著者
高台 真太郎 上西 崇弘 市川 剛 山崎 修 松山 光春 堀井 勝彦 清水 貞利 玉森 豊 東野 正幸 久保 正二
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.50-55, 2007-01-01
被引用文献数
6

肝癌切除後の孤立性リンパ節転移を摘除することで,術後2年6か月の現在,無再発生存中の症例を経験したので報告する.症例は58歳の男性で,C型慢性肝炎に伴う肝癌に対して肝切除術を2回施行されていた.経過観察中のCT像上,肝尾状葉に約4cm大の腫瘤性病変を認め,AFP, PIVKA-II値の著明な上昇がみられた.腹部血管造影像では腫瘤は中肝動脈および左胃動脈より栄養される腫瘍濃染像として描出され,肝癌の尾状葉再発と診断し開腹した.腫瘍は肝尾状葉に接するように総肝動脈の腹側に存在していたが,肝臓からは独立しており肝癌の総肝動脈幹リンパ節転移と考え摘除した.病理組織学的検査では中分化型肝癌のリンパ節転移と診断された.AFP, PIVKA-IIは術後2か月日に標準値範囲内へ低下し,以来,再発徴侯を認めていない.原発巣がコントロールされた肝癌の孤立性リンパ節転移は摘除により良好な予後が得られる可能性が示唆された.