著者
来嶋 洋美 柴原 智代 八田 直美 Hiromi KIJIMA Tomoyo SHIBAHARA Naomi HATTA
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.10, pp.115-129, 2014

『まるごと 日本のことばと文化』は国際交流基金が開発中の相互理解のための日本語教科書である。本稿では『まるごと』が、日本語の運用力と異文化理解をどう捉え、教材化したかを述べた。まずJF日本語教育スタンダードで従来の日本語教育におけるレベル設定を見直し、これまで認識されていなかったA1レベルという熟達度を取り入れた。また、学習目標は具体的な言語行動の形(Can-do)で表わし、これによって運用力も評価する。次に日本語の教え方を見直し、学習活動を考える上では習得の認知的プロセスを参照し、言語インプットを重視した指導法を取り入れた。異文化理解能力を養うためには、知識、技能、態度の側面に働きかけた。さらに本稿では相互理解につなげるために『まるごと』で学習する談話の例についてもとりあげる。現在、海外で本書を試用している教師からは、学習者に聴解力がついてきた、積極的に話そうとするなど、肯定的な反応を得ている。
著者
来嶋 洋美
出版者
公益社団法人 日本語教育学会
雑誌
日本語教育 (ISSN:03894037)
巻号頁・発行日
vol.179, pp.93-108, 2021-08-25 (Released:2023-08-26)
参考文献数
6

在住外国人の増加や外国人材の受入れ等に伴う学習者の多様化を背景に,外国語教育の国際基準であるCEFR が日本語教育にも導入されるようなった。これは日本語教育における大きな変化であるが,教師に求められる資質・能力や研修のあり方も見直す必要がある。そこで,教師の職能開発支援を目的として欧州で開発された5 件の継続的職能開発(CPD)の枠組みを調査した。CPD の枠組みは言語教師の資質・能力をカテゴリーと発達段階に沿って能力記述文で示している。その内容には,外国語学習の基礎理論,授業設計,学習評価など日本語教育においても一般的な項目がある一方で,言語アウェアネスと言語運用力,自律的学習,ICT の教育利用など注目したい項目も含まれている。教師がどんな資質・能力をどんな段階で持っているかを自己評価と内省を通して認識し職能開発を行っていく上で,CPD の枠組みは有効と思われる。
著者
来嶋 洋美 柴原 智代 八田 直美 Hiromi KIJIMA Tomoyo SHIBAHARA Naomi HATTA
出版者
国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.8, pp.103-117, 2012

国際交流基金ではJF日本語教育スタンダードを教育現場でどう適用するか具現化すると同時に、海外拠点における日本語講座での使用のために、準拠教科書の開発に取り組んでいる。新しい教科書は相互理解のための日本語教育を実践するために、日本語だけでなく異文化理解の学びを取り入れる。学習対象は海外の成人学習者である。JFスタンダードに準拠するために、レベル設定、Can-doによる学習目標、トピック、異文化理解の学習、ポートフォリオを取り入れ、2011年5月には『まるごと-日本のことばと文化- 入門A1』試用版を刊行した。コミュニケーション言語活動中心の「活動編」と、言語能力(語彙、文型など)を中心にした「理解編」、そしてトピック別語彙集で構成される。活動編と理解編は各々主教材として開発したが、トピック構成が共通で、相互補完的にも使用できる。本稿ではその開発の枠組みと内容・構成について報告する。
著者
来嶋 洋美 村田 春文
出版者
独立行政法人国際交流基金
雑誌
国際交流基金日本語教育紀要 (ISSN:13495658)
巻号頁・発行日
no.4, pp.103-114, 2008-03-17
被引用文献数
1

英国はヨーロッパの中でも、中等教育の学習者の割合がひじょうに高い国である。各校ではGCSEと呼ばれる中等教育修了資格試験を目標に日本語教育を行っている。しかし、GCSE日本語コースの教科書はなく、カリキュラムや教材は学校や教師によって異なり、多様である。そのため、国際交流基金ロンドン日本文化センターにとっては当地の日本語教育の典型が把握しにくく、支援内容の策定に苦慮してきた。このような現状を改善するために、ロンドン日本文化センターでは日本語リソース「力-CHIKARA-」開発プロジェクトを立ち上げた。GCSEの試験シラバスをカリキュラム・教材作成用のシラバスに再構成し、それをもとに300ファイル以上からなる教材群を開発、ウェブサイト上で公開、無料配信している。また、このリソースと関連させた内容での教師研修を企画しているところである。