著者
中島 紳太郎 高尾 良彦 宇野 能子 藤田 明彦 諏訪 勝仁 岡本 友好 小川 雅彰 大塚 幸喜 柏木 秀幸 矢永 勝彦
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.414-422, 2011 (Released:2011-06-02)
参考文献数
20

症例は24歳女性でジェットスキーから転落し,外傷性ショックの状態で他院救急搬送となった.直腸膀胱腟壁損傷と診断され,損傷部の可及的な縫合閉鎖,ドレナージおよびS状結腸人工肛門造設術が施行された.膀胱機能は改善したものの括約筋断裂によって肛門機能は廃絶状態となり,受傷から3カ月後に当院紹介となった.排便造影で安静時に粘性造影剤の直腸内保持は不可能で完全便失禁であった.しかし恥骨直腸筋のわずかな動きと筋電図で断裂した括約筋の一部に収縮波を認めたため括約筋訓練を行った.2カ月後に最大随意圧の上昇を確認,また造影剤の直腸内保持が短時間ではあるが可能であり,恥骨直腸筋の収縮と超音波で断裂部の瘢痕組織への置換が確認された.受傷から6カ月後に瘢痕組織を用いた括約筋前方形成術,9カ月後に括約筋後方形成術と括約筋人工靭帯形成術を実施した.受傷から17カ月後に人工肛門を閉鎖し,便失禁もみられず経過は順調である.
著者
恒松 雅 坪井 一人 熊谷 祐 良元 和久 梶本 徹也 柏木 秀幸
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.1813-1817, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
9

症例は73歳,男性.起床時の急激な腹痛にて近医を受診した.汎発性腹膜炎および急性腎障害の診断で当院へ救急搬送され,緊急手術となった.術前の尿道カテーテル挿入の際に深部尿道での抵抗が強く,挿入は困難であったが,挿入後は多量の尿排出が得られた.開腹所見では大量の腹水と腹膜および腸間膜に瀰漫性の点状出血を認め,腹膜炎の所見であったが原因病変は同定できず,洗浄ドレナージのみを行って手術を終了した.術直後より急性腎障害が速やかに改善されたため,膀胱破裂に伴うpseudo-renal failureを疑い,翌日行った膀胱造影検査にて膀胱破裂の確定診断となった.学童時に会陰部を強打した既往が判明し,膀胱鏡検査で外傷の既往に矛盾しない尿道狭窄を認め,膀胱破裂の原因と考えられた.術後は腹膜炎も速やかに改善された.急性腎不全を呈し消化管に責任病変を認めない腹膜炎においては,同病態を念頭に置いた精査が肝要である.
著者
中島 紳太郎 高尾 良彦 宇野 能子 藤田 明彦 諏訪 勝仁 岡本 友好 小川 雅彰 大塚 幸喜 柏木 秀幸 矢永 勝彦
出版者
The Japan Society of Coloproctology
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.414-422, 2011-06-01

症例は24歳女性でジェットスキーから転落し,外傷性ショックの状態で他院救急搬送となった.直腸膀胱腟壁損傷と診断され,損傷部の可及的な縫合閉鎖,ドレナージおよびS状結腸人工肛門造設術が施行された.膀胱機能は改善したものの括約筋断裂によって肛門機能は廃絶状態となり,受傷から3カ月後に当院紹介となった.排便造影で安静時に粘性造影剤の直腸内保持は不可能で完全便失禁であった.しかし恥骨直腸筋のわずかな動きと筋電図で断裂した括約筋の一部に収縮波を認めたため括約筋訓練を行った.2カ月後に最大随意圧の上昇を確認,また造影剤の直腸内保持が短時間ではあるが可能であり,恥骨直腸筋の収縮と超音波で断裂部の瘢痕組織への置換が確認された.受傷から6カ月後に瘢痕組織を用いた括約筋前方形成術,9カ月後に括約筋後方形成術と括約筋人工靭帯形成術を実施した.受傷から17カ月後に人工肛門を閉鎖し,便失禁もみられず経過は順調である. <br>
著者
後町 武志 石田 祐一 高橋 直人 三森 教雄 柏木 秀幸 矢永 勝彦
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.696-701, 2010 (Released:2010-09-25)
参考文献数
39
被引用文献数
1

症例は64歳,女性.進行胃癌に対する胃全摘術+脾摘術施行後S-1を内服中で再発徴候は認めていなかった.術後2年5カ月目に発熱,下痢,意識障害にて緊急入院.精査にてインフルエンザ桿菌性髄膜炎・菌血症を発症しているoverwhelming postsplenectomy infection(OPSI)と診断した.抗菌剤,ステロイドによる治療で軽快し第50病日に退院した.OPSIは脾摘後に敗血症,髄膜炎などで突然発症する重症感染症で,発症すると高率に死亡することが知られている.予防として適切な予防的抗菌薬投与,患者教育,ワクチン接種が重要とされるが,脾摘後長期間経過後に発症することもあり,脾摘後患者では常にOPSIを念頭におく必要がある.今回われわれは胃癌に対する脾摘術後化学療法中に発症したインフルエンザ桿菌によるOPSIの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
著者
小村 伸朗 柏木 秀幸 青木 照明 古川 良幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.1985-1989, 1997-10-01

嚥下困難を主訴とし, 逆流性食道炎を併発したCREST症候群の1症例を経験した. 上部消化管造影検査では食道はアカラシア様に拡張し, 下部食道の狭小化が認められた. アカラシア分類に当てはめるとFlask type, Grade IIIに相当した. 内視鏡では約5cm長にわたりSavary & Miller III度の全周性の食道炎が存在し, 24時間pHモニタリング検査では食後期のみに一致した酸逆流が観察され, pH4未満時間は9.8%と著明に延長していた. 本症例に対して食道通過障害の解除, 逆流防止機構の修復を目的として腹腔鏡下にHeller-Dor法を施行した. 術後には嚥下困難をはじめとする症状は消失し, 食道の狭小化は解除された. また, 食道炎は瘢痕像となり, pH4未満時間も0%になった. 強皮症の食道機能障害に付随する症状への外科手術アプローチとして, 本手技は有用であると考えられた.