著者
杉山 智美 斉藤 真理子 市川 智美 内山 けい子 熊谷 美智世 松葉佐 智子 工藤 裕子 小西 雅子 稲垣 順一 伊藤 隆 渋川 祥子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成24年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.155, 2012 (Released:2012-09-24)

【目的】近年、土鍋に対する関心が高まっている。その一方で、炊飯や冬期における鍋物のみといった限定的な活用をする消費者も少なくない。土鍋と一般的に使用されている金属鍋では材質や形状が異なり、土鍋独自の特性を有することが予測される。そこで、土鍋のさらなる活用を目的とし、煮物・蒸し物調理における土鍋の加熱調理特性について検討を行った。 【方法】市販されている一般的な土鍋と金属鍋を用い、加熱条件(火力および加熱時間)を同じとし、煮物・蒸し物調理における加熱過程および調理物の仕上がりの比較を行なった。加熱過程は、耐熱内視鏡カメラによる鍋内の煮汁等の観察、サーマルカメラによる遠赤外線量の測定および鍋内部・食材中心部の温度計測を行なった。調理物の仕上がりについては、テクスチャー(煮くずれ、硬さ)および味(調味液の浸透度合い、グルタミン酸量)を機器測定するとともに、官能評価を実施した。 【結果】加熱過程において、金属鍋では煮汁中に不規則に大きな泡が発生したが、土鍋では鍋表面の突起等が沸騰のきっかけとなる規則正しい細かい泡が観察された。加熱時の遠赤外線量は、土鍋のほうが多く、本体および蓋からの放出が見られた。食材の中心部温度は、土鍋では金属鍋に比べ温度上昇が遅く、酵素活性が高い温度帯をゆっくり通過した。金属鍋では消火直後から鍋内部温度が低下したが、土鍋では一定時間温度上昇が継続し高温を維持した。その後の温度低下も緩やかだった。調理物の仕上がりについては、土鍋では煮くずれが少なく、硬さは軟らかい傾向が見られた。また、調味液の浸透度合いが高く、グルタミン酸量も多かった。以上の結果から、煮物・蒸し物調理における土鍋の優位性が示唆された。
著者
松葉佐 智子 甲野 祥子 鍵屋 慎一
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.28, 2016

【目的・概要】揚げ物はカロリーが高く、揚げ油の後始末が面倒という印象を持たれおり、家庭で揚げ物を作る頻度は減少傾向にある。一方で揚げ物が好きという人の割合は7割弱という調査結果があるため、実状は揚げ物に対する嗜好は高いと考えられる。本研究では家庭で行っている揚げ方の違い(油量の違い;深油揚げ、浅油揚げ、ノンフライ)による脂質含有量を測定するとともに食味官能評価を行った(実験1)。また揚げ物は温め直して食する機会も多いため、家庭で良く用いられる、電子レンジ、オーブントースターで温め直した揚げ物の食味官能試験を行い、揚げたての状態とのおいしさの変化を明らかにした(実験2)。<br>&nbsp;【結果】(実験1:揚げ方)食材全体が油に浸かる油量で揚げる方法(深油揚げ)、1cm程度の深さの油量で裏返しながら揚げる方法(浅油揚げ)、油をほとんど使わないノンフライの3種類の揚げ方で調理した鶏むね肉のから揚げを比較したところ、深油揚げよりも浅油揚げのから揚げの方が1個当たりの脂質含有量が有意に高かった。また、ノンフライでは深油揚げ、浅油揚げのどちらの揚げ方と比較しても有意に少なく、約半分程度であった。一方、食味官能試験においては深油揚げ、浅油揚げの間に差は見られなかったが、ノンフライよりも外観、味ともに有意に評価が高く、総合評価で「おいしい」という結果が得られた。(実験2:温め直し)揚げてから6時間経過した鶏むね肉のフライを電子レンジ、およびオーブントースターで温め直したもの、および揚げたてのものについて食味官能試験を行った。その結果、総合評価ではオーブントースターと揚げたての間に有意な差は見られなかったものの、評価項目中の「肉のジューシーさ」、「肉のやわらかさ」において揚げたての方が有意に高い評価が得られた。