著者
井上 晴洋 塩飽 洋生 岩切 勝彦 鬼丸 学 小林 泰俊 南 ひとみ 佐藤 裕樹 北野 正剛 岩切 龍一 小村 伸朗 村上 和成 深見 悟生 藤本 一眞 田尻 久雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.1249-1271, 2018 (Released:2018-06-20)
参考文献数
143

日本消化器内視鏡学会は,新たに科学的な手法で作成した基本的な指針として,「POEM診療ガイドライン」を作成した.POEM(Peroral endoscopic myotomy)は,食道アカラシアおよび類縁疾患に対して本邦で開発された新しい内視鏡的治療法であり,国内外で急速に普及しつつある.したがって,本診療ガイドラインの作成が強く望まれた.しかしながら,この分野においてこれまでに発表された論文はエビデンスレベルの低いものが多く,また長期成績はまだ出ていないため,専門家のコンセンサスに基づき推奨の強さを決定しなければならなかった.主として,トレーニング,適応,検査法,前処置,麻酔,方法,成績,有効性,偶発症,他治療との比較などの項目について,現時点での指針をまとめた.
著者
保谷 芳行 矢部 三男 渡部 篤史 平林 剛 佐藤 修二 岡本 友好 小村 伸朗 矢永 勝彦
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.627-633, 2014 (Released:2015-08-31)
参考文献数
39
被引用文献数
1 2

食道癌切除後の乳糜胸は,比較的稀な合併症であるが,確立された治療法がなく,管理に難渋することが多い.従って,適切な管理ができない場合には死亡することも稀ではない.乳糜胸の一般的な原因は,手術操作による胸管損傷であるので,胸管結紮が最も確実な方法と考えられる.しかし,不必要な再手術は避けるべきであり,症例ごとに病態を把握して,適切な治療を選択することが必要である.食道癌術後の乳糜胸治療として,保存的療法,胸膜癒着療法,リピオドールを用いたリンパ管造影,放射線照射,胸膜腹膜シャント術,インターベンショナル,開胸手術,胸腔鏡下手術などが行われているが,胸管損傷の部位,程度,胸管の走行,乳糜胸水の量,患者の病態や全身状態などを考慮し,適切な治療を適切な順序で行う必要があると考える.
著者
古田 隆久 加藤 元嗣 伊藤 透 稲葉 知己 小村 伸朗 潟沼 朗生 清水 誠治 日山 亨 松田 浩二 安田 一朗 五十嵐 良典 大原 弘隆 鈴木 武志 鶴田 修 吉田 智治 芳野 純治
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.58, no.9, pp.1466-1491, 2016 (Released:2016-09-20)
被引用文献数
2

2008年(平成20年)より2012年(平成24年)の5年間における消化器関連の偶発症数は,総検査数17,087,111件に対して12,548件(0.073%)であった.観察のみの偶発症の発生率の0.014%に対し,治療的な内視鏡検査での偶発症発生率は0.67%と約50倍高かった.死亡事案は220件あり,特に70歳以上の高齢者での死亡が164件と全体の3/4をしめた.
著者
宇野 能子 中島 紳太郎 阿南 匡 衛藤 謙 小村 伸朗 矢永 勝彦
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.127-132, 2014-01-31 (Released:2014-07-30)
参考文献数
52

症例は48歳の女性で急激な腹痛を主訴に発症から2時間後に当院に搬送された。来院時,全腹部で腹膜刺激症状を認め,腹部造影CTで十二指腸水平脚の欠如と,右上腹部の前腎傍腔へ脱出する拡張腸管を有する囊状構造と上腸間膜静脈の左方移動を認めた。造影効果不良な小腸の広範な拡張も伴っており,右傍十二指腸ヘルニア嵌頓に合併した小腸軸捻転による絞扼性イレウスと診断して発症より5時間で緊急開腹術を行った。術中所見で下十二指腸窩をヘルニア門として空腸起始部より約50cm肛門側から90cmにわたる空腸が脱出しており,さらに小腸は約270度捻転していた。虚血に陥った範囲は嵌頓した小腸より肛門側190cmまでの全長260cmにわたっていた。壊死腸管を切除・吻合し,ヘルニア門を吸収糸で閉鎖して手術を終了した。以上,右傍十二指腸ヘルニア嵌頓と小腸軸捻転よる絞扼性イレウスの1手術例を経験したので報告する。
著者
小村 伸朗 柏木 秀幸 青木 照明 古川 良幸
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.30, no.10, pp.1985-1989, 1997-10-01

嚥下困難を主訴とし, 逆流性食道炎を併発したCREST症候群の1症例を経験した. 上部消化管造影検査では食道はアカラシア様に拡張し, 下部食道の狭小化が認められた. アカラシア分類に当てはめるとFlask type, Grade IIIに相当した. 内視鏡では約5cm長にわたりSavary & Miller III度の全周性の食道炎が存在し, 24時間pHモニタリング検査では食後期のみに一致した酸逆流が観察され, pH4未満時間は9.8%と著明に延長していた. 本症例に対して食道通過障害の解除, 逆流防止機構の修復を目的として腹腔鏡下にHeller-Dor法を施行した. 術後には嚥下困難をはじめとする症状は消失し, 食道の狭小化は解除された. また, 食道炎は瘢痕像となり, pH4未満時間も0%になった. 強皮症の食道機能障害に付随する症状への外科手術アプローチとして, 本手技は有用であると考えられた.