著者
橋本 竜作 柏木 充 鈴木 周平
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.368-376, 2006 (Released:2008-01-04)
参考文献数
18
被引用文献数
4 4

書字の習得障害を呈した学習障害児を検討した。症例は 7 歳 11 ヵ月,右利き男児。診断は ADHD と DCD。知能,口頭言語および読みの発達は正常,漢字と仮名に共通した書字の獲得に必要な能力 (視覚認知,運筆能力,構成能力) も正常であった。書字における誤反応の特徴は,漢字が不完全な形態,仮名が無反応であった。漢字に関して視覚性記憶を,仮名に関して運動覚心像を検討した。結果,漢字学習における失敗には記銘時の方略の欠如が,仮名学習における失敗には運動覚性心像あるいは音韻と運動覚心像との連合の形成不全が関与することが示唆された。それゆえ,われわれは本例の書字の習得障害には漢字と仮名で異なる障害機序が存在すると推察した。
著者
柏木 充 田辺 卓也 七里 元督 玉井 浩
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.310-315, 2003-07-01 (Released:2011-12-12)
参考文献数
13

せん妄は脳炎, 脳症の急性期にみられることがあり, 早期診断と早期治療において注意を要する症状である. そこで, 高熱に伴うせん妄を呈した10症例を検討することより, 一過性良性のいわゆる “高熱せん妄” と, 中枢神経感染症によるせん妄との鑑別を試みた. せん妄は視覚の幻覚が多く, 内容では鑑別は困難であった. 昼間覚醒時にも認めたこと, せん妄を呈さない時も意識障害を認めたこと, 脳波における背景活動が著明な徐波化を示したことなどが脳炎・脳症に伴うせん妄の特徴であり, いわゆる “高熱せん妄” と異なっていた. せん妄を呈した症例の診断には経過や神経学的所見と合わせ積極的な脳波検査が必要と思われた.
著者
柏木 充 鈴木 周平
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.343-348, 2009 (Released:2016-05-11)
参考文献数
17
被引用文献数
1

小児の不器用さの簡易判定法を予備調査より作成し, その有用性について検討した. 判定法は, 問診情報と微細神経学的徴候より構成される. 前者は, 球技やはしの使い方等の日常の運動面に関する12項目の問診結果より, 後者は, 閉眼片足立ちや上肢変換運動等の5項目中の陽性項目数より判定される. 発達障害児を含む43例を我々の判定法で不器用さの有・疑・無群に分け, 運動検査Movement Assessment Battery for Childrenの結果と比較した. 有群15例中14例, 疑群11例中6例が障害境界以上, 無群では17例中14例は障害なしであり, 判定法と運動検査の結果は概ね一致した. この簡易判定法は有用で, 発達性協調運動障害を診断する指標となると考えた.