著者
長瀬 文昭 田中 靖郎 堂谷 忠靖 石田 学 紀伊 恒男 伊藤 真之 松岡 勝 柴崎 徳明 大橋 隆哉 国枝 秀世 田原 譲 北本 俊二 三原 建弘 田中 靖郎 CANIZARES C. RICKER G. 鶴 剛 粟木 久光 河合 誠之 吉田 篤正 SERLEMITSOS アール 林田 清 BREON S. 海老沢 研 VOLZ S.V. KELLEY R. HELFAND D. MCCAMMON D. 常深 博 牧島 一夫 満田 和久 村上 敏明 小山 勝二 山下 広順 小川原 嘉明 宮本 重徳 MUSHOTZKY R. 槇野 文命 HOLT S. 井上 一 SERLEMITSOS R. 川口 淳一郎 中川 道夫 藤本 光昭 長瀬 文昭 松尾 弘毅 上杉 邦憲 WANG B. FEIGELSON E. GRAFFAGNINO V. REYNOLDS C. 羽部 朝男 GEHRELS N. FABBIANO G. SERLEMITSOS RICKER G 山内 茂雄 池辺 靖
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

「あすか」(Astro-D)は、1993年2月に打ち上げれられ、わが国4番目のX線天文衛星となった。この衛星は0.5-10keVの広いエネルギー帯をカバーし、史上最高の感度でX線天体の撮影を行うと共に、世界で初めてX線CCDによる精密X線分光を行う高性能X線天文台である。「あすか」の性能はX線天文学を飛躍的に進めるものと国際的に注目されている、X線天体は極めて多岐に亘り、殆どあらゆる種類の天体がX線天文学の対象となっている。特に銀河系では中性子星やブラックホールのX線連星、超新星残骸等、銀河外では、銀河団、クェーサー等の活動銀河中心核、更に遠方からのX線背景放射が重要課題である。この衛星に搭載されている観測装置は日米共同で製作された。打ち上げ前には、装置の設計・製作・試験・較正・調整を、打ち上げ直後には装置の較正・調整を共同で行ってきた。さらに、定常観測に入ってからは、装置の性能の正確な把握や正しいデータ解析のツールの提供等でも共同で作業を行うとともに、その成果を最大限に挙げるために、観測計画の打ち合わせ、ソフトウエア開発、観測結果の処理、解析等の各過程で両国の研究者が協力して作業を行ってきた。これらの作業のための日米研究者の移動は、主に、本科学研究費によって行われた。これら日米協力に基づく「あすか」がもたらしたいくつかの成果を以下にまとめる。・「あすか」が打ち上がって40日もたたないうちに近傍銀河M81に発生したSN1993Jからは、ドイツのX線天文衛星ROSATとほぼ同時にX線を検出した。発生して1週間ほどの超新星からX線を検出したのは今回がはじめてである。・超新星の爆発で飛び散った物質が星間物質と衝突して光っている超新星残骸について、「あすか」のすぐれた分光特性による新しい学問的展開がひらかれている。・ガンマ線バーストと呼ばれる特異な現象の発生源をはじめて既知の天体との同定に成功し、この現象の原因の解明に大きな貢献をした。・われわれの銀河系の中心部や円盤部を満たす高温ガスからのX線の分光的研究が進み、従来の予想では理解し難い事実があきらかになりつつある。・楕円銀河、銀河群、銀河団といった宇宙の大きな構造物をとりまく高温ガスの分光学的研究が進み、これらのガス中の重元素量が一貫して少ないという、新しい考え方の導入を迫る事実があきらかになってきた。また、これらの構造物を構成する暗黒物質の分布や量についても新しい知見が得られつつある。・遠方の銀河団をつかった宇宙の大きさを決める研究も、「あすか」の広い波長範囲の分光を行える能力をつかって、着々と成果をあげつつある。・活動銀河の中心にある大質量ブラックホールのごく近傍からのものとおもわれる鉄の輝線構造をはじめて発見し、ブラックホール近傍での物質流につき貴重な情報をもたらしている。この中心核を取り巻く比較的遠方の物質や分布の物理状態についても「あすか」のすぐれた分光性能により新しい事実が次々と明らかになってきている。・宇宙X線背景放射の研究も、「あすか」の波長範囲の広さを利用して、宇宙のはて近い遠方の宇宙初期の原始天体を探る研究がはじまりつつある。以上のように、本科学研究費補助金の援助のもと、「あすか」を用いた日米の研究者による共同研究は大きな成果をあげている。
著者
加藤 久弥 村上 敏明
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獸醫學雜誌 (ISSN:00215295)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.39-PLATE I, 1962-01-25

1959年4月, 定型的リステリア(以下Lと略)脳炎で弊死した羊を剖検し, 偶然, 鼻洞に寄生する羊蝿 Oestrus ovis の幼虫を発見した. 採取した9匹の幼虫の内2匹を試みに培養し, 残り7匹はフォルマリン標本とした. また, 後に同一牧場から得た5頭(健康羊3, 急性鼓張2)から22匹の幼虫を採取してL菌の培養に供した. 各材料は夫々減菌食塩氷で10回洗滌し, 5mlの食塩水乳剤としてその0.2mlを平板に塗抹し, 37℃, 24時間培養した. いづれの場合も虫体の最終洗滌液を培養して無菌なることを確めた. 結果は第1表の如く, L症羊寄生幼虫2匹の内1匹からL菌(K16株)が殆ど純培養状(Fig.1)に分離された. 本株の生物学的性状及び血清学的型別を行い, 1型菌と同定された(Tables 2〜4). 従来L症の自然感染要約については種々の推論があり, 齧歯類, 野獣, 野鳥等, 或はサイレージ等区々として, 未だ確立されていない. 羊蝿とL症の関係について1937年, GILL により示唆されたが, その後これを支持する研究が出なかった. 今回の著者等の報告は GILL に次いで, 羊蝿幼虫からL菌を分離した第2例である. 先に, 著者等は盛岡における羊蝿の生活環を研究した. 一方1951年以降10年間の日本における家畜のL症の発生時期が外国と同じく晩冬初夏の候に限局することを知った. 之等の事実と羊蝿のL症との関係を追及することは興味あるものと考える.