著者
松永 亮 渡辺 徹 田中 敏春
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.175-178, 2020-06-30 (Released:2020-06-30)
参考文献数
9

傷病者は20代の女性。自ら左上肢を切ったようだと家族から救急要請された。現場到着時,傷病者は自宅2階の廊下で倒れていた。初期評価で意識障害を認め,冷汗を認めないものの全身の皮膚は著明な蒼白であった。一見したところ左上肢に切創はなく,皮膚に血液の付着を認めるのみであった。家族の同意を得て傷病者の自室内を確認すると,ゴミ箱の中に血液が入った調理用計量カップと医療用注射針,さらにベッド上に駆血帯を確認した。傷病者の左上肢を詳細に観察すると左肘正中皮静脈に注射痕を確認したことから,傷病者自らが左上肢に医療用注射針を刺して失血させたものと考えられた。本症例では,傷病者と家族からの状況聴取が困難であったが,詳細な状況評価と全身観察を実施することで,自損行為の手段を把握することができた。本症例の自損行為の手段である瀉血は,SNS上で広く流布しており,今後も発生する可能性があるため十分な認識が必要である。
著者
高橋 将一 小松 邦彦 松永 亮一
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.59-61, 2001-05-15

子実の青臭み(豆臭さ、豆腐臭さ)発生に関与する酵素, リポキシゲナーゼL-1, L-2及びL-3の全てを欠失した大豆品種は, 飲用豆乳や豆乳を素材とするデザート類に対する加工適性が高いだけでなく、小麦粉、卵などの他の食品素材と一緒に用いた場合にでも、加工食品中の過酸化脂質の生成を低レベルに抑え、風味・食味に優れた大豆加工食品を得ることができるなど、従来の大豆にない優れた利用特性が認められる(西場ら 1993, 古田ら 1993, 須田ら 1993). これまでリポキシゲナーゼ欠失大豆として「ゆめゆたか(L-2, L-3欠)」(喜多村ら 1992)と「いちひめ(全欠)」(羽鹿ら 1997)が育成されているが, 両品種の栽培適地は南東北から北関東地域に限定される. 現在, 「いちひめ」は豆乳原料として栃木県のみで生産されているため, 不作になると, 当年度における実需者の必要量を満たすことができなくなるばかりか, 安定供給の不確実性が今後の需要拡大の大きな支障となっている. 安定供給を図ることが問題解決に重要であり, 暖地での栽培に適する品種育成が要望されてきた.
著者
松永 亮一 高橋 将一 小松 邦彦
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.67, pp.62-64, 2001-05-15

九州で栽培されている大豆品種は九州農業試験場で育成された良質多収品種である「フクユタ力」が3分の2以上を占め, 残りのほとんどは「フクユタカ」に放射線を照射して白目化した「むらゆたか」が栽培されている. 両品種とも子実の蛋白質含粒率が高く, 主に豆腐の原料として利用されており, 納豆の原料となる小粒品種の栽培はほとんどないため, 九州の納豆製造会社では国産の小粒納豆製品の原料として北海道産あるいは関東産を使用しており, 九州で栽培できる納豆用小粒大豆品種の育成に強い期待があった. この要望に応えるために, 九州農業試験場では新たに納豆用小粒大豆品種として「すずおとめ」を育成した. 本報告では, 「すずおとめ」の主要な栽培特性を明らかにするとともに, 「すずおとめ」を原料とした試作納豆の試食アンケートを一般の消費者を対象として実施することによって, 試作納豆の官能評価を得るだけでなく, 今後の納豆用品種育成に役立てるための納豆製品に対する消費者ニーズの調査を行った.
著者
馬場 彰子 鄭 紹輝 松永 亮一 井上 眞理 古屋 忠彦 福山 正隆
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物學會紀事 (ISSN:00111848)
巻号頁・発行日
vol.72, no.4, pp.384-389, 2003-12-05
被引用文献数
2

西南暖地向けに育成されたダイズ新品種サチユタカの生育特性を明らかにするため,フクユタカと比較しその乾物生産特性について調査を行った.両品種を2001年7月9日および2002年7月4日に播種し,生育,乾物生産,収量および収量構成要素を測定した.その結果,サチユタカはフクユタカに比べて開花期,成熟期ともに早く栄養成長量は小さかったが,収量には有意な差はなかったため,粒茎比が高くなった.葉面積指数(LAI),個体群成長速度(CGR),地上部全重,茎重については開花期まではサチユタカの方が高かったが,開花期以降サチユタカではあまり増加がみられず,最大値はフクユタカのほうが高かった.なお,両品種の光合成速度,純同化率(NAR)には差異はみられなかった.一方,莢実重は,サチユタカでは増加開始時期は早いが成長速度には両品種間に差はみられなかった.茎重は成熟期に近づくにつれて減少した.さらに,茎中の非構造性炭水化物含有率は開花期においては両品種に差がなかったが,成熟期に近づくにつれて大きく低下し,その低下率はサチユタカで65%,フクユタカで40%であった.これらのことから茎中に蓄積された炭水化物が子実肥大期に莢実に再転流されたことが考えられた.以上の結果から,栄養成長量の小さいサチユタカがフクユタカに匹敵する収量を得られたのは,開花までの成長速度がやや高く,栄養成長の停止が早いため栄養成長と生殖成長の間の同化産物の競合が弱く,さらに茎中の非構造性炭水化物の再転流が多いことで同化産物の利用効率が高まったためであると考えられた.