著者
塚田 稔 相原 威 水野 真
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会秋季大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1994, pp.449-450, 1994-09-26

事柄は脳の概念として高次中枢(連合野)に、結合の強さによって似ている情報は互いに結び付けられて、広い範囲に分散して長期記憶として蓄えられていることが判ってきた。一方この記憶の構造は、永久に変わらないものでしょうか。ところが、この構造は人間の意志や動機によって色々と組み変えることができる。ヨーロッパのマイセン焼に「美女と野獣」という題の美しい焼きものがある。なぜ美女と野獣が結び付くのだろう。この背後に動機付けられる人間の感情や意識の世界があり、そこには人間本来的な生命活動を維持する欲望や情念、それをコントロールする理性や宗教的世界、価値判断をする意志決定機構が存在するからだ。この判断に基づいて長期記憶の世界はいかようにも変形できる。この動機付けに基づいて一時的に事柄を記憶し、関連付けたり、分離したりする場所、これが短期記憶と呼ばれている所であり、皮質下部に存在し、その形が竜の落とし子に似ていることから海馬と呼ばれている。この部分が損傷を受けると、昔のことは覚えているが、最近の出来事が忘れて思い出すことができなくなる。一般に、海馬は長期記憶になる際の学習時において、重要な働きをする短期記憶として動作する。ここでは学習によって皮質の別々の事象や刺激の特徴などを連合したり分散する。学習後はそれを長期記憶として連合野に保存し、海馬システムは連合野と独立に動作する。
著者
佐村 俊和 林 初男 酒井 裕 相原 威
出版者
日本神経回路学会
雑誌
日本神経回路学会誌 (ISSN:1340766X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.50-56, 2014-06-05 (Released:2014-07-31)
参考文献数
24

記憶に関与する脳の海馬にはCA3と呼ばれるリカレントネットワーク構造の領域が存在する.我々はCA3領域における指向性を持つ神経活動伝播が,海馬の時系列記憶形成機構の解明の鍵になると考えている.リカレントネットワークを用いた神経活動伝播に関する計算機シミュレーション結果より,抑制性結合の回路構造から推測される抑制(静的抑制構造)と活動中のネットワークに生じる抑制性結合の回路構造から推測されない抑制(動的抑制構造)の2つによって神経活動の伝播方向が制御されることを紹介する.また,これらの神経活動の伝播方向の制御機構とCA3領域との解剖学的な対応から,静的抑制構造と動的抑制構造によってCA3領域の神経活動伝播が制御されていることが示唆される.最後に,静的および動的抑制構造を生み出す抑制性介在細胞の軸索投射の異方性と偏りへの着目や,神経活動伝播に基づく海馬の時系列記憶形成機構の解明を目指す研究の必要性に関して議論する.
著者
小林 祐喜 島崎 秀昭 荻久保 佳伸 溝口 健二 相原 威 塚田 稔
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. NC, ニューロコンピューティング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.99, no.686, pp.31-36, 2000-03-15
被引用文献数
1 1

近年、軸索を逆伝搬する発火活動が報告されており、海馬における学習則を考える場合、入力同士の同時性以外に入力と軸索を逆伝搬する発火活動(出力逆伝搬)の同時性も考慮する必要がある。そこで本研究は、電気刺激をCA1野へのびるshaffer側枝と出力層であるstratum oriensに刺入し、その入力と出力逆伝搬の位相をτ=0ms, ±5ms, ±10ms, ±20ms, ±25mS, ±50ms, ±100ms, ±500ms, 1000msと変化させたときのLTP(長期増強), LTD(長期抑圧)の空間分布を光計測法を用いて計測した。結果としてLTP, LTDは位相差に依存して空間的に異なった分布として引き起こされることが明らかとなった。
著者
津田 一郎 西浦 廉政 大森 隆司 水原 啓暁 相原 威 乾 敏郎 金子 邦彦 山口 陽子 奥田 次郎 中村 克樹 橋本 敬 阪口 豊
出版者
北海道大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

領域の事後評価はAであり、その成果を冊子体の形で集約し、広く社会・国民に情報提供することには大きな意義がある。取りまとめ研究成果は以下のとおりである。1.成果報告書の冊子体での編集と製本を行った。計画班11、公募班44の全ての計画研究・公募研究の班員が、計画班各8ページ、公募班各4ページで執筆し、研究の狙いとその成果を文書と図でわかりやすくまとめた。これらを冊子として製本し、領域に参加する研究者と関係者に配布した。2.成果報告書のCDを作成し、冊子体に添付する形で配布した。3.本成果をWeb上のデータベースDynamic Brain Platformとして成果公開するための準備を完成させた。これまで当領域の成果報告の場として作成公開して来たホームページは、領域終了後に管理できなくなる。そこで、この領域ホームページをINCF 日本ノードDynamic Bain Platform (DB-PF)に移管した。また、成果報告書の電子版をDB-PFにアップロードするための準備を行った。本公開は、広範な分野の人々から永続的な閲覧を可能にするもので、成果を社会・国民に発信する方法として有効であると期待できる。
著者
浦久保 秀俊 黒田 真也 相原 威
出版者
日本シミュレーション学会
雑誌
シミュレーション (ISSN:02859947)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.4-12, 2006-03-15

Recent advance in neuroscience has revealed that neurons as information processors are not point nodes, but spatially distributed units, as represented by dendritic arborization. Computer simulation is very effective for analyzing the distributed properties of neurons; however, the implementation as computer programs is quite complicated. Here, we introduce the GENESIS and NEURON simulators, which have been developed for supporting such complex neuronal simulations. We firstly address the mathematical bases for modeling spatial properties of neurons, and then explain how the NEURON/GENESIS simulator handles the properties with sample programs. At last, we show the effectiveness of the simulators by introducing our computational researches about spike timing-dependent plasticity (STDP).
著者
相原 威 酒井 裕 藤井 聡 塚田 稔
出版者
玉川大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2009-07-23

脳内の外界モデル形成には, 外界からのボトムアップ(感覚)情報だけでなく, 注意や情動などによる広範囲調節系と呼ばれる内因性の情報も融合する必要がある。 海馬や皮質などの神経回路への調節系の信号は, 集中時などに内在性アセチルコリン(Ach)として放出され, 記憶に関与するとの報告がある。 そこで、本研究はボトムアップ入力の統合に対するAChによる修飾を細胞およびネットワークレベルの実験により検証を行った