著者
松本 雅記
出版者
九州大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

従来の質量分析計を用いたプロテオミクスではタンパク質発現量の広大なダイナミックレンジのため、複雑な試料中の微量タンパク質の検出は困難であった。本研究では、この問題を解決するために、質量分析計による特定タンパク質検出法であるMRM法とヒトcDNAライブラリーを元にした組換えタンパク質を利用してあらゆるヒトタンパク質の絶対定量を可能とする新規タンパク質定量解析プラットフォームの構築に成功した。本システムを用いて、従来検出が困難であった低発現タンパク質を含む多種類のタンパク質絶対量情報を取得することが可能であった。
著者
清水 邦義 中村 崇裕 大貫 宏一郎 松本 雅記
出版者
九州大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

霊芝キノコのゲノム編集について、霊芝特異的プロモーターの単離、ターミネーターの単離、霊芝ゲノム編集用ベクターの構築等の実験を行ってきた。その中で、ゲノム編集に用いるプロトプラストの遺伝子導入効率の低さと、遺伝子発現効率の低さは新規キノコ作成において、ボトルネックとなっていた。この状況に変化をもたらしたのは、刑部らのキノコゲノム編集に関する論文であった(Scientific Reports (2017)。これまで、ある一定の形質を有するプロトプラストを用いると効率が上がることが判明していた。よって我々は、霊芝プロトプラストを用いたゲノム編集には、菌糸体を用いた予備的実験の中で、細胞融合・ゲノム編集を効率的に行うためには扱い易いプロトプラストの採取が必須という結論に至り、セルソーターにより最適なプロトプラスト採取の条件を探索している。我々はこれまでに、霊芝子実体の有用成分のLC/MSを用いた網羅的解析技術を確立しており、新規の菌糸体の作成に成功すれば霊芝トリテルペノイドの数十種類を同時に同定できるシステムを構築している。また、我々はこれまでに、ゲノム編集に必要なプロモーター、ターゲット遺伝子(コーデイングシーケンス)、ターミネーター領域のDNAを霊芝特異的遺伝子としてPCR法により探索し、有望領域を決定した。ターゲット遺伝子としてP450遺伝子群のコーディング領域をゲノム編集している。但し、これらの遺伝子セットが実際に作動するかは未定であるのでキノコゲノム編集で使用された遺伝子も併せて探索している。
著者
北川 雅敏 松本 雅記
出版者
浜松医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

Mig-6はEGF受容体と結合しEGFシグナル伝達を阻害する蛋白質とされ、そのノックアウトマウスでは上皮系の癌が多発する。さらに数種のヒト癌で変異が報告されており、癌抑制遺伝子と考えられている。しかしながらMig-6のEGF受容体阻害のメカニズムとMig-6のリン酸化等の翻訳後修飾を介した制御機構については未知である。本研究では、Mig-6のリン酸化を解析した結果Chk1がMig-6キナーゼである事を見出した。さらにEGF刺激によりMig-6がリン酸化さり、それはChk1のノックダウンにより抑制された。また、EGF刺激によりChk1のS280のリン酸化はPI3K/Akt/S6Kの経路で起こる事がわかった。質量分析により、Mig-6のChk1による主なリン酸化部位はSer251である事、S251A変異体はEGFRの活性化を抑制する事を見出した。さらにEGFRの活性化と細胞増殖能はChk1のノックダウンにより抑制され、それはMig-6のノックダウンで回復した。以上よりChk1はMig-6のS251をリン酸化してMig-6活性を抑制する、このよう二Chk1はEGFシグナリングの正の制御因子として機能する事は、Chk1の新機能である。