著者
上柳 富美子 近 雅代
出版者
静岡県立大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

抗酸化作用の一つと考えられる抗リポキシゲナーゼ活性は、豆類、茸類、にんにく以外の野菜類では、緑色の濃い野菜(ニラ、シソ、ホウレンソウ、ブロッコリーなど)に多く、キャベツ、キュウリのような淡色野菜に少ないことが観察された。このことより、カロテノイドが抗リポキシゲナーゼ活性を示すことが考えられた。そこで、トマトピューレーから抽出、分離、精製したリコペン、ほうれん草から抽出、分離、精製したβ-カロテン、ルテイン、ビオラキサンチン、ネオキサンチンを用いて大豆リポキシゲナーゼの抑制活性を測定した。その結果、同濃度における抑制活性はヒコペンが最も強く、ついでネオキサンチン、ビオラキサンチン、ルテイン、β-カロテンの順になった。以上のことから構造と活性の関係を考察するとリコペンの活性の強さはイオノン環が開いていること、二重結合の数が13以上あることが大きな影響をもっており、その他のカロテノイドでは極性が高い程活性が高くなる傾向がみられた。ゆで調理操作、揚げ調理操作過程におけるカロテノイド組成の変化を調べた。蒸留水と1%食塩水でコマツナをゆでた場合、ゆで時間が長くなるにつれてまずビオラキサンチンが分解、酸化され、次にネオキサンチン、ルテインと続き、β-カロテンは比較的安定であった。1%食塩を加えた方が、総色素量では変化量が少なかったが、各カロテノイド量では、蒸留水とは違いがみられなかった。160℃で揚げた場合は、ゆで操作と同様ビオラキサンチンの減少が大きく、ルテイン、β-カロテンの減少は少なかった。以上のことより、野菜類の加熱調理において、キサントフィル類は、β-カロテンより先に活性酸素の影響を受けやすく、自ら減少することで抗酸化作用を示し、その結果ビタミンA効力を持つβ-カロテンが比較的安定に保たれていることがわかった。