著者
斎藤 貴 杉本 大貴 中村 凌 村田 峻輔 小野 玲 岡村 篤夫 井上 順一朗 牧浦 大祐 土井 久容 向原 徹 松岡 広 薬師神 公和 澤 龍一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2015, 2016

【はじめに,目的】近年がん医療においては疾病の早期発見,治療法の発展により生存率が向上している一方で,治療による副作用が問題視されている。化学療法の副作用の1つに化学療法誘発性末梢神経障害(chemotherapy-induced peripheral neuropathy,以下,CIPN)があり,その好発部位から「手袋・靴下型」と称されている。リハビリテーション実施場面においても,化学療法実施中の患者にはしばしば見られる症状である。CIPNは多様な感覚器の障害様式を呈するが,その評価は医療者による主観的な評価が中心であり,どのような感覚器の障害様式なのかはについて詳細な評価はなされていない。本研究の目的は感覚検査の客観的評価ツール用い,CIPNを縦断的に調査し,その障害様式を明らかにすることである。【方法】本研究は前向きコホート研究であり,任意の化学療法実施日をベースラインとし,フォローアップ期間は3ヶ月とした。本研究の対象者は,2015年2月から7月までの期間内に,神戸大学医学部附属病院の通院治療室にて,副作用としてCIPNが出現する化学療法を受けているがん患者35名であり,脊椎疾患を有する者,フォロー不可能であった者,欠損値があった者を除く18名(63.7±11.3歳,女性11名)を解析対象者とした。CIPNの評価は下肢末端を評価部位とし,客観的評価として触覚検査,振動覚検査,主観的評価としてしびれについて検査を行った。触覚検査はモノフィラメント知覚テスターを用い,母趾指腹,母趾球,踵部,足首の四カ所の触覚を測定し,測定方法にはup and down methodを用いた。振動覚検査は音叉を用い,内果の振動覚を測定し,測定方法はtimed methodを用いた。しびれの主観的検査はVisual Analog Scale(以下,VAS)を用い前足部,足底部,足首の三カ所の主観的なしびれを評価した。測定はベースライン,フォローアップ時ともに化学療法実施日に行い,薬剤の投与前に上記評価を完了した。統計解析は対応のあるt検定およびWilcoxonの符号付順位検定を用い,それぞれの評価項目におけるベースライン時からフォローアップ時の値の変化を検討した。【結果】触覚検査では踵部のみに有意な変化がみられ,フォローアップ後に有意に触覚が低下していた(<i>p</i><0.01)。振動覚検査においてはフォロー後に有意に増悪がみられた(<i>p</i><0.01)。下肢末端のしびれの主観的検査においては前足部,足底部,足首部ともにフォロー後に有意差は見られなかった。【結論】三ヶ月のフォローアップ調査により,CIPNの障害様式は主に踵部の触覚低下および振動覚の低下であることが明らかとなった。一方で,主観的なしびれは変化がなく,客観的評価ツールで足底した触覚や振動覚の方が鋭敏に神経障害を反映しており,患者が障害を認知する前から感覚障害が生じていることが示唆された。
著者
末本 誠 朴木 佳緒留 伊藤 篤 松岡 広路 津田 英二
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

<目的>本研究は、現代GPプログラムとして取り組んだ「アクションリサーチ型ESDの開発と推進」で得た成果(平成)19~21年度)を、日本国内外に普及、交流するための実践・研究的な方法の探求を課題にしている。<成果>(1)今年度は早稲田大学、東京農工大学等、日本国内でESDに取組む主要な大学を尋ね、ESD理解、カリキュラム、地域社会との関わり、ステークホルダーの役割などについての実地調査を行ったことにより、国内の主要な大学でのESDに関する具体的な取り組みの実態が把握された。また、神戸大学での取組みとの異同を議論することにより今後の実践研究的交流の基盤を構築することができた。(2)カナダモントリオール大学、同ケベック大学モントリオール校を尋ね、同上の点についての調査を行ったことにより、同上の成果を得たほか、国際的なESD研究を交流するための関係を構築した。(3)これらの調査活動で収集した資料を、データベース化した。これらは、その存在をweb上で公開し広く活用されるようにする予定である。(5)22年3月にフランスからライフヒストリーの研究者を招いて、ESDの国際シンポジウムを開催した。これにより価値観や生活態度を変えるというESDの課題に応える、具体的な教育方法論を開発する理論的な根拠を深めることができた。(6)神戸大学を会場として開かれた、平成22年9月の日本社会教育学会の研究大会において、「会場校企画」として「持続可能な社会作りと社会教育の再構成」をテーマにしたシンポジウムを開催した。これにより、大学でのESD実践・研究を社会教育の領域で展開する可能性が明らかにすることができた。