著者
近藤 夕騎 宮田 一弘 板東 杏太 中村 拓也 原 貴敏 髙橋 祐二
出版者
一般社団法人 日本神経理学療法学会
雑誌
神経理学療法学 (ISSN:27580458)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.24-34, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
30

【目的】脊髄小脳失調症(spinocerebellar ataxia: 以下、SCA)患者個々のバランス能力を評価するために、Balance Evaluation Systems Test(以下、BESTest)が使用されることがある。近年、理学療法の優先順位を明確にできるKeyformが注目されている。Keyformは評価指標における項目毎の難易度を数値化および序列化することで、難易度を可視化することができる。そこで本研究では、SCA患者におけるBESTest各セクションのKeyformを開発することを目的とした。【方法】SCA患者述べ81名を対象とし、BESTestを評価した。一次元性および内的信頼性を確認し、Rasch分析にてBESTest各セクションの項目別適合度指標と難易度を求めたのち、Keyformを作図した。【結果】Section IおよびIIは一次元性を確認できず、内的信頼性はSection V以外で優れた信頼性を得られた。また、2項目の適合度が不良であったため、一次元性を確認できなかったSectionの二つと適合度が不良であった2項目を解析から除外したうえでKeyformを開発した。【結論】SCA患者を対象として開発した本Keyformは、BESTestにおけるバランス課題の難易度を可視化できることから、個々のSCA患者に対して理学療法の目標設定と治療計画を適切に行う上で、利用価値のあるツールになると考えている。
著者
近藤 夕騎 板東 杏太 有明 陽佑 勝田 若奈 小林 庸子 早乙女 貴子 髙橋 祐二
出版者
日本神経治療学会
雑誌
神経治療学 (ISSN:09168443)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.628-632, 2018 (Released:2019-05-15)
参考文献数
18

〔目的〕脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration;SCD)患者に対する短期集中バランストレーニング介入が患者のバランス機能に及ぼす効果についてBalance Evaluation Systems Test(BESTest)を用いて検討した.〔方法〕Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)歩行項目3点以下のSCD患者16名を対象とした.理学療法で1日2時間のバランストレーニング,作業療法または言語療法を1時間の計3時間を週5回実施する4週間の入院プログラムを実施し,入院1ヶ月前,プログラム開始時,プログラム終了時,退院1ヶ月後にSARA,BESTestを評価した.〔結果〕介入前後でBESTestの総得点,下位項目のsectionIII(予測的姿勢制御),sectionIV(反応的姿勢制御),sectionVI(歩行安定性),フォローアップで総得点,sectionIIIの得点が有意に改善していた.〔結論〕歩行可能なSCD患者では,BESTestを用いた評価により,課題となるバランス要素を抽出できた.またバランストレーニングの介入効果をBESTestの総得点,sectionIII,sectionIV,sectionVIで鋭敏に捉えられる可能性が示唆された.
著者
平澤 小百合 高田 将輝 仁田 裕也 板東 杏太 尾﨑 充代 高木 賢一 吉岡 聖広 髙田 侑季 藤井 瞬 佐藤 央一 丸笹 始信 勝浦 智也 鶯 春夫
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.B3O1078-B3O1078, 2010

【目的】15番染色体異常が原因とされるプラダー・ウィリー症候群(以下PWS)の特徴は運動、神経、精神症状等と多岐にわたるが、特に満腹中枢機能不全からなる過食による肥満や感情コントロール困難は思春期以降の問題となりやすく、確立した治療法のない現状では日常生活管理が不可欠である。今回PWSを基礎疾患とした男性が過食と感情爆発からなる不適切行動による悪循環で推定体重160kg以上となり、結果、低換気症候群・低酸素脳症を発症し寝たきり状態となった症例を担当した。入院時対応に難渋した症例に対し行動分析学的介入により日常生活動作(以下ADL)向上がみられ在宅生活へとつながった経験をしたので若干の知見を加え報告する。<BR>【方法】対象は25歳男性、診断名はPWS・低換気症候群・低酸素脳症、入院時評価として身長141cm・体重(推定)160kg以上、肥満度4(日本肥満学会より)、Functional Independence Measure (以下FIM)36点/126点、知能検査IQ41である。<BR>経過はA病院にて2歳頃にPWSと診断。5歳頃より体重増加し減量を目的とした数回の入退院後、B病院に通院し治療を続けていた。H20年頃より家で閉じこもりとなり臥床時間が多くなった。その間も体重は増加し同年10月意識低下にて救急でC病院搬送。入院希望するも肥満以外に問題ないとの説明で入院不可、B病院でも同様の対応のためC病院から緊急に当院相談。救急から約9時間後に泣き叫ぶ等の興奮状態で入院した。翌日より理学療法開始。訪室するも家族から理学療法に対し拒否的発言がみられ、患者も顔色不良で右側臥位のまま担当理学療法士の様子を伺っている状態。その場で運動の必要性を説明し苦痛を与えないことを約束した上で右側臥位のまま全身調整訓練を施行した。なお、気道圧迫により仰臥位は困難だが、入院2日前まで食事と排泄動作はほぼ自立していたとの家族情報から起立・移乗動作に必要な筋力は維持していると判断した。また脂肪による気道圧迫があるものの酸素2~3ℓ管理下ではSPO<SUB>2</SUB>96%前後と安定していた。<BR>今回の問題点として、本症例の自信喪失感・自己否定感等があると共に他者からの禁止言葉や否定語などで自分の思うようにならない時や注目・関心を自分に向けようとした時に奇声やパニック・酸素チューブを引きちぎる・服を破る等の不適切行動や過食に走る傾向があると思われたため、不適切行動の修正と動作能力改善を目的に行動分析学的介入を試みた。研究デザインにはシングルケースデザインを使用し、理学療法処方日から6日間をベースラインと設定、その後は基準変更デザインより目標行動を移行した。具体的には不適切行動には過度に注目しないよう強化随伴性の消去と同時に動作や言動に適切な変化がみられた直後に賞讃し、その行動が将来生起しやすいよう好子出現による強化を行いその効果を不適切行動の有無や動作能力、FIMにて確認した。その他接する機会の多いスタッフには関わる際の配慮として説明した。また、摂取カロリーは1200kcal/日で理学療法はストレッチやADL訓練を中心に施行し、リスク管理は自覚症状やバイタルサイン等で確認した。<BR>【説明と同意】本症例・家族には今回発表の趣旨及び内容を説明し書面にて同意を得た。<BR>【結果】介入前に毎日みられた不適切行動は、介入後週1回程度まで減少、動作能力も徐々に向上し、介入後3週目寝返り動作自立、5週目平行棒内立位可能、8週目約5m独歩可能となった。また入院当初みられなかった在宅復帰の希望が本人・家族からあり15週目に退院した。体重は当初立位不可等により途中からの計測となるが、7週目146.9kg、退院時は140.7kgと約8週間で7kg減少した。FIMも退院時は68点と向上がみられた。退院後は週2回の訪問リハビリテーションで対応し、退院後約4ヶ月で体重136kg台に減少、FIMも101点と大幅な向上がみられた。日中は酸素なしの活動も可能となっている。<BR>【考察】今回、ガストらが『行動を減らす手続きの選択は侵襲性が少なく、かつ効果的なものを選択されるべきである』と述べているように機能的な代替行動強化に着目し理学療法を進めた。また適切行動の強化が頻繁に得られその行動が自然強化子により維持されるよう配慮し内発的動機付けに変化がみられたことで著明な動作能力の向上が得られたと考えられる。その他、入院中に習得したパソコンによるメール交換が可能となり『食』のみに関心が集中することなく安定した生活が得られていると考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】症例の置かれている状況を『個人攻撃の罠』に陥ることなく行動と環境の関係から検証し問題解決する行動分析学的方法は理学療法を円滑に進めていく上で有効かつ有用であると考えられる。
著者
加藤 太郎 板東 杏太 有明 陽佑 勝田 若奈 近藤 夕騎 小笠原 悠 西田 大輔 髙橋 祐二 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.326-332, 2021-03-18 (Released:2021-07-03)
参考文献数
18

目的:脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)に対する短期集中リハビリテーション治療(SCD短期集中リハビリテーション)の効果が,先行研究により示されている.しかし,SCD短期集中リハビリテーションの効果検証は,Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)の総得点により報告されており,SARAの下位項目による詳細な検証はなされていない.本研究は,歩行可能なSCD患者の運動失調に対するSCD短期集中リハビリテーションの効果を,SARAの総得点と下位項目得点から検証することを目的とした.方法:対象は,SARAの歩行項目3点以下に該当し,4週間のSCD集中リハビリテーション治療プログラム(SCD集中リハビリテーション)に参加したSCD患者23名(男15名,女8名)とした.評価項目はSARAとし,SCD集中リハビリテーション実施前後に評価を実施した.対象者のSCD集中リハビリテーション実施前後のSARAの総得点および各下位項目得点を,後方視的に解析した.統計はWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析検討し,有意水準は5%とした.結果:SCD集中リハビリテーション実施前後において,総得点および下位項目得点のうち,歩行,立位,踵-すね試験に有意な点数の改善を認めた(p<0.05).一方,下位項目得点で座位,言語障害,指追い試験,鼻-指試験,手の回内・回外運動は有意な点数の改善を認めなかった.結論:本研究の結果は,SCD集中リハビリテーションはSCD患者のSARAにおける総得点と,特に体幹と下肢の運動失調を有意に改善させることを示した.
著者
近藤 夕騎 望月 久 加藤 太郎 鈴木 一平 板東 杏太 滝澤 玲花 吉田 純一朗 西田 大輔 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20012, (Released:2020-10-30)
参考文献数
8

目的:Ehgoetz Martensらが開発したすくみ足の詳細を把握できる質問紙Characterizing Freezing of Gait questionnaire(C-FOGQ)の日本語版を作成し,患者による回答時間などの予備調査を行うこと.方法:日本語版C-FOGQは,原著者から許可を得た後,異文化適応に関する国際的ガイドラインに準じて,①順翻訳,②逆翻訳,③予備調査のプロセスを経て作成した.予備調査では,すくみ足を訴えるパーキンソン病関連疾患患者39名から日本語版C-FOGQによる回答を得て,回答時間,誤回答・無回答率を調査した.結果:英語原版から日本語への順翻訳ならびに英語への逆翻訳過程において,重大な言語的問題は生じなかった.予備調査の結果,平均回答時間は526.8秒であり,誤回答・無回答率は1%未満であった.SectionⅡにおける総合得点の平均は20.0点であった.結論:作成した日本語版C-FOGQは言語的妥当性を有し,10分程度で回答でき,誤回答や無回答率も少ないため,本邦でもすくみ足の評価として使用可能と思われる.
著者
加藤 太郎 板東 杏太 有明 陽佑 勝田 若奈 近藤 夕騎 小笠原 悠 西田 大輔 髙橋 祐二 水野 勝広
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
pp.20022, (Released:2020-11-30)
参考文献数
18

目的:脊髄小脳変性症(spinocerebellar degeneration:SCD)に対する短期集中リハビリテーション治療(SCD短期集中リハビリテーション)の効果が,先行研究により示されている.しかし,SCD短期集中リハビリテーションの効果検証は,Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)の総得点により報告されており,SARAの下位項目による詳細な検証はなされていない.本研究は,歩行可能なSCD患者の運動失調に対するSCD短期集中リハビリテーションの効果を,SARAの総得点と下位項目得点から検証することを目的とした.方法:対象は,SARAの歩行項目3点以下に該当し,4週間のSCD集中リハビリテーション治療プログラム(SCD集中リハビリテーション)に参加したSCD患者23名(男15名,女8名)とした.評価項目はSARAとし,SCD集中リハビリテーション実施前後に評価を実施した.対象者のSCD集中リハビリテーション実施前後のSARAの総得点および各下位項目得点を,後方視的に解析した.統計はWilcoxonの符号付き順位検定を用いて分析検討し,有意水準は5%とした.結果:SCD集中リハビリテーション実施前後において,総得点および下位項目得点のうち,歩行,立位,踵-すね試験に有意な点数の改善を認めた(p<0.05).一方,下位項目得点で座位,言語障害,指追い試験,鼻-指試験,手の回内・回外運動は有意な点数の改善を認めなかった.結論:本研究の結果は,SCD集中リハビリテーションはSCD患者のSARAにおける総得点と,特に体幹と下肢の運動失調を有意に改善させることを示した.