著者
種村 一識 松永 哲郎 山崎 英恵 李 子帆 城尾 恵里奈 足達 哲也 近藤 高史 津田 謹輔
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.113-121, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1 1

コーヒーの様々な生理機能が注目されているが,消化管への作用に関しては不明な点が多い。そこで,コーヒー摂取による胃運動および自律神経活動への作用を検討した。検査日0時から絶食した男性(21.3±0.3歳;常飲者12名,非常飲者12名)24名を対象に,コーヒー,カフェインレスコーヒーまたはお湯(260mL)をロールパン(285kcal)とともに摂取させるクロスオーバー試験を実施した。評価は胃電図解析および心拍変動解析により行い,胃電図は空腹時18分間と食後45分間,心拍変動は空腹時と食後35分後の各10分間測定した。コーヒー摂取でお湯と比べて食後10-20分の胃電図の正常波パワーが有意に高値を示した。また,コーヒー摂取時のみ自律神経活動指標値が有意に増加し,この効果はコーヒー常飲者(≧1cup/日)で顕著であった。本結果から,コーヒーは胃運動と自律神経活動を亢進させることが示唆された。
著者
脇坂 しおり 小橋 理代 菱川 美由紀 山本 百希奈 池田 雅子 坂根 直樹 松永 哲郎 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.297-304, 2009 (Released:2010-01-29)
参考文献数
29
被引用文献数
9 4

胃電図は, 腹部に装着した表面電極から経皮的に胃筋電活動を記録する非侵襲的な胃運動評価法である。本研究では, 胃電図を指標として朝食欠食と朝の胃運動の関連を検討するために, 朝食摂取習慣のある女性11名 (21.5±0.2歳) に, 1週間の朝食欠食および1週間の再摂食試験を連続して行った。各試験の前後に検査日を設け, 前夜から絶食した被験者の体組成, 空腹感と食欲 (Visual analog scaleによる) を測定し, 午前9時より胃電図と心電図を同時に記録した。得られた胃の電気信号を解析し, 1分間に約3回生じる正常波パワー (Normal power), 正常波パワー含有率 (% Normal power) およびその出現頻度 (Dominant frequency; DF) を定量した。心電図からは心臓自律神経活動を定量した。1週間の朝食欠食は, 有意ではないが% Normal powerとDFを低下させた。DFは欠食後から再摂食後にさらに低下した (p=0.074 versus baseline) 。朝食欠食後の空腹感スコア (r=0.55, p=0.077), 食欲スコア (r=0.60, p=0.051) と % Normal powerの相関には有意傾向が認められた。以上の結果より, 1週間の朝食欠食が習慣的に朝食を摂取している若年女性の胃運動を減弱させる傾向が認められたこと, および, 胃収縮運動の強さが空腹感や食欲の強さと関連している可能性が示唆された。
著者
脇坂 しおり 小橋 理代 菱川 美由紀 山本 百希奈 池田 雅子 坂根 直樹 松永 哲郎 森谷 敏夫 永井 成美
出版者
日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 : Nippon eiy◆U014D◆ shokury◆U014D◆ gakkaishi = Journal of Japanese Society of Nutrition and Food Science (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.297-304, 2009-12-10
参考文献数
29
被引用文献数
2 4

胃電図は, 腹部に装着した表面電極から経皮的に胃筋電活動を記録する非侵襲的な胃運動評価法である。本研究では, 胃電図を指標として朝食欠食と朝の胃運動の関連を検討するために, 朝食摂取習慣のある女性11名 (21.5&plusmn;0.2歳) に, 1週間の朝食欠食および1週間の再摂食試験を連続して行った。各試験の前後に検査日を設け, 前夜から絶食した被験者の体組成, 空腹感と食欲 (Visual analog scaleによる) を測定し, 午前9時より胃電図と心電図を同時に記録した。得られた胃の電気信号を解析し, 1分間に約3回生じる正常波パワー (Normal power), 正常波パワー含有率 (% Normal power) およびその出現頻度 (Dominant frequency; DF) を定量した。心電図からは心臓自律神経活動を定量した。1週間の朝食欠食は, 有意ではないが% Normal powerとDFを低下させた。DFは欠食後から再摂食後にさらに低下した (<I>p</I>=0.074 <I>versus</I> baseline) 。朝食欠食後の空腹感スコア (<I>r</I>=0.55, <I>p</I>=0.077), 食欲スコア (<I>r</I>=0.60, <I>p</I>=0.051) と % Normal powerの相関には有意傾向が認められた。以上の結果より, 1週間の朝食欠食が習慣的に朝食を摂取している若年女性の胃運動を減弱させる傾向が認められたこと, および, 胃収縮運動の強さが空腹感や食欲の強さと関連している可能性が示唆された。
著者
井田 智章 松永 哲郎 藤井 重元 澤 智裕 赤池 孝章
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.147, no.5, pp.278-284, 2016

感染や炎症に伴い生成される活性酸素(ROS)は,酸化ストレスをもたらす組織傷害因子となる一方,細胞内レドックスシグナルのメディエーターとして機能していることがわかってきた.著者らは,生体内でROSと一酸化窒素の二次メッセンジャーである親電子物質8-ニトロ-cGMPの代謝にcystathionine β-synthase(CBS),cystathionine γ-lyase(CSE)が深く関わることを報告した.しかしながら,その代謝機構については未だ不明な点が多く残っていた.そこで,8-ニトロ-cGMPを代謝する真の活性分子種の同定に向けて,質量分析装置(LC-MS/MS)を用いた詳細なメタボローム解析を行った.その結果,CBS,CSEはシスチンを基質にシステインのチオール基が過イオウ化(ポリスルフィド化)したシステインパースルフィド(Cys-S-SH)を効率よく生成することが示された.さらに,LC-MS/MSを用いて,細胞,組織における代謝物プロファイリングを行った結果,CBS,CSEに依存したCys-S-SHなどの多様な活性イオウ分子種の生成を認めた.特に,マウス脳組織においては,100 μMを超える高いレベルのグルタチオンパースルフィドの生成が示された.活性イオウ分子の機能について,抗酸化活性とレドックスシグナル制御機能に注目して解析した結果,高い過酸化水素消去活性と8-ニトロ-cGMP代謝活性を発揮することが明らかとなった.これらの結果より,CBS,CSEにより産生される真の代謝活性物質は,Cys-S-SHなどの活性イオウ分子種であり,これらはその高い求核性や還元活性を介して,レドックスシグナルの重要なエフェクター分子として機能することが示唆された.活性イオウ分子種によるレドックスシグナル制御機構の解明は,酸化ストレスが関わる疾患の新たな治療戦略や創薬開発につながることが期待される.