著者
林 初男
出版者
一般社団法人 日本生物物理学会
雑誌
生物物理 (ISSN:05824052)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.195-200, 2014 (Released:2014-07-30)
参考文献数
26

Neurons respond not only regularly but also irregularly to periodic stimulation depending on the stimulus strength and frequency. In the brain, field potential oscillations (rhythms) also respond not only regularly but also irregularly. These irregular responses are not stochastic, but deterministic chaos being subject to a simple nonlinear dynamical rule. This implies that neuron and neural network models described by deterministic dynamical equations reproduce even complex activities. In this review, I focus on dynamical features of neurons and neural networks such as chaos, synchronization, rhythm, and propagation. I will also mention the theta traveling wave in one direction, which would be crucial for sequence learning in the hippocampus.
著者
佐村 俊和 林 初男 酒井 裕 相原 威
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.50-56, 2014-06-05 (Released:2014-07-31)
参考文献数
24

記憶に関与する脳の海馬にはCA3と呼ばれるリカレントネットワーク構造の領域が存在する.我々はCA3領域における指向性を持つ神経活動伝播が,海馬の時系列記憶形成機構の解明の鍵になると考えている.リカレントネットワークを用いた神経活動伝播に関する計算機シミュレーション結果より,抑制性結合の回路構造から推測される抑制(静的抑制構造)と活動中のネットワークに生じる抑制性結合の回路構造から推測されない抑制(動的抑制構造)の2つによって神経活動の伝播方向が制御されることを紹介する.また,これらの神経活動の伝播方向の制御機構とCA3領域との解剖学的な対応から,静的抑制構造と動的抑制構造によってCA3領域の神経活動伝播が制御されていることが示唆される.最後に,静的および動的抑制構造を生み出す抑制性介在細胞の軸索投射の異方性と偏りへの着目や,神経活動伝播に基づく海馬の時系列記憶形成機構の解明を目指す研究の必要性に関して議論する.
著者
林 初男
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review (ISSN:18820875)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.102-114, 2014-10-01 (Released:2014-10-01)
参考文献数
50

工学でも大きな興味が持たれている脳のニューロンや神経回路網は非線形なシステムである.ニューロンは規則的に発火するだけでなく,膜電位あるいは刺激の強さや周波数に依存して不規則に発火することがある.この不規則な発火はカオスと呼ばれる決定論的な力学則に従う非周期振動である.神経回路網の場合は,ニューロンの集団活動を反映した電場電位が周期刺激に対して引き込みやカオス応答を起こす.すなわち,ニューロン集団の同期の程度や同期したニューロン数が刺激に応じて変化する.本稿では,非線形ダイナミクスの観点から脳を概観し,脳の情報処理機構に関する研究の一例として,海馬における確率共鳴と記憶パターンの想起について述べる.