著者
髙橋 芳雄 足立 匡基 安田 小響 栗林 理人 中村 和彦
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2-4, pp.189, 2018 (Released:2021-04-26)

【目的】 本邦における中高生を対象にした大規模調査では、8.1%の生徒にインターネット依存傾向があることが明らかになっている(Morioka et al, 2016)。また、中学生においてインターネット依存傾向が身体的・精神的健康に対してネガティブな影響をもつこともわかっている。しかしながら、小学生を対象にインターネット依存傾向についての研究はこれまでにない。本研究では市内の小中学性を対象に調査を行い、児童思春期におけるインターネット依存傾向の実態把握及び、インターネット依存傾向と精神的健康の関連を検討する。 【方法】 市内全国公立小中学校に通う小学四年生以上の全児童生徒を対象に質問紙調査を実施し、8206人(96.3%)から有効回答を得た。インターネット依存についてはYoung's Diagnostic Questionnaire(YDQ)を用いて評価した他、児童生徒の抑うつ症状と生活の質(QOL)を同時に評価した。 【結果】 学年および性別を独立変数、YDQ 得点を従属変数として設定し、二要因の分散分析を行なった結果、学年の主効果および学年×性別の交互作用が有意であった。このことから学年が進むにつれて児童生徒のインターネット依存傾向が強くなること、学年によって性別がインターネット依存傾向に与える影響が異なることが示唆された。また、特に中学一年生から中学二年生にかけてインターネット依存傾向が特に強まることも明らかになった。続いて、YDQグループにおける抑うつおよびQOL の差を検討するために分散分析を行なった結果、“病的インターネット使用” 群では、他の群と比較して有意に強い抑うつ症状を示すともに、QOL が有意に低いという結果が示された。また、小中学性を分けて解析した際にも一貫して同様の傾向が認められた。 【考察・結論】 本研究の結果から学年が上がるにつれて、インターネット依存傾向をもつ児童生徒が増えること、特に中学二年生でインターネット依存傾向をもつ割合が大幅に増加することがわかった。今後は中学2年時に生じるインターネット病的使用の大幅な増加に寄与する因子を特定することが必要である。また、中学生だけでなく、小学生においてもインターネット依存傾向が児童の精神的健康やQOL にネガティブな影響を与えていることがわかり、インターネット依存傾向に対する早期介入の必要性が示唆された。
著者
斉藤 まなぶ 足立 匡基 中村 和彦 大里 絢子 栗林 理人 高橋 芳雄 吉田 恵心 安田 小響
出版者
弘前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

発達障害の有病率及び併存率の推定:平成26年4月から平成28年10月までに健診に参加した全5才児3804名(月齢平均:63カ月)を解析の対象とした。一次スクリーニングは2923名(76.8%)から回答を得た。二次検診の対象児は607名(20.8%)であった。最終的に希望者31名を含む440名が二次健診に参加した。ASDの診断については、さらに補助診断検査としてASD診断を受けた対象者に後日ADI-RまたはADOSを施行した。その結果、自閉症スペクトラム障害(ASD)が3.30%、注意欠如・多動性障害(ADHD)が4.95%、発達性協調運動障害(DCD)が5.54%、知的障害/境界知能(ID/BIF)が3.33%であった。また、ASDではADHD合併が60.0%、DCDの合併が61.1%、ID/BIFの合併が40.0%であった。疫学調査における使用尺度の妥当性の検討:AD/HD-RSの内的整合性(N Takayanagi, et al. 2016)、ASSQ短縮版の5歳児適用における妥当性(足立ら、2016)を検証した。リスク因子の検討:得られた疫学データからロジスティック回帰分析を行い、ASDのリスク因子は出生体重2500g未満と父親の高齢が有意な結果となった。バイオマーカーの検討:ASD群でIGF-1、VLDL-Cho、VLDL-TGに有意な性差があった。バイオマーカーとASD、ADHD症状との関連性はIGF-1が実行機能の問題、VLDL-Choが相互的対人関係の問題、VLDL-TGが社会性、想像力、対人関係の問題と負の相関があったGazefinderを用いた注視点検査では、5歳のASD児は興味のある映像への注視は長く、興味のない映像への注視は短いことが確認された。