著者
松岡 一郎
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.2018-032, 2018 (Released:2018-09-27)
参考文献数
8

薬剤師養成を主たる目的とする薬学教育が6年制に移行して,10年余が経過した.従来,日本の薬学部は基礎科学における発信力をもとに発展してきた.しかし,「患者本位の視点」,「臨床現場との連携重視」,「臨床現場における問題解決能力の養成」などの6年制教育の基本理念は,薬学教員に発想の転換を迫るものであり,人材養成の目標を重視したカリキュラム設計やこれに基づいた教員相互のFD活動が求められている.2012~2016年度に採択された文部科学省大学間連携共同教育推進事業「四国4薬学部連携事業」では,高度な実践能力を有する臨床薬剤師や臨床薬学分野の研究者を養成する枠組の構築を目指して様々な取り組みを実施してきた.本稿では,同連携事業の取り組みから「海外薬学教育調査」について紹介すると共に,この調査で得られたヒントをもとに日本の6年制薬学教育へのフィードバックについて論じたい.
著者
柏柳 誠 松岡 一郎
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

フェロモン受容細胞は神経細胞の一種であり、フェロモン情報を中枢に伝えるためには、電気的信号に変換することが必須であるが、その性質はほとんど不明であった。カメのフェロモン受容細胞が存在する鋤鼻器感覚上皮にアデニル酸シクラーゼの活性化剤であるforskolinを与えたところ、フェロモン受容細胞で神経インパルスの増加が見られたことから、フェロモン受容細胞にアデニル酸シクラーゼとcAMP依存性チャネルが存在することが示唆された。そこで、電気生理学的にcAMP依存性チャネルの存在の確認し、さらにその性質を解析した。カメのフェロモン受容細胞に各種濃度のcAMPを投与したところ、濃度依存的に内向き電流応答が生ずることを見出した(J. Neurosci.,1996)。濃度依存性は、嗅細胞で得られたものと類似していた。この際、膜コンダクタンスは上昇した。内向き電流が生じている時にランプ波を与えることにより逆転電位を調べたところ、カメの嗅細胞の逆転電位に近い値が得られた。以上の結果から、カメのフェロモン受容細胞には嗅細胞と同様のcAMP依存性チャネルが存在することが明らかになった。カメの鋤鼻器感覚上皮から調製した膜標品を用いて、アデニル酸シクラーゼ活性のforskolinおよびGTP依存性を調べた。フェロモン受容細胞におけるアデニル酸シクラーゼ活性は、嗅上皮と同様であった(Biochem. Biophys. Res. Commun.,1996)。さらに、forskolinをフェロモン受容細胞に与えたところ、副嗅球から誘起脳波を測定できたことから、cAMP依存性経路を介した応答が中枢に伝達されることを確認した(Chem. Senses, 1996)。ヘビなどでは、フェロモンがcAMP濃度を変化させることが報告されていることから、爬虫類におけるフェロモン受容はcAMPを介して行われている可能性が考えられる。
著者
栗原 堅三 庄司 隆行 柏柳 誠 松岡 一郎 桂木 能久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

大豆由来のホスファチジン酸と牛乳由来のβラクトグロブリンからなるリポ蛋白質は、味細胞の微絨毛膜に結合し、苦味物質が受容サイトに結合することを妨害することにより、苦味を選択的に抑制することがわっかた。この苦味抑制剤を実用化するためには、安定性やコストの面で、蛋白質を使うことに問題があった。そこで、蛋白質を含まない苦味抑制剤の開発を試みた。ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホファチジルイノシトールなどに苦味抑制作用があったが、ホセファチジン酸の作用は、他のリン脂質よりはるかに強力であった。ホォスファチジン酸を苦味抑制剤として使用する場合、これを純品にする必要があるかどうかを検討した。ホスファチジン酸に他のリン脂質が共存した場合でも、その苦味抑制作用は妨害を受けなっかた。そこで、大豆レスチンから、ホスファチジン酸を高含量含む分画を作成し、苦味抑制効果を調べた。この結果、このレシチン分画は、各種の物質の苦味を十分抑制することがわかった。このレシチン分画を各種の薬物と混合し、苦味抑制効果を調べたところ、苦味を十分抑制することがわかった。また、このレシチン分画で、錠剤や顆粒剤をコートすると、苦味が効率的に抑制された。また、食品の苦味成分に対する苦味抑制効果を調べた。蛋白質加水分解物のあるものは、機能性食品として注目されているが、一般に強い苦味がある。レスチン分画は、蛋白質加水分解物の苦味を抑制した。ポリフェノールは、活性酸素の作用を抑制する物質として注目を集めているが、非常に強い渋味と苦味を有する。レシチン分画は、ポリフェノールの渋味と苦味を抑制することがわかった。チョコレートには、ポリフェノールが多量に含まれているが、その渋味と苦味のため、従来はこの含量を減少させていた。レシチン分画をチョコレートに入れると、ポリフェノールを高含量含んでいても、良好な味になる。