著者
柴崎 徳明
出版者
プラズマ・核融合学会
雑誌
プラズマ・核融合学会誌 (ISSN:09187928)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.p466-469, 1994-05

The rotation of neutron stars with strong magnetic fields induces huge electric fields in the magnetosphere, which accelerate charged particles to more than 10^<12>eV. High energy particles radiate TeV photons through the inverse compton and curvature radiation processes, which produce electron-positron pairs in the magnetic and electric fields. Each member of the pair radiates synchrotron photons, many of which produce a secondary generation of pairs. This cascade process continues until the synchrotron photons are no longer energetic to produce pairs. The emitted photons are observed as pulses due to the relativistic beaming and stellar rotation. Here we present an overview on the particle acceleration and photon emission in the magnetosphere of neutron stars.
著者
長瀬 文昭 田中 靖郎 堂谷 忠靖 石田 学 紀伊 恒男 伊藤 真之 松岡 勝 柴崎 徳明 大橋 隆哉 国枝 秀世 田原 譲 北本 俊二 三原 建弘 田中 靖郎 CANIZARES C. RICKER G. 鶴 剛 粟木 久光 河合 誠之 吉田 篤正 SERLEMITSOS アール 林田 清 BREON S. 海老沢 研 VOLZ S.V. KELLEY R. HELFAND D. MCCAMMON D. 常深 博 牧島 一夫 満田 和久 村上 敏明 小山 勝二 山下 広順 小川原 嘉明 宮本 重徳 MUSHOTZKY R. 槇野 文命 HOLT S. 井上 一 SERLEMITSOS R. 川口 淳一郎 中川 道夫 藤本 光昭 長瀬 文昭 松尾 弘毅 上杉 邦憲 WANG B. FEIGELSON E. GRAFFAGNINO V. REYNOLDS C. 羽部 朝男 GEHRELS N. FABBIANO G. SERLEMITSOS RICKER G 山内 茂雄 池辺 靖
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

「あすか」(Astro-D)は、1993年2月に打ち上げれられ、わが国4番目のX線天文衛星となった。この衛星は0.5-10keVの広いエネルギー帯をカバーし、史上最高の感度でX線天体の撮影を行うと共に、世界で初めてX線CCDによる精密X線分光を行う高性能X線天文台である。「あすか」の性能はX線天文学を飛躍的に進めるものと国際的に注目されている、X線天体は極めて多岐に亘り、殆どあらゆる種類の天体がX線天文学の対象となっている。特に銀河系では中性子星やブラックホールのX線連星、超新星残骸等、銀河外では、銀河団、クェーサー等の活動銀河中心核、更に遠方からのX線背景放射が重要課題である。この衛星に搭載されている観測装置は日米共同で製作された。打ち上げ前には、装置の設計・製作・試験・較正・調整を、打ち上げ直後には装置の較正・調整を共同で行ってきた。さらに、定常観測に入ってからは、装置の性能の正確な把握や正しいデータ解析のツールの提供等でも共同で作業を行うとともに、その成果を最大限に挙げるために、観測計画の打ち合わせ、ソフトウエア開発、観測結果の処理、解析等の各過程で両国の研究者が協力して作業を行ってきた。これらの作業のための日米研究者の移動は、主に、本科学研究費によって行われた。これら日米協力に基づく「あすか」がもたらしたいくつかの成果を以下にまとめる。・「あすか」が打ち上がって40日もたたないうちに近傍銀河M81に発生したSN1993Jからは、ドイツのX線天文衛星ROSATとほぼ同時にX線を検出した。発生して1週間ほどの超新星からX線を検出したのは今回がはじめてである。・超新星の爆発で飛び散った物質が星間物質と衝突して光っている超新星残骸について、「あすか」のすぐれた分光特性による新しい学問的展開がひらかれている。・ガンマ線バーストと呼ばれる特異な現象の発生源をはじめて既知の天体との同定に成功し、この現象の原因の解明に大きな貢献をした。・われわれの銀河系の中心部や円盤部を満たす高温ガスからのX線の分光的研究が進み、従来の予想では理解し難い事実があきらかになりつつある。・楕円銀河、銀河群、銀河団といった宇宙の大きな構造物をとりまく高温ガスの分光学的研究が進み、これらのガス中の重元素量が一貫して少ないという、新しい考え方の導入を迫る事実があきらかになってきた。また、これらの構造物を構成する暗黒物質の分布や量についても新しい知見が得られつつある。・遠方の銀河団をつかった宇宙の大きさを決める研究も、「あすか」の広い波長範囲の分光を行える能力をつかって、着々と成果をあげつつある。・活動銀河の中心にある大質量ブラックホールのごく近傍からのものとおもわれる鉄の輝線構造をはじめて発見し、ブラックホール近傍での物質流につき貴重な情報をもたらしている。この中心核を取り巻く比較的遠方の物質や分布の物理状態についても「あすか」のすぐれた分光性能により新しい事実が次々と明らかになってきている。・宇宙X線背景放射の研究も、「あすか」の波長範囲の広さを利用して、宇宙のはて近い遠方の宇宙初期の原始天体を探る研究がはじまりつつある。以上のように、本科学研究費補助金の援助のもと、「あすか」を用いた日米の研究者による共同研究は大きな成果をあげている。
著者
村上 敏夫 鶴 剛 吉田 篤正 柴崎 徳明 池田 博一 牧島 一夫
出版者
宇宙科学研究所
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

ガンマ線バーストの起源を解明することを目的にこの研究班は組織された。今年度はその4年間の最後の年になる。その成果について実績を評価したい。研究は1:人工衛星を使った観測、2:理論的な検討、そして3:将来を考えたガンマ線バーストの観測装置の開発に目標を置いた。人工衛星を使った観測では、我々はガンマ線バーストの一種族であるリピーターの起源を超新星の残骸の中にある中性子星からと解明した。これはネ-チャー誌上に発表され、大きな評価を受けた。しかし、もう一つの種族であるclassicalガンマ線バーストでは原因の解明が達成されなかった。ガンマ線バースト源のX線対応天体の観測をASCA衛星で行い、X線源は受かるものの対応の可否は解明されない。最近イタリアのSAX衛星でガンマ線バーストに伴いX線が長い時間(数日)出ているのが観測されたが、これも人工衛星ぎんがで観測した事実の確認と言える。ここでも我々は大きく寄与したが、この輻射の起源の解明が今後の鍵を握るだろう。理論的な検討では、立教大の柴崎を代表にガンマ線バースト研究会を三回開催することが出来た。ガンマ線バーストでは発生源までの距離が分からないことから、理論家も仲々手を出すのが難しいと考えられる。主に我々の得た成果を聞いていただき、理論を検討頂いた。ガンマ線バーストで、日本から理論の論文が2つ出たのは大きな成果と言えるだろう。我々が最も重視したのは、将来の衛星で使えるガンマ線バースト検出器の開発である。科研費の大半はこれに投資されたのは言うまでもない。それは半導体を使用した硬X線検出器である。ノイズの少ない検出器を目指して開発され、ほぼ必要な性能がやっと最終年度に達成された。これは2000年に打ち上がるASTRO-E衛星に搭載されることになる。ASTRO-E衛星の硬X線検出器はガンマ線バーストを検出する能力があり、今後の発展を期待する。
著者
柴崎 徳明 蓬茨 霊運
出版者
立教大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

超強磁場中性子星が発見されたので、その研究をミリ秒パルサーの研究に優先させ行い、以下のような成果を得た。X線、ガンマ線を爆発的に放射する天体がある。今までに4例見つかっており、Soft Gamma Repeaters(SGR)と呼ばれている。私たちは、1998年の4月と9月、X線天文衛星「あすか」でこの内の一つSGR1900+14を観測した。その結果、定常的なX線放射を検出し、その強度が5.16秒の周期で振動していることをみつけた。このパルス周期は1.1×10^<-10>ss^<-1>の割合で伸びていた。さらに、X線のスペクトルはベキ型であることも見い出した。これらの観測事実をもとに考察、検討を重ね、つぎのようなことが明らかになった。(1)パルス周期とその伸び率から、バルサーは〜10^<15>Gという超強磁場をもつ中性子星(マグネター)である。(2)解放される中性子星の回転エネルギーは少なく、定常X線成分を説明できない。エネルギー源はたぶん磁場そのものであろう。(3)定常X線成分は、中性子星表面からの熱放射ではなく、たぶん磁気圏からの非熱的放射であろう。中性子星が誕生する際、その回転がたいへんに速く周期がミリ秒程度のときは、ダイナモメカニズムが強くはたらく。その結果、磁場は〜10^<15>Gぐらいまで成長し、マグネターができると考えられる。私たちはマグネターの磁場の進化および熱進化について調べ、次のような結果を得た。(1)コアの磁場は、ambipolardiffusionにより10^4年ぐらいで一様にはなるが、大幅に源衰することはない。(2)中性子星全体としての磁場の減衰はコアとクラストの境界あたりでのジュール損失できまり、減衰のタイムスケールは10^8年以上である。(2)解放されるジュール熱により、中性子星の表面温度は10^6年から10^8年以上わたって、〜10^5K以上に保たれる。
著者
蓬茨 霊運 柴崎 徳明
出版者
立教大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

本研究から次のようなことが明らかになった。1.X線新星、LMXB(低質量連星型X線星)それぞれのX線スペクトルには二成分が存在する。この内の一成分はどちらにも共通しており、降着円盤から期待されるスペクトルによく合う。この降着円盤成分はどちらのX線源においても強度の時間変動がきわめて少ないか、あってもゆるやかである。このことから中性子星のまわりにも、またブラックホールのまわりにも同じような性質の降着円盤が形成されているといえる。2.スペクトルのもう一方の成分は、X線新星の場合は、ベキ型のスペクトル、LMXBの場合は黒体輻射のスペクトルでよく表わされる。ベキ型の成分はブラックホールの近傍でホットプラズマによるcomptonizationあるいは非熱的なプロセスでつくられるのであろう。一方、黒体輻射成分は中性子星表面からの放射と考えられる。3.ベキ型成分、黒体輻射成分はどちらも激しい強度変動を示す。X線新星でもLMXBでも、スペクトルの二成分はそれぞれ独立に変動することをみつけた。もしこれらの二成分が正の相関をも動するならば、降着円盤を通過した物質がブラックホールや中性子星表面に到達することになる。したがって、二成分間に相関がないということから、中心天体への物資降着には降着円盤(幾何学的にうすく光学的にあつい円盤)を通過するチャンネルの他にもう一つ別のチャンネルがあると結論できる。もう一つのチャンネルに対し、私たちは降着降着円盤が二重構造、つまり光学的にあつく幾何学的にうすい円盤が光学的にうすい円盤ではさまれたサンドイッチ状の構造になっているのではないかと考えている。現在、観測との比較のため必要になる二重構造円盤のより詳細な性質に向けて研究を進めている。