著者
志水 幸 志渡 晃一 村田 明子 日下 小百合 亀山 青海 小関 久恵 古川 奨 杉山 柳吉 倉橋 昌司 樋口 孝城 貞方 一也 岩本 隆茂
出版者
北海道医療大学
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部紀要 (ISSN:13404709)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.67-71, 2004

本稿では、本学新入学生の健全なライフスタイルの確立に資するべく、日常の健康生活習慣の実践度、心身の自覚症状、自覚的健康感などについて検討した。その結果、以下の諸点が明らかとなった。1)健康生活習慣実践指標(HPI: Health Practice Index)で良い生活習慣が守られていた項目は、男女ともに「適正飲酒」(男性96.6%、女性98.1%)であった。他方、もっとも実践率が低かった項目は、男性では「朝食摂取」(57.7%)、女性では「拘束時間が10時間以下」(69.6%)であった。2)HPI得点は、男女とも6点がもっとも多く、男性28.4%、女性34.3%であった。また、7点以上の良い生活習慣を実践している割合に、男女間での差はみられなかった(男性23.5%、女性23.7%)。3)自覚症状で、女性と比較して男性で有訴率が有意に高い項目は確認されず、男性と比較して女性で有訴率が有意に高い項目は、「なんとなくゆううつな気分がする」、「誰かに打ち明けたいほど悩む」、「理由もなく不安になる」、「自分が他人より劣っていると思えて仕方がない」、「足がだるい」、「肩が凝る」、「胃・腸の調子が悪い」、「便秘をする」の8項目であった。4)HPIを実践している群と比較して、実践していない群で自覚症状得点が高い傾向、また、自覚的健康感が低くなる傾向が認められた。以上の結果から、HPIの実践は、自覚症状有訴率の低下、および自覚的健康感の向上のための、有効な規定要因の1つであることが示唆された。ただし、自覚症状有訴内容や、HPIの実践と自覚的健康感の関連などに性差がみられることから、健康教育対策を講ずる際には性別に対する十分な配慮が必要であると考えられた。
著者
坂本 貴彦 黒澤 博身 岩田 祐輔 村田 明
出版者
東京女子医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

以前におこなった研究結果(Miura T, Sakamoto T, et. al. JTCVS: 133:29-36,2007)を踏まえて、軽度低体温〜常温体外循環中の脳循環生理を把握し現在汎用されている体外循環法の脳組織に及ぼす影響に関してpreliminaryな慢性実験を施行した。【対象と方法】Yorkshire pig(生後4-5週目、N=6、8.4-14.0kg)を用い、気管内挿管下に実験を開始、近赤外線分光器(NIRS: NIRO300,浜松ホトニクス)を前額面に装着した。全身麻酔下に、右開胸にて心臓に到達し、大動脈送血、右房脱血にて体外循環を確立した。脳循環生理に大きな影響を及ぼすと考えられる潅流因子の中で、臨床上汎用されている軽度低体温下でのalpha-stat strategyの脳組織に及ぼす影響を中心に実験をすすめた。軽度低体温(34℃)体外循環を90分間、Hct値30%、alpha-stat管理下に施行した。実験終了後、体外循環から離脱しカニューレを抜去し閉創をおこない、その後循環呼吸管理をおこない、人工呼吸器からの離脱をはかった。一週間経過観察をおこない、その間に毎日、実験内容を知らされていない獣医による行動評価をおこなった。行動評価にはNeurological Deficit Score(NDS)およびOverall Performance Categories(OPC)を用い、また一週間目に動物を犠牲死せしめ脳組織の顕微鏡的観察をおこなった。病理組織的診断は実験内容を知らされていない病理医がおこない、細胞レベルの虚血の有無を点数化し実験のendpointとした。【結果】NIRSは特別異常な経過を示さなかった。NDS, OPCともに一週間正常値を示し、豚は外見上異常行動を認めなかった。しかしながら脳組織Neocortex, Hippocampusを中心に虚血性変化を認めた。【考察・結論】Hct30%、軽度低体温下の小児体外循環において、現在多くの施設で汎用されているalpha-statstrategyでは組織レベルの脳障害を惹起している可能性が示された。行動評価が正常範囲内であることから、臨床上問題とならない軽微なものである可能性が高いが、脳高次機能の点では疑問が残り、良好な脳循環を確保しやすいpH-stat strategyの導入がこれを解決することが期待される。今後、血液希釈の程度との相互作用についての慢性実験の重要性が示唆された。