- 著者
-
平山 順朗
小山内 幸
植松 和家
鈴木 唯司
舟生 富寿
兼子 直
- 出版者
- 社団法人 日本透析医学会
- 雑誌
- 人工透析研究会会誌 (ISSN:02887045)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.3, pp.301-308, 1985-06-30 (Released:2010-03-16)
- 参考文献数
- 5
入院中の透析患者100例に対し精神科医による面接を行い, 患者のおかれた背景の相違による精神症状の出現状態の差を検討した. 透析期間では, 3ヵ月から1年が精神的には最も安定しており, その他の期間では半数以上の例で抑うつが認められ, 3ヵ月未満では焦燥, 怒りなどが, 1年以後には明るさやおおらかさの喪失が多く認められた. 年齢との関連では26-40歳の年齢層で抑うつ, 焦燥, 悲観, 怒り, あきらめ, 死の不安, 攻撃などが高頻度で認められた. 家族の問題で最も精神症状が強く出現するのは離婚例で抑うつ, 明るさやおおらかさの喪失, 悲観, 焦燥, 怒りや攻撃などが半数以上の例で認められた. 子供の状況との関連では, 子供が18歳未満の例でやはり精神症状が高頻度でみられた. 職業との関連ではサラリーマンが抑うつ, 焦燥, 怒りが, 無職例であきらめ, 悲観, 明るさやおおらかさの喪失の出現頻度が高かった. また, 合併症を有する場合には自殺念慮を含めてさまざまな精神症状が高頻度で認められた.矢田部-Gilford性格検査による性格類型では, B型で抑うつ, 悲観, 怒り, 攻撃, E型であきらめ, 自殺念慮, C型であきらめ, 死の不安が多く出現し, D型で最も安定した性格であった.面接後の対応は, 主として抗うつ剤, 精神安定剤 (minor tranquilizer) などの薬剤投与で行ったが, 患者に対して病状の再説明を必要としたり, 継続的な面接を行った症例も存した. 継続的な面接により精神症状の出現率はあきらかに減少していた.