著者
窪寺 恒己 天野 雅男 森 恭一 青木 かがり 篠原 現人 西海 功 大泉 宏 庄司 隆行
出版者
独立行政法人国立科学博物館
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010-04-01

中深層性大型イカ類に関しては、特殊水中ビデオカメラ・ライトを開発し深海の環境を乱すことなく、それらの行動生態を記録し生物量の推定を試みた。2011年には小笠原沖でNHKと共同して有人潜水艇から世界初となるダイオウイカの生態観察・撮影に成功した。一方マッコウクジラに関しては、加速度マルチロガーと超小型水中カメラロガーを直接取り付けることにより、潜水中の行動を3Dで捉えることに成功し、餌となる大型イカ類を追跡・捕獲する行動パターンを明らかにした。また、深海の腐肉食性ベントスの蝟集実験を行い、蝟集物質の科学的組成を解析するとともにベントス群集の時間的変遷を明らかにした。
著者
庄司 隆行
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.163-169, 2009-08

魚たちは、我々が体験することはもちろん想像することも難しい"味物質を鼻で嗅ぐ"という感覚機能を持っている。すなわち、魚類の嗅覚系は水中に溶けた味物質、なかでもアミノ酸を高感度で受容することができる。言うまでもなくアミノ酸類は味覚系でも受容されるから、アミノ酸は魚類にとって味でもあり匂いでもあることになる。しかし、味覚と嗅覚とでは受容器はもちろん中枢への投射経路も全く異なるから、その機能も別々のものであると考えられる。本稿では、嗅覚系のアミノ酸受容が魚たちにとってどのような役割を持つのかを具体例をあげて解説する。
著者
庄司 隆行
出版者
日本味と匂学会
雑誌
日本味と匂学会誌 (ISSN:13404806)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.169-178, 1999-08
被引用文献数
3

魚類の味覚器は多種類のアミノ酸をきわめて低濃度から受容する。また、陸生動物とは異なり、魚類の嗅覚器はアミノ酸に対してきわめて高い感受性を持っている。アミノ酸は魚類化学感覚器にとっての最大の刺激物質であると言える。このアミノ酸受容は、餌を探したりその餌を摂取するかどうかを判断したりする食行動だけでなく、逃避行動や生殖行動においても重要な役割を果たしていることがわかっている。さらに、アミノ酸はサケが母川へ帰る際のニオイの指標になっている可能性もあることがわかった。
著者
庄司 隆行
出版者
東海大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2003

深海域に棲息する動物のうち、無顎類、板鰓類、硬骨魚類、甲殻類からそれぞれ1種ずつを選び、各嗅覚系の形態比較と行動実験を行った。試魚として、静岡市興津沖水深300-600mにおいて捕獲したヌタウナギEptatretus burgeri、ホラアナゴSynaphobranchus affinisおよび熊野灘(水深300-400m)にて捕獲したホソフジクジラEtmopterus brachyurus、オオグソクムシBathynomus doederleiniを用いた。形態観察として嗅板表面を走査型電子顕微鏡により観察し、摘出した脳、鼻腔組織の嗅神経および嗅索に脂溶性蛍光色素(DiI)を浸透させ嗅房、嗅球、終脳における嗅神経の走行を蛍光顕微鏡にて観察した。ホラアナゴ嗅神経束は他魚種よりも太く、嗅球に入力する前の段階で2本以上の分枝を形成していた。これは、嗅細胞数の多さと嗅球でのニオイ情報の処理能力の高さを示している。ホソフジクジラも同様にきわめて大きな嗅房、発達した嗅球を持っており、ニオイ情報の収集、処理能力は高いと推測された。ヌタウナギの鼻腔は7枚の大きな嗅板からなる嗅房を通り食道に連絡していた。嗅球は終脳と比較して大きく、一方延髄の味覚中枢は未発達であった。また、ヌタウナギとオオグソクムシを用いてニオイ刺激に対する行動観察を行った。特にオオグソクムシの実験では、動きのトラッキングを暗黒下において容易にしかも精密に行なうため、体の位置と向きを示す赤外線ダイオードフラッシャーおよび記録・解析用ソフトウェア(Windowsベース)を開発した。これにより、様々なニオイに対する深海生物の嗅覚行動の観察が容易にできるようになった。ヌタウナギ、オオグソクムシともにきわめて鋭敏な嗅覚感度を持つことも明らかとなった。
著者
栗原 堅三 庄司 隆行 柏柳 誠 松岡 一郎 桂木 能久
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

大豆由来のホスファチジン酸と牛乳由来のβラクトグロブリンからなるリポ蛋白質は、味細胞の微絨毛膜に結合し、苦味物質が受容サイトに結合することを妨害することにより、苦味を選択的に抑制することがわっかた。この苦味抑制剤を実用化するためには、安定性やコストの面で、蛋白質を使うことに問題があった。そこで、蛋白質を含まない苦味抑制剤の開発を試みた。ホスファチジン酸、ホスファチジルセリン、ホファチジルイノシトールなどに苦味抑制作用があったが、ホセファチジン酸の作用は、他のリン脂質よりはるかに強力であった。ホォスファチジン酸を苦味抑制剤として使用する場合、これを純品にする必要があるかどうかを検討した。ホスファチジン酸に他のリン脂質が共存した場合でも、その苦味抑制作用は妨害を受けなっかた。そこで、大豆レスチンから、ホスファチジン酸を高含量含む分画を作成し、苦味抑制効果を調べた。この結果、このレシチン分画は、各種の物質の苦味を十分抑制することがわかった。このレシチン分画を各種の薬物と混合し、苦味抑制効果を調べたところ、苦味を十分抑制することがわかった。また、このレシチン分画で、錠剤や顆粒剤をコートすると、苦味が効率的に抑制された。また、食品の苦味成分に対する苦味抑制効果を調べた。蛋白質加水分解物のあるものは、機能性食品として注目されているが、一般に強い苦味がある。レスチン分画は、蛋白質加水分解物の苦味を抑制した。ポリフェノールは、活性酸素の作用を抑制する物質として注目を集めているが、非常に強い渋味と苦味を有する。レシチン分画は、ポリフェノールの渋味と苦味を抑制することがわかった。チョコレートには、ポリフェノールが多量に含まれているが、その渋味と苦味のため、従来はこの含量を減少させていた。レシチン分画をチョコレートに入れると、ポリフェノールを高含量含んでいても、良好な味になる。