著者
星野 さや香 柴山 知也 Miguel ESTEBAN 高木 泰士 三上 貴仁 高畠 知行
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.I_994-I_999, 2013 (Released:2013-09-13)
参考文献数
8
被引用文献数
1

気候変動が現在のペースで100年にわたり継続したと仮定して,将来の気象条件下で強大化した台風が日本に来襲した場合に発生する高潮の危険性を予測し,沿岸域防護手法を提案した.東京湾を例として検討し,算出した高潮より標高の低い地域について,失われる資産額の算出を行った.また,算定した最高高潮水位を水準とした防潮堤の嵩上や新設,堤外地の地盤高の嵩上にかかる費用の算出を行った.約100年後の気象条件下で,190cmの海面上昇を考慮した場合,東京港・川崎港・横浜港には標高にしてそれぞれ4.5m・4.0m・3.9mの高潮高を推算した.これらの標高以下の地域が全て浸水したと想定すると,東京では75兆円,神奈川では4兆円を越える被害が出る.強大化した台風が防潮堤や水門の機能を停止する場合を想定して,将来的に荒川流域の高潮防護計画を確立する必要がある.算出した高潮高への対策として胸壁防潮堤の新設・堤外地の嵩上を行うと,直接的費用は東京港において約2,600億円,川崎港・横浜港において約1,200億円となる.
著者
大平 幸一郎 高畠 知行 三上 貴仁 柴山 知也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発) (ISSN:21854688)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.56-66, 2017 (Released:2017-09-20)
参考文献数
21

東北地方太平洋沖地震の直後,震源から遠く離れた山梨県の湖やノルウェーの湾など複数の場所で津波の様な異常な水位変動が目撃された.同様の水面変動はこれまでに稀に報告されてきた.しかしながら,具体的な波の発生機構や評価手法は確立されておらず,本現象そのものに対する認識や防災意識は低い.本研究では,定量的な影響評価手法の選定と本現象による水害リスクの把握を目的に,現地調査や目撃情報等の収集・整理により発生要因を実地形でのスロッシング現象と推定し,三次元解析での再現を試みた.実験結果との比較により解析手法の妥当性の検証を行った上で過去の事例の再現と将来予測を行った.その結果,本解析手法により異常な水面変動を再現できること,津波とは別の地震直後の内陸部の湖や湾奥部の運河における水害リスクを明らかにした.
著者
高畠 知行 柴山 知也
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.I_1507-I_1512, 2017 (Released:2017-10-17)
参考文献数
15

海岸保全施設の粘り強さの向上や避難者同士の共助には人的被害の低減効果が期待されるが,減災効果を定量的に評価・比較した事例は少ない.特に海水浴場を対象とした場合には定量的な効果に不明な点が多い.本研究では,地元住民・来訪者に関する既往のアンケート調査を分析し,来訪者の行動を考慮した津波避難モデルを構築した.構築したモデルを由比ガ浜海水浴場に適用し,これらの津波対策効果を定量的に検討した.その結果,防潮堤の粘り強さの向上は人的被害低減に有効だが,防潮堤高が低い場合は効果が小さくなること,また土地勘のない来訪者がいる状況下では避難誘導が有効な対策であることがわかった.さらに,道幅が狭く避難者が多い地域では道路混雑を考慮して避難計画を策定する必要性を示した.
著者
大矢 淳 柴山 知也 中村 亮太 岩本 匠夢
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B3(海洋開発)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.I_880-I_885, 2016
被引用文献数
2

2011年台風15号を例として気象-海洋結合モデルを用いて再現計算を行う.次に,疑似温暖化手法を用いて作成した気象場を構築しこの統合モデルを適用し台風・高潮の将来予測計算を行う.さらに,高潮計算と先行研究で行われた津波計算とからそれぞれ浸水面積を算出し,治水経済調査マニュアルの方法に従って直接被害額と間接被害額を求める.本研究では,温暖化ガスの排出が多く,高潮の再現について比較的危険側に設定した場合における例を検討した.水害対策は防潮堤や内部護岸のかさ上げ,水門の新設,既存構造物の耐震強化,維持管理費用を含めた対策費用(以下:構造物費用)と家屋のピロティ化(以下:高床化)の費用の2つを検討した.台風と地震の発生確率を基に50年間の予想被害額は高潮で5.76兆円,津波で13.99兆円となった.構造物費用は,50年間で2.12兆円となり,高床化にかかる費用は51.3兆円となった.海岸構造物強化の対策を行った場合の費用便益比は9.32,高床化の場合には津波の浸水域で1.32となり,高潮の浸水域で0.38となった.
著者
柴山 知也 三上 貴仁
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

2010年のチリ地震津波、同年のスマトラ島沖地震津波(メンタワイ諸島)、2012年のハリケーン・サンディー高潮(米国ニューヨーク)、2013年の台風ヨランダ高潮(フィリピン国レイテ島)などの海外で発生した沿岸域災害の調査を実施し、被災機構を解明した。近年の沿岸域土地利用の高密度化と輻輳化、さらに高潮の場合には地球気候の変動による台風の巨大化が大きな被害をもたらしていることが解った。高潮、高波被害の将来予測を行うために、気候モデルに基づいた高潮・高波数値モデルを開発し、インド洋、北太平洋などに適用した。温暖化後の変化について検討し、高潮の規模が拡大する可能性が高いことを指摘した。