著者
水島 淳 梶谷 亮輔 九鬼 靖太 柴田 篤志 前田 奎 大山 卞 圭悟 尾縣 貢
出版者
一般社団法人 日本体育・スポーツ・健康学会
雑誌
体育学研究 (ISSN:04846710)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.703-714, 2021 (Released:2021-10-20)
参考文献数
28

Introduction: The purpose of this study was to investigate the effects of a 4-week barefoot sprint training program on sprint biomechanics and stretch-shortening cycle jump ability. Methods: Fourteen children with no experience in barefoot sprinting were randomly assigned to 1 of 2 groups: a barefoot training group (3 boys and 4 girls; age, 11.0 ± 0.8 years-old; height, 143.1 ± 8.4 cm; body mass, 35.4 ± 5.6 kg; shoe mass, 0.17 ± 0.02 kg) and a control group (3 boys and 4 girls; age, 11.0 ± 0.8 years-old; height, 142.6 ± 8.2 cm; body mass, 34.4 ± 6.4 kg; shoe mass, 0.18 ± 0.01 kg). The 4-week intervention consisted 40 minutes of sprint training per weekly session using the allocated footwear. Before and after the intervention, 2-dimensional biomechanical analysis of the 50-m maximal sprint under both shod and barefoot conditions, and the countermovement jump and 5 repeated rebound jumping tests were performed by both groups. Pre- to post-test changes in spatio-temporal parameters and sprint kinematics, and jump heights for both jump types, and the contact time and rebound jump index for the rebound jump, were analysed using 2-way mixed ANOVA. Results and Discussion: After the 4-week intervention, a higher step frequency (p <0.01), a longer step length (p <0.05), and a higher sprint velocity (p <0.01) were observed in the barefoot training group, although no change was observed in the foot strike patterns and the swing leg velocity. The barefoot training group showed a higher rebound jump index (p <0.05) and a shorter contact time (p <0.01), while no differences were evident in the counter-movement jump height. These results suggest that 4-week barefoot sprint training seems to be an effective strategy for improving certain aspects of sprint biomechanics and for development of fast stretch-shortening cycle ability in children.
著者
柴田 篤志 森 友洋 縣 信秀 宮本 靖義 宮津 真寿美 河上 敬介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48101555, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 骨、皮膚、靭帯などの損傷に対して超音波刺激を行うと、組織の回復を促進させると言われている。また動物モデルにおいて、筋損傷からの回復促進に超音波刺激が有効であるという報告も多い。しかし、これらの報告では、用いられている動物モデルの損傷の程度や再現性が十分に示されていない。また、損傷からの組織学的回復過程と、我々理学療法士にとって重要な“筋力”という機能的回復過程とをあわせて、経時的に検証した報告はない。そこで、本研究の目的は、既に再現性を確認してある筋損傷モデルを用いて、機能的側面と組織学的側面とを合わせて筋損傷からの回復過程を定量的に評価し、超音波刺激の効果を明らかにすることである。【方法】 8週齢Wistar系雄性ラット18匹を、無処置のSham群(n=6)、遠心性収縮により前脛骨筋を損傷させたControl群(n=6)、遠心性収縮による筋損傷後に超音波刺激を施行したUs群(n=6)に分けた。遠心性収縮を用いた筋損傷モデルは、前脛骨筋に対して最大収縮が生じる条件で電気刺激を与え、足関節の他動的な底屈運動により作製した。底屈運動の条件は、角速度を200度/秒、運動範囲を脛骨と第 5 中足骨の成す角度が60度から150度までの90度、運動回数を10回、5セットとした。超音波刺激は周波数が3 MHz、照射様式が間欠的照射 (50% cut)、照射出力強度が0.5 W/cm²、照射時間が10分間とし、損傷2時間後に1回のみ行った。筋損傷からの回復過程の評価には、機能的評価と組織学的評価を用いた。機能的評価は遠心性収縮前、2、7、14、18、21日後に小動物足関節運動装置を使用して、電気刺激時の最大等尺性足関節背屈トルクによりおこなった。なお、筋損傷前の最大等尺性足関節背屈トルク値を100%として算出した結果で比較した。組織学的評価は、遠心性収縮21日後にラット前脛骨筋を採取し、凍結横断切片を作製し、DAPIによる核染色と細胞膜に局在するDystrophinの免疫染色を行った。染色後、バーチャルスライドスキャナ(Nano Zoomer RS 2.0、浜松ホトニクス)で撮影した。撮影した前脛骨筋の筋腹横断面における浅層部、中間層部、深層部から、それぞれ一辺が0.5 mmの正方形の範囲を合計 0.75 mm²抽出し、その範囲に含まれる筋線維の筋線維横断面積を、画像解析ソフト(Image-J) にて測定した。統計処理は、先ず一元配置分散分析を行い、有意差を認めた場合に多重比較検定 Tukeyを行った。いずれの統計手法も有意水準は 5 % 未満とした。 【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当大学動物実験委員会の承認を得て行った。【結果】 遠心性収縮2日後の Us群の足関節背屈トルクは、Control群に対して有意に大きく、 Sham群に対して有意に小さかった (Us群:30.7±4.6% 、Control群:25.2±3.0%、Sham群:101 .0 ±2.74%)。しかし、遠心性収縮7日後では、Us群とControl群間に有意な違いはなかった(Us群:55.7±5.7% 、Control群:44.0 ±5.7%)。一方、遠心性収縮14日後のUs群はControl群に対して有意に大きかった(Us群:94.0±4.4%、Control群:84.1±5.7%)。この有意な違いは18日後(Us群:109.2±6.6% 、Control群:97.8±5.2%)、21日後(Us群:123.1±8.3% 、Control群:105.8±2.5%)でも存在した。筋線維横断面積は、遠心性収縮21日後のUs群とSham群と有意な違いはなかった(Us群:3043.1±268.7 μm²、Sham群:3209.9±628.3 μm²)が、Control群(Control群2478.5±293.3 μm²)はSham群に対して有意に小さかった。【考察】 損傷2時間後に超音波刺激を行うと、遠心性収縮48時間後の足関節最大背屈トルクの減少が緩和された。これは超音波刺激が、二次的損傷による筋損傷を防止したためだと考える。しかし、遠心性収縮7日後では、control群と有意な差がなかったことから、筋損傷を防止する効果は一時的なものであったと考えられる。また、遠心性収縮21日後の結果より、超音波刺激によるに筋損傷からの回復促進効果が機能的、組織学的に明らかになった。筋組織は損傷すると、損傷 2時間後より好中球やマクロファージの活動が開始すると言われている。このマクロファージが分泌するサイトカインは、この後に生じる筋衛星細胞の活性化を促すことが分かっている。本研究の結果は、損傷 2時間後の超音波刺激がマクロファージの活動性を亢進し、サイトカインの分泌量が増加し、その結果、筋衛星細胞の増殖・分化・融合の開始を早めたことによると考える。【理学療法学研究としての意義】 超音波刺激による筋損傷からの回復促進効果を客観的に明らかにした。本研究を用いれば、強度、時間、タイミングなどの違いによる回復促進効果の違いを検証することが可能となり、最も効果的な超音波刺激の条件を明らかにすることができる。