著者
森滝 望 井上 和生 山崎 英恵
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.133-139, 2018 (Released:2018-06-15)
参考文献数
22
被引用文献数
5 4

日本食の風味を支える出汁は, 心身への健康機能を有することが最近の研究により明らかにされてきているが, いずれの報告も長期摂取による効果に着目しており, 短期的な影響については知見が乏しい。本研究では, 出汁の単回摂取による効果を明らかにすることを目的とし, 鰹と昆布の合わせ出汁の摂取および香気の吸入が自律神経活動および精神的疲労に及ぼす影響について検討を行った。24名の健康で非喫煙のボランティアが本研究に参加した。被験者は, 9: 00に指定の朝食を摂取し, 10: 30—11: 30に実験を実施した。自律神経活動は心拍変動解析により評価し, 疲労の評価では, 一定の疲労負荷として単純な計算タスク (内田クレペリンテスト) を30分間課し, その前後でフリッカー試験を実施した。加えて, Visual Analogue Scale (VAS) を用い, 主観的な疲労度および試料に対する嗜好度を評価した。出汁の単回摂取では, 対照の水と比べて, 心拍数低下と副交感神経活動の一過性上昇が認められた。また, 出汁の香気吸入でも同様の効果がみられた。さらに, 出汁の単回摂取により, 計算タスク後のフリッカー値低下が抑制され, VASの結果より主観的な疲労度も軽減されていることが示された。これらの結果から, 出汁の摂取は副交感神経活動を上昇させる作用を介して, リラックスと抗疲労の効果を誘起する可能性が示唆され, その作用における香気成分の重要性が示された。
著者
種村 一識 松永 哲郎 山崎 英恵 李 子帆 城尾 恵里奈 足達 哲也 近藤 高史 津田 謹輔
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.113-121, 2012 (Released:2012-07-13)
参考文献数
25
被引用文献数
1 1 1

コーヒーの様々な生理機能が注目されているが,消化管への作用に関しては不明な点が多い。そこで,コーヒー摂取による胃運動および自律神経活動への作用を検討した。検査日0時から絶食した男性(21.3±0.3歳;常飲者12名,非常飲者12名)24名を対象に,コーヒー,カフェインレスコーヒーまたはお湯(260mL)をロールパン(285kcal)とともに摂取させるクロスオーバー試験を実施した。評価は胃電図解析および心拍変動解析により行い,胃電図は空腹時18分間と食後45分間,心拍変動は空腹時と食後35分後の各10分間測定した。コーヒー摂取でお湯と比べて食後10-20分の胃電図の正常波パワーが有意に高値を示した。また,コーヒー摂取時のみ自律神経活動指標値が有意に増加し,この効果はコーヒー常飲者(≧1cup/日)で顕著であった。本結果から,コーヒーは胃運動と自律神経活動を亢進させることが示唆された。
著者
森滝 望 井上 和生 山崎 英恵
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.133-139, 2018
被引用文献数
4

<p>日本食の風味を支える出汁は, 心身への健康機能を有することが最近の研究により明らかにされてきているが, いずれの報告も長期摂取による効果に着目しており, 短期的な影響については知見が乏しい。本研究では, 出汁の単回摂取による効果を明らかにすることを目的とし, 鰹と昆布の合わせ出汁の摂取および香気の吸入が自律神経活動および精神的疲労に及ぼす影響について検討を行った。24名の健康で非喫煙のボランティアが本研究に参加した。被験者は, 9: 00に指定の朝食を摂取し, 10: 30—11: 30に実験を実施した。自律神経活動は心拍変動解析により評価し, 疲労の評価では, 一定の疲労負荷として単純な計算タスク (内田クレペリンテスト) を30分間課し, その前後でフリッカー試験を実施した。加えて, Visual Analogue Scale (VAS) を用い, 主観的な疲労度および試料に対する嗜好度を評価した。出汁の単回摂取では, 対照の水と比べて, 心拍数低下と副交感神経活動の一過性上昇が認められた。また, 出汁の香気吸入でも同様の効果がみられた。さらに, 出汁の単回摂取により, 計算タスク後のフリッカー値低下が抑制され, VASの結果より主観的な疲労度も軽減されていることが示された。これらの結果から, 出汁の摂取は副交感神経活動を上昇させる作用を介して, リラックスと抗疲労の効果を誘起する可能性が示唆され, その作用における香気成分の重要性が示された。</p>
著者
斉藤 司 椎橋 裕子 明賀 博樹 原口 賢治 増田 唯 黒林 淑子 南木 昂 山崎 英恵 中村 元計 伏木 亨
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.11, pp.519-527, 2014-11-15 (Released:2014-12-10)
参考文献数
22
被引用文献数
5 7

かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物の香気分析を行った.GC-MS分析,AEDA法によって,重要香気成分を絞り込んだ結果,グアイアコール,5-メチルグアイアコール,2,6-ジメトキシフェノール,4-エチル-2,6-ジメトキシフェノール,2,6-ジメチルフェノール,4-プロピルグアイアコール,バニリン,フラネオール®,(2E,7Z) -trans-4,5-エポキシデカ-2,7-ジエナール,(4Z,7Z) -トリデカ-4,7-ジエナール(以下TDDとする.)の10成分が同定された.この中で(2E,7Z) -trans-4,5-エポキシデカ-2,7-ジエナールとTDDは,かつお節の香気成分としては未報告の成分であり,特にTDDは,食品の香気成分として初めて同定された成分であったため,かつお節の香りにどのような影響があるのか,官能評価を行った.官能評価に用いる用語は,かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物を用いて6種(くん液,木材,魚肉,金属,生臭い,カラメル)を選定した.かつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物中の定量値を用いて,TDD以外の重要香気成分9成分と,TDDを加えた10成分の匂い再構成液を作り,各風味項目ついて比較した.その結果,「木材」の項目がTDDの添加により,有意に増強された.このことから,TDDはかつお荒節超臨界二酸化炭素抽出物の香りを構成する新規重要香気成分であることが示された.さらに,料理人の官能評価によって,TDDを含むかつお節フレーバーは,かつおだしをより好ましい風味にさせる効果があることが示された.
著者
山崎 英恵 伏木 亨
出版者
養賢堂
巻号頁・発行日
vol.88, no.7, pp.695-699, 2013 (Released:2014-02-21)
著者
山崎 英恵
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.90-91, 2015-02-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

出汁(だし)は日本食の土台となる風味である。その芳醇な香りや豊かなうま味は,我々の食欲をそそる好ましい味わいである。一方で,欧米などでは昆布特有のオーシャン臭や鰹の魚臭さが敬遠されることも少なくない。おいしさの感覚は食に対する嗜好であり,食経験や生理的状態などが個々のおいしさを相対的に形づくっているが,絶対的なおいしさも存在する。本稿では,出汁のなかでも代表的な鰹だしを取り上げ,そのおいしさの構造について解説する。