著者
志賀 朋子 志賀 清彦 菊池 式子 東岩井 久 米田 真美 関口 真紀 石垣 洋子 森山 紀之 小澤 信義
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.525-529, 2017 (Released:2017-12-22)
参考文献数
4

目的:当施設では2014年4月より婦人科検診の精度向上のため子宮頸部擦過細胞診をThinPrep法による液状化細胞診(liquid based cytology:以下,LBC法)に変更した.今回我々は,従来法とLBC法との検出率の比較を行い,LBC法の効用について報告する.対象と方法:当施設で実施した子宮頸部擦過細胞診について,2013年(1~12月)の20,341件従来法と2015年(1~12月)の21,690件LBC法を対象とした.不適正標本出現率と異型細胞診検出率を比較した.LBC法はThinPrep法(オートローダ―)を使用した.結果:不適正標本出現率は従来法0.39%,LBC法0.10%,異型細胞検出率はASC-US(Atypical squamous cells of undetermined significance):従来法0.84%,LBC法0.77%,ASC-H(Atypical squamous cells cannot exclude HSIL):従来法0.01%,LBC法0.03%,LSIL(Low-grade squamous intraepithelial lesion):従来法0.30%,LBC法0.60%,HSIL(High grade squamous intraepithelial lesion):従来法0.22%,LBC法0.29%であった.考察:LBC法は従来法と比べ,不適正標本出現率を軽減した.LBC法は細胞回収率を高く保ち,標本作製までの技術差を解消できたことが要因であると考えられる.鏡検過程でのスクリーナーの負担軽減やLBC法への移行に伴う細胞所見の観察に関する研修も必要であると考える.その反面デメリットは初期投資やランニングコストの増加,血液の前処理などの増加がある.結語:LBC法への移行は不適正標本の減少,異型細胞検出率の向上をもたらし,鏡検時間の短縮など,細胞検査士の負担も軽減したと考える.
著者
土岐 利彦 堀口 正之 和田 裕一 矢嶋 聰 後藤 牧子 金野 多江子 伊藤 圭子 東岩井 久
出版者
特定非営利活動法人 日本臨床細胞学会
雑誌
日本臨床細胞学会雑誌 (ISSN:03871193)
巻号頁・発行日
vol.26, no.6, pp.1000-1004, 1987-11-22 (Released:2011-11-08)
参考文献数
18

頸部細胞診でclass IIIを呈した患者で, クラミジア感染症のスクリーニングを行いさらに, クラミジア陽性例の細胞像を検討し, 以下の結果を得た.1.380例中18例 (4.7%) が, EIA法でクラミジア陽性であった.2. 陽性例では, 細胞診上, central target formationや, 星雲状封入体など, クラミジア感染に特徴的とされていいる所見は全例で認められず, 細胞診のみでクラミジア感染を推定するのは困難と思われた.3. 陽性例の56%に, 細胞診または組織診上, human papillomavirus (HPV) 感染の徴候が認められた.4. 治療例13例の細胞異型は, 6例で消失したが, 7例では存続していた. 消失例6例の細胞異型は, 主として軽い化生異型であった. これに対して, 異型持続例7例中, 6例にHPV感染の徴候が存在し, このHPV感染による細胞異型は, 治療に関係なく持続していた.以上より, クラミジア感染時にみられる細胞異型は, 同じSTDとしてHPV感染を合併する場合に, 特に問題になってくると考えられる.
著者
矢嶋 聰 東岩井 久 佐藤 章 渡辺 正昭 森 俊彦 星 和彦 米本 行範 鈴木 雅洲
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.30, no.12, pp.1657-1663, 1978-12-01
被引用文献数
1

(1) 宮城県の子宮頚癌住民検診は,昭和50年末までに,のべ受診者数が553,954人に達した.この間に発見された浸潤癌および上皮内癌患者数はそれぞれ707人,および701人であつた. (2) 昭和50年の年令階層別受診者は,40才台が最も高く対象婦人の27.4%であつた.高年令層は頚癌のhigh risk groupであるにもかゝわらず受診率はきわめて低い. (3) 頚癌の継続検診を行なうと,上皮内癌,浸潤癌の発見率は年度の推移にしたがつて減少するが,高度異型上皮の発見率はほゞ一定である. (4) 昭和40年,45年および50年のCytology Activity indexは,それぞれ60.0, 116.7および193.2であつた. (5) 検診車法による受診者の上皮内癌および浸潤癌のprevalence rateは,昭和45年および50年でそれぞれ192.8, 99.9,および102.3, 71.5であり,両者とも検診の継続により減少した. (6) 宮城日母登録方式による上皮内癌prevalence rateは,昭和45年,50年でそれぞれ213.3および205.1であり年度の推移による変化はほとんど認められなかつた.この方式による浸潤癌のprevalence rateはそれぞれ769.2および636.0であつた. (7) 昭和44年〜47年における宮城県の子宮頚浸潤癌incidence rate(年間)は32.9であつた. (8) 県下の子宮癌死亡率は5.0(10万人当り)から4.0程度であり,速度はおとろえたとはいえ,減少を続けているのが近年の傾向である.