著者
高林 克日己 末石 真 冨岡 玖夫 今泉 照恵 吉田 尚 杉山 隆夫 木村 亮 井坂 茂夫 島崎 淳
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.74, no.11, pp.1579-1585, 1985-11-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
14
被引用文献数
3 10

全身性エリテマート一デス(SLE)にまれながら間質性膀胱炎を合併することが最近示され,これはlupus cystitis (ループス膀胱炎)と呼ばれている.今までにこのループス膀胱炎の本邦におけるまとまつた報告はなかつたが,われわれは最近4例のループス膀胱炎と思われる症例を経験した.いずれも中年女性で,頻尿などの膀胱症状を訴えて発症し,亜急性に進行して水腎症に至つている.これらの患者はまたいずれにも悪心・嘔吐・下痢などの消化器症状を合併していた.うち1例はステロイド療法・腎瘻造設術後も腸管運動の低下からイレウスを繰り返し,消化管出血により死亡した. 1例は腎瘻造設後にネフローゼ症候群が出現しSLEと診断された.他の2例はループス膀胱炎と診断後,ステロイド療法により膀胱・消化器症状の改善をみた.本疾患はまれではあるが,膀胱の他消化器症状を合併するなど特有の臨床像をもつたSLEのsubgroupの一つと考えられる.しかし既知の特定の自己抗体との相関は認められなかつた.また1例で消化管粘膜下の血管にimmune depositsを認めたが,膀胱では明らかな血管炎はみられなかつた.この疾患は初期には他覚的所見に乏しく,診断が遅れる傾向があるが,早期治療により症状の改善が期待できることから,膠原病患者の膀胱症状に遭遇した際には,念頭におかなければならない疾患と考えられる.
著者
鈴木 啓悦 山西 友典 井坂 茂夫 安田 耕作 島崎 淳 更科 広実
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.337-341, 1992-03

A 20-year-old man was admitted on February 2, 1990 with the chief complaint of pollakisuria, miction pain and macrohematuria. Urinalysis revealed numerous leukocytes and Enterobacter was identified by urine culture. Cystoscopy revealed an edematous region. Contrast film of small intestines demonstrated vesicoileal fistula. Judging from these and the radiographic findings, we made the diagnosis of vesicoileal fistula with Crohn's disease. After medical therapy between February 22 and May 25, urinalysis became normal and we assumed that the fistula had closed. Now, it is about a year since the therapy began, the patient remains well, without urinary and enteric symptoms. Cystoscopy and urinalysis did not reveal recurrence of the fistula. Despite previous reports that vesicoenteric fistulas complicating Crohn's disease require surgical treatment, this case responded to medication, and required no surgical treatment. This case is a reminder of the importance of the principle of therapy.
著者
五十嵐 辰男 村上 信乃 富岡 進 阿部 功一 井坂 茂夫 岡野 達弛 島崎 淳松 嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.80, no.9, pp.1310-1315, 1989-09-20
被引用文献数
7 1

1978年1月より,1988年7月までに,千葉大学および旭中央病院泌尿器科で腎摘除術を施行した151例を集計した.偶然に発見された腎癌(「偶然発見癌」)は41例であり,受診動機としては他疾患治療中が28例,人間ドックが10例,集団検診3例であった.このうち,34例(82.9%)が超音波断層法で,4例がCTスキャンで,3例が排泄性腎盂造影で最初に発見された.「偶然発見癌」の腎癌全体に占める割合は,年次を経るにつれて有意に増加した(p<0.001).初診時または発見時,顕微鏡的血尿を認めたのは8例(19.5%)に過ぎず,スクリーニングとして検尿のみでは不十分で,超音波断層法も必要であると思われた.なんらかの症候を有する「症候癌」は102例,転移巣が最初に診断される「オカルト癌」は8例であった.「偶然発見癌」はこれらに比し有意にlow stage(p<0,001),low grade(p<0.001)であった.さらに,pT1〜2b,または長径10cm以下の症例において「偶然発見癌」の生存率は「症候癌」より良好であり(p<0.05),このような症例では腫瘍の早期発見による治療効果があったと思われた.
著者
佐藤 信夫 角谷 秀典 井坂 茂夫 島崎 淳 松嵜 理
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.8, pp.1263-1269, 1992-08-20
被引用文献数
5 1

1975年から1988年の間に千葉大学医学部泌尿器科でTURを施行した表在性膀胱移行上皮癌(Ta,T1かつG1,G2)159例を対象として,進展を予測する因子につき検討した. 臨床所見:年齢,性,主訴:症状発現から受診までの期間,検査所見:ESR,CRP,貧血,内視鏡所見:腫瘍の位置,数,大きさ,形態,病理組織学的所見:異型度,深達度,尿細胞診,ABH血液型抗原(ABH),Thomsen-Friedenreich抗原(T-ag)につき検討した.進展と有意に相関したのは高年齢,多発,広基性腫瘍,G2,T1,陽性尿細胞診,ABH陰性,T-ag異常であった. 多変量解析法で分析すると,進展に影響をおよぼす因子の重要度はABH,深達度,T-ag,形態,異型度,年齢,数の順であり,ABH,深達度,T-ag,形態の4因子が有意に高かった.さらにABH,T-agは他の臨床病理学的因子と相関せず,表在性膀胱腫瘍の進展の予知因子として有用であると考えられた.
著者
井坂 茂夫 岡野 達弥 島崎 淳 村上 信之 原 徹 片海 七郎 吉田 豊彦 長山 忠男 和田 隆弘 北村 温 香村 衡一 石川 堯夫 外間 孝夫 座間 秀一 佐藤 信夫 小寺 重行 川地 義雄 並木 徳重郎 梶本 伸一 伊藤 晴夫 皆川 秀夫 高岸 秀俊 村山 直人 真鍋 溥
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.83, no.10, pp.1662-1667, 1992-10-20
被引用文献数
4

日本において近年腎細胞癌患者数が増加してきていることが言われているが,人口動態の変化をもとにした発症率に関して最近の実情を報告したものはほとんどない.人口約500万人,手術設備のある25の泌尿器科を有する千葉県において,過去10年間の腎細胞癌患者の実態を調査した.郵送アンケート方式にて組織学的に確認された症例について検討した.調査項目は,性別,年齢,住所,職業,症状,発見のきっかけとなった検査法,手術日,腫瘍径,臨床病期などであった.22の施設から回答が得られ,1980年から1989年までの間に千葉県在住で560例が報告された.年間10万人当たりの発症率は10年間で0.32から2.07へと増加した.小さくて無症状かつlow stageの癌が急激に増加しつつあることが判明したが,転移病期のものの減少は認められなかった.腎細胞癌増加の主体は診断方法の発達による早期診断症例の増加であると考えられたが,なんらかの発癌因子が関与している可能性も否定できなかった.