著者
渡邊 彰 木下 一成 村元 隆行 中井 瑞歩 鈴木 結子 井上 朔実 平田 滋樹
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.4, pp.395-401, 2020-11-25 (Released:2020-12-12)
参考文献数
45
被引用文献数
3 8

国内で流通しているシカおよびイノシシ肉の品質向上のために,処理施設より胸・腰最長筋を購入して,熟成終了時のpHを測定し変動要因について調べた.調査票から動物種,性別,体重,捕獲方法(箱わな,囲いわな,足わな)を要因とし分散分析により解析した.また,タンパク質の変性程度を測定しPale, Soft, and Exudative (PSE)の発生についても調査した.その結果,調査個体の35%はDark, Firm, and Dry (DFD)が疑われるpH>6.0であり,足わなによる捕獲がpHを有意に高くし,オスがメスより高くなる傾向が認められた.一方,PSEと判定されたのは箱わなおよび囲いわなで捕獲された頭数の52%,足わな捕獲の5.8%であった.以上の結果より,品質の高い野生獣肉を提供するには早期発見によるDFDの回避と,興奮を抑えた止め刺し技術によるPSE回避が重要であることが示された.
著者
高田 偲帆 村元 隆行
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.88, no.3, pp.335-338, 2017-08-25 (Released:2017-09-16)
参考文献数
14
被引用文献数
3 1

パイナップル果汁に浸漬させた牛肉のテクスチャー特性から,パイナップル果汁のブロメライン濃度を推定する方法について検討を行った.日本短角種去勢牛(n=5)の棘上筋から調製した筋肉サンプルをブロメライン溶液(0.1%,0.5%,1.0%,2.0%,および3.0%)またはパイナップル果汁に1時間浸漬させ,テクスチャープロファイル分析を行った.筋肉サンプルの最大荷重,凝集性,およびガム性荷重は溶液のブロメライン濃度に伴って有意に減少した.溶液のブロメライン濃度と筋肉サンプルのガム性荷重との関係について回帰分析を行い,得られた回帰式に,パイナップル果汁に浸漬させた筋肉サンプルのガム性荷重を適用させた結果,パイナップル果汁のブロメライン濃度は0.43%と求められた.
著者
藤村 忍 村元 隆行 勝川 雅仁 波多野 隆 石橋 晃
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.7, pp.610-618, 1994
被引用文献数
1 7

鶏肉の呈味成分を解明するために,食味の異なる種間の解析からのうま味成分を検討した.その解析を進めていくために秋田県北部を中心に生産され,うまい鶏として有名な地鶏の一種,比内鶏に着目した.古くから郷土料理のきりたんぽ鍋に合う,美味な鶏として愛好され,ブロイラーの5~6倍の高価格で扱われ,秋田県畜産試験場の改良普及品種として年間約17万羽生産されている.この比内鶏を研究対象として取り上げていく価値を判断するため,比内鶏とブロイラー肉の官能比較を行なった.次に比内鶏の生産性および呈味成分を明らかにするため,われわれの栄養素要求量の研究結果を基にブロイラーおよび卵用鶏との間で成長,飼料効率,筋肉の可溶性遊離アミノ酸,イノシン酸濃度を比較した.さらに比内鶏とブロイラーの分析値と同濃度のグルタミン酸,イノシン酸の化学合成液の官能試験を行なった.食肉の官能比較から,比内鶏は味,総合評価が有意に優るとする結果が得られた.このことから以下の試験に入ったが,比内鶏の生体重は,ブロイラーの半分以下,卵用鶏よりは少しよい程度であった.比内鶏肉の高価格は遅い成長速度に由来する生産性の低さに影響されていた.可溶性遊離アミノ酸には,グルタミン酸を含め鶏種間に特徴的な傾向は認められなかった.一方,イノシン酸の含量は,比内鶏がブロイラー,卵用鶏よりもそれぞれ50%,60%有意に高く,化学合成液による官能試験からも,比内鶏の組成がうまいことが認められた.このとき,イノシン酸とグルタミン酸の混合液が,単品溶液に比べてはるかに強いうま味を呈した.このことから官能試験での比内鶏とブロイラー肉の評価結果は,イノシン酸およびグルタミン酸の組成を反映しているものと考察された.
著者
村元 隆行
出版者
岩手大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

牛パティの粗脂肪含量とインピーダンスとの関係を示す回帰式を用いてインピーダンスから牛パティの粗脂肪含量が推定可能であることが示された.この回帰式を用いてインピーダンスからパティだけではなくステーキの粗脂肪含量も推定可能であった.牛肉の最大荷重およびガム性荷重は屠畜後4および6日目が屠畜後2日目に比較して有意に低かった.筋線維に対して垂直方向のインピーダンスは,屠畜後6日目が屠畜後2日目に比較して有意に低かった.牛肉テクスチャーの違いはインピーダンスから非破壊的に推定できる可能性が示された.
著者
村元 隆行 宮崎 真緒 手塚 咲
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.389-392, 2016-11-25 (Released:2016-12-15)
参考文献数
16

パイナップル果汁の注入が日本短角種牛肉のテクスチャーおよび保水性に及ぼす影響について検討を行った.6頭の日本短角種去勢牛の半膜様筋から各4個の筋肉サンプル(2cm厚かつ60g)を切り出し,対照区,針刺区(注入なし),塩水区(生理食塩水注入),および果汁区(パイナップル果汁注入)の4つの試験区に分けた.すべての筋肉サンプルは真空包装し,4°Cで24時間の貯蔵を行った後,ドリップロス,クッキングロス,およびテクスチャーを分析した.最大荷重,ガム性荷重,および凝集性は,果汁区が他の試験区に比較して有意に低かった.付着性,破断変形,および破断歪率に試験区間での有意な差は認められなかった.ドリップロスおよびクッキングロスには試験区間での有意な差は認められなかった.これらの結果から,日本短角種牛肉へのパイナップル果汁の注入は保水性を低下させることなく軟化させられる可能性が示された.