されている経済的手段の合理性を説明できないことを論証した。また、財政学的な検討を加えることで、実際に導入されている経済的手段を費用負担のあり方の一形態として理解できることも明らかにした。