著者
寺本 咲子 庭川 要 村岡 研太郎 小川 将宏 國枝 太史 松嵜 理登 山下 亮 松井 隆史 山口 雷蔵 鳶巣 賢一
出版者
THE JAPANESE UROLOGICAL ASSOCIATION
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.102, no.5, pp.696-700, 2011-09-20
参考文献数
9
被引用文献数
3

患者は55歳男性.肉眼的血尿,右腰痛を契機に発見された右腎癌でリンパ節・骨・肺転移を認めた(cT1bN1M1).経腹膜的右腎摘除術を施行した.病理組織診断でCD10,P504S,CK19陽性でありTubulocystic carcinoma(pT3a)と診断した.転移巣に対する治療でSunitinibを投与し,CTで腫瘍縮小(部分奏功;PR)を認めた.術後12カ月現在増悪なく治療継続中である.Tubulocystic carcinomaはlow-grade collecting duct carcinomaとAminらが紹介したものに相当し,2004年のWorld Health Organization(WHO)分類に含まれていないまれな腫瘍である.組織学的には,腫瘍細胞は立方体から扁平の形状で嚢胞を取り囲んでおり,大きな核小体と好酸性か両染性の細胞質を有し,軽度の細胞異型があり,その中にHobnail型細胞も認められる.免疫組織学的には,Tubulocystic carcinomaは近位尿細管マーカー(CD10,P504S)と遠位尿細管マーカー/集合管マーカー(Parvalbumin,CK19)の両方に染色されるのが特徴である.この腫瘍は増殖性に乏しい病理組織所見を呈するが,転移・浸潤しやすい性質を持つとされる.転移に対する治療法は確立されていないが,本症例ではSunitinibが有効であった.<br>
著者
仲野 正博 松嵜 理登 成田 伸太郎 渡辺 淳一 森川 弘史 村田 浩克 小田 裕之 小松 秀樹
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.11-16, 2005-01-20
被引用文献数
1 3

(目的)恥骨後式前立腺全摘除術における硬膜外麻酔併用腰椎麻酔(硬麻併用腰椎麻酔)の有用性を検討した.(対象と方法)2003年7月より2004年2月までの間に硬麻併用腰椎麻酔下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例を対象とした. 2002年4月より同年12月までの間に硬膜外麻酔併用全身麻酔(硬麻併用全身麻酔)下恥骨後式前立腺全摘除術を施行した連続した20例と比較した.純粋な麻酔による影響のみを検討するために,術中合併症のあった症例が含まれない様に期間を設定した.手術は全例,同一術者が行った.(結果)出血量は,硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に少なかった(p=0.024).術後平均飲水開始日は,硬麻併用腰椎麻酔下群は0.4日,硬麻併用全身麻酔下群は1.1日であった(p<0.0001).術後平均食事開始日は,硬麻併用腰椎麻酔下群はO.7日,硬麻併用全身麻酔下群は1.5日であった(p<0.0001).術中平均血圧の最高値は硬麻併用腰椎麻酔下群の方が有意に低かった(p=0.002).(結論)硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は,硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘除術と比較して術中の出血量が少なく,血圧変動が小さかった.また,術後腸蠕動の回復が早かった.硬麻併用腰椎麻酔下前立腺全摘除術は,術中出血量の減少と術後早期回復が期待でき,全身麻酔関連の合併症が予防できることなどから硬麻併用全身麻酔下前立腺全摘徐術より利点が多いと考える.
著者
安藤 研 布施 秀樹 島崎 淳 村上 信乃 松嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.79, no.8, pp.1399-1405, 1988-08-20
被引用文献数
3 8

前立腺癌は経過中に組織学的分化度を変化し,再燃後には,低分化傾向がみられることを既に報告した(日泌尿会誌,74:989,1983).今回さらに症例を追加し,生検時と剖検時の病理組織像の比較を行なった.用いた37例は,全例癌死であり,いずれも内分泌療法が施行された.生検剖検問に取扱い規約による分化度の変化をみたものが9例,不変のものは28例であり,前者はすべて中分化型が低分化型となったもので,後者は中分化型12例,低分化型16例であった.低分化型で分化度の不変のものに内分泌療法無効例が多かった.生検剖検問で取扱い規約により不変とされた28例でもGleason scoreでみると,その40%は剖検時scoreが大となっていた.したがって内分泌療法後に再燃したものは,治療前に比べて,低分化傾向になるとみなせた.剖検時,転移部位の分化度は,多くは,原発巣と同じ分化度であった.
著者
佐藤 信夫 角谷 秀典 井坂 茂夫 島崎 淳 松嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1263-1269, 1992-08-20
被引用文献数
5 1

1975年から1988年の間に千葉大学医学部泌尿器科でTURを施行した表在性膀胱移行上皮癌(Ta,T1かつG1,G2)159例を対象として,進展を予測する因子につき検討した. 臨床所見:年齢,性,主訴:症状発現から受診までの期間,検査所見:ESR,CRP,貧血,内視鏡所見:腫瘍の位置,数,大きさ,形態,病理組織学的所見:異型度,深達度,尿細胞診,ABH血液型抗原(ABH),Thomsen-Friedenreich抗原(T-ag)につき検討した.進展と有意に相関したのは高年齢,多発,広基性腫瘍,G2,T1,陽性尿細胞診,ABH陰性,T-ag異常であった. 多変量解析法で分析すると,進展に影響をおよぼす因子の重要度はABH,深達度,T-ag,形態,異型度,年齢,数の順であり,ABH,深達度,T-ag,形態の4因子が有意に高かった.さらにABH,T-agは他の臨床病理学的因子と相関せず,表在性膀胱腫瘍の進展の予知因子として有用であると考えられた.